炭酸 (完結)
強くたって女の子

「何て事してくれてんの!!!このアホ会長!!!」

「し、仕方なかったんだって!!皆がやりてぇって言うんだからよー!!」

アホ会長が怒られている原因は、体育祭で行われる『仮装リレー』の出場者発表用紙。

勝政いわく、一般生徒(主に男子)からの要望が強かった為に競技枠を作ったのだと言う。

「だからって何で生徒会メンバーも出場なのよ!!」

「だぁってその方が楽しいだろっ!!」

「ま、まあまあ会長も副会長も落ち着いて…」

勝政に掴みかかる美和子をやんわりと止める薫。
しかし、その行動は更に美和子の怒りを増長させるだけだった。

「これが落ち着いてられる!?副会長の私に相談もなく!勝手に出場決定して!
しかも仮装だなんて!生徒会の恥よ!!」

「いいじゃん仮装。ハロウィンみたいでさ。塚本はどう思う?」

美和子がぎゃんぎゃんと騒ぐ中、聡はさらりと爽やかに言い放った。

「別にいいけど…アンカーは嫌よ。私、足遅いもの。」

「皆の仮装ね〜、私が作るよ〜!どんなのがいいかなあ〜?」

「僕も手伝うよ、桃。手芸は得意だからね。」

「な…な、何よ!皆やる気なの!?私は絶対嫌よ!やらないから!」

美和子の予想に反して、周りが乗り気だった為、彼女は更に意地を張ってしまった。

「えー。やろうぜ美和子!俺、お前の女っぽい格好みてぇんだ〜!」

「あら。私、女でしてよ。ほほほほほ!!」

勝政の言葉に苛立った美和子が笑いながら彼の間接を捩伏せる。

「イダダダダダダダ!!!!痛い痛い痛い痛い!!間接痛いマジ痛いちょー痛いはんぱなく痛い!!!」

「ご愁傷様〜。」

「本当、素直じゃないんだから。」

少し頬を赤く染める美和子を見て、環は溜め息を吐いた。

「ん?何の事だ?塚本。」

「何でもないわ。」

結局仮装リレーは生徒会も参加確定となり、本日の会議は幕を閉じた。

その翌日の事だ。いつものように登校した環は教室へ向かっていた。
教室にたどり着くと、何故か美和子が俯いてロッカーの横に立っている。

「美和子?どうしたの、そんな所で。」

『青山君と何かあったのね。』と環は察し、やんわりと問い掛けた。

すると美和子は環の手を引っつかみ、ダダダダッと走って空き教室になだれ込んだ。

教室のドアを閉めた瞬間、美和子はボロボロと泣き出した。
今まで我慢していたのだろう、もう目が赤く腫れてしまっている。

「環っだまぎっ…どうしよう、私…っ」

「美和、落ち着いて。どうしたの?ゆっくりでいいから、話して。」

涙でぐしゃぐしゃな美和子に、持っていたポケットティッシュで鼻をかませる。
数分して少し落ち着いたのか、美和子がえぐえぐと言葉を紡ぎ始める。

「アイツがっ…勝政…告白されてたぁああああ〜!!どうしよ私、も、駄目かもっ…。」

彼女の話によるとこうだ。
朝、一緒に登校した美和子達が昇降口で上履きに履き代えようとした時、勝政の下駄箱に手紙が入っていたそうだ。
勝政はそれにさっと目を通すと、美和子に先に教室へ行くように言ってどこかへ向かってしまった。
彼が好きな美和子は勿論、気になったので後をつけたのだ。
そして裏庭で可愛いらしい一年生に告白されている勝政を見てしまった、と。

「ねえ、美和子。青山君はその告白OKしたの?」

環の質問に美和子はぶんぶんと首を横に振る。

「…なら大丈夫じゃない。早く告白なさいよ。」

「で、でもフラれたらっ!わた…し、そばにいらんないぃいい!!」

彼の前でなら強気でいられる美和子だが、その分不安が大きいのだ。すぐに手が出てしまう所とか特に。

「好きなんでしょ。他の子に取られる前に出来る事はしてみよう?ね?」

「………うん。でも、今は、期末あるから…終業式に、する。」

「そう、頑張ろう。私も応援してるから…美和子。」

美和子は泣き止んでいた。



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あきゅろす。
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