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愛しき姫へ、口付けを
「何ですか、その顔は。」

向かいの席に座った彼は、軽く頬杖をつきながら言った。
いつも礼儀正しい彼は、最近では私の前だと今みたいに頬杖をついたりとくつろいだ態度を見せることも多い。

「何って何よ?光子郎君の大好きなミミちゃんの可愛い顔ですーっ!!」

ぷいっと勢い良くそっぽを向いて悪態をついてみる。私は怒ってるのよ、って意をしっかり込めて。
なのに

「まぁ確かに好きですけど。」

なんて、あっさりと彼が答えるから思わず赤面してしまって、相変わらず頬杖をついて此方を見ている彼を睨みつける。

彼はこんな人間だったかしら。

数年前までは、こんな風に人をからかったりしなかった。少なくとも、異性にこんな簡単に「好き」なんて言えるような人じゃなかったはず。

(成長したんだな……)

それは嬉しい。
だって大好きな彼の事だもの。

(でも、)

それとこれとは話が別。

「……来るなら予定空けてたもん。」

そう。
何を隠そうここはアメリカ。そして現在地は私のお気に入りのカフェ。

「いつも僕ばかり驚かされるのでは不公平でしょう?」

楽しそうに私にそう言いながら、注文の品を持ってきた店員に「Thank you」と軽く笑って言う。

彼ときたら突然訪ねてきたかと思えば、英語も完璧にマスターしていて腹が立つったらありゃしない。

「どうせなら直接会って言いたかったですしね。」

優しく笑って、当然のように呟く。その言葉が嬉しくて、不覚にも笑みがこぼれてしまう。

「光子郎君のバカ。」

「ミミさんの前でだけですよ。」

何を言っても動じやしない。
そんな彼も好きだなぁなんて、そんな私が一番バカなのかも。

「ミミさん、これプレゼントです。」

差し出されたのは花の形の髪飾り。

「一応リリモンを意識したんですが……微妙でしたかね。」

口元に手を添えて考え込む彼に

「そんなことないわ。」

と慌てて首を振り、つけても良いかと問う。
すると、軽く笑って「つけてさしあげます」と彼は席を立った。

私のウェーブがかった髪に優しく髪飾りをつけてくれる彼。

「ありが……」

言いかけた私の言葉を遮るように、彼は私の髪を一房、手にして小さくキスをした。
そして

「Happybirthday,my princess.」

と耳元で囁き、満面の笑みを見せた。

私の顔が今までにないくらい真っ赤だったのは言うまでもない。


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あきゅろす。
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