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タケル→ヒカリ




心臓が波打つ



ああ
気付かなければ良かった
こんな気持ち



でも
気付いてしまったから
もう後には退けない






「ヒカリちゃん」
 昨日まで何ともなかった。

「あ、タケル君。おはよう」
 この清々しい朝の空気よりも澄んだ彼女の声を聴いても、太陽みたいに眩しい彼女の笑顔を見ても。

「おはよう」
 好き。
 この二文字が僕の脳をリピートして止まない。昨日までは、そんなことなかったのに。

「今日、英語の小テストよねー。タケル君、勉強した?」
 並んで歩く彼女の、悩ましげな溜め息さえも、美しく透き通っていて。

「あんまり」
 深い溜め息を吐く。
 これはもう認めるしかないみたいだ。

「でもタケル君って英語得意よね。いいなぁ、タケル君ってば何でも出来ちゃうんだから」
 羨むように、でも決して妬んでいるわけではない彼女の言葉は僕の耳に心地好く響く。

「そんなこと言って、ヒカリちゃんだって英語の成績、悪くないでしょ? それに僕はそんなに有能じゃないよ」
 現に、君への想いをどうすることも出来ず、もて余しているのだから。
 本当に何でも出来るなら、今すぐ、この気持ちを封印して、また何事もなかったかのように君の隣に並んでいたい。

「うーん……」
 口元に手を添えて、小さく唸る彼女の横顔が、昨日の彼女と重なる。
 夕日に照らされて、凛とした雰囲気を際立たせるように。それでいて、その瞳は優しく慈しみに溢れ揺れる。
 帰り道、不意に目に入ったその横顔が、あまりに綺麗で直視できなくて。

「好き」
 何度も何度も僕の頭に鳴り響く言葉。はじめて彼女を異性として実感した。
 それに気付いてしまったから、もう今まで通りじゃいられない。

「え?」
「へ?」
 弾かれたように彼女が僕を見上げ、思わず僕も声を返す。

「タケル君、今何て?」
 目を見開いて僕を凝視する彼女に、頭の中で繰り返されていた言葉を声に出していたことに気付く。そうして、ああやってしまった、と心の内で後悔。

「えっと……」
 まだ引き返すことも出来る。
 何でもないよと笑うことも、適当に誤魔化すことも。
 でも、それじゃ何の解決にもならないし、何の進歩もないんだって僕は知ってる。

「……ヒカリちゃんの、ことが」
 怖くないはずがないけど。
 今の関係を壊したくなんかないけど。
 いつかは変わらなくちゃいけないから。

「好きだよ、って」
 逃げたりはしないんだ。

 大事なものを失くすのは酷く怖くて、大事なものができるのは、きっともっと怖くて。
 それを守るのは、ずっとずっと難しくて。
 それでも求めるから。
 掴みたいと願うから。

「好きなんだよ、って」
 この想いが君に届くようにと。
 きっと明日も、君が隣で笑っていてくれるようにと。

 願い、信じ、明日を見い出す。
 それがきっと僕だから。







――君が好きだよ



きっと、ずっと、だれよりも






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あきゅろす。
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