炭酸 (完結)
あとがき

「炭酸」これにて完結でございます。

読んでくださった皆様、コラボ協力して下さった蘇乃さま、ありがとうございます。

蘇乃さまの詩から生まれた小説版 炭酸はいかがでしたでしょうか?
私的には素敵な詩のイメージを崩さぬよう、全力を尽くした限りです。
初のコラボ作品という事もあってか、自分で書いていてとても楽しく、ほくほくしました(´ω`)

小説版 炭酸は主にスポットライトを高須 聡と塚本 環に当て、二人の恋もようと中学生ならではの青い春をお届けしました。
その為、あえて描写しなかったりうやむやにした場面があります。
例えば薫と桃華の付き合うに至った流れや、教師組(荒井と黒沢)の関係と最後にちらりと出てきた森原の事などなど。
まあ…それらの小話はまたいつかww

そうそう、出発した聡が途中から手紙を送れなくなった理由。
これは本人に語ってもらうとしましょう。
ついでに成長した生徒会メンバーに改めて祝福されるといいよ!(´∀`*)

蘇乃さま、いつも応援ありがとうございました。
一つの作品から二人で沢山の素敵が生み出せました事、誇りに思います。
これからもお互いに精進致しましょう!本当に本当にありがとうございました!

そして、読者の皆様もここまで読んで下さり、本当にありがとうございます!
皆様のお陰でございます。と言うわけで、この度はオマケを用意してみたり。(*´∀`*)

一年近くに渡る企画でしたが、もしご満足頂けたなら幸いです。
ありがとうございました!


月緒 緋奈










以下、オマケページです。↓










「高須 聡ぅぅう!おっかえりぃいい!!」

「うわわっ」

パァンパァンと散らからないタイプのクラッカーが次々に音を立てる。

無事、環と再会した聡が彼女に謝ろうとしていた所に、絶妙なタイミングで二人は美和子に取っ捕まった。
上機嫌な美和子を止められなかった聡たちは彼女に流されるがまま、生徒会メンバーの高須お帰り会なるものに招かれる事となったのだ。

「聡ぅぅう!元気してたか!?背ぇ伸びたなぁ〜!俺さ、今建築専攻してんだぜ!びっくりだろ?それからな!
荒井とまゆたん付き合い始めたんだってよ!「わああ!ちょ、マサ!タイムタイム!とりあえず皆と話しをさせてくれよ!」

親友が帰って来て嬉しいという気持ちが、手に取るように分かる程の勝政を何とか落ち着かせる。
すると待ってましたと言わんばかりに美和子が痛い所を突いてきた。

「高須くん!帰って来たのは何よりだけれど、どうして手紙送らなくなったのよ!
環がどれ程心配したか!酷い時は一日中ポストの前に座り込んで倒れたんだから!」

「み、美和子…!」

倒れたとは聞いていなかった。
そして、そうさせてしまったのが自分である事が情けなくて、許せなくて、苦しくなった。

「環、皆…心配かけてごめん。きちんと説明するよ。」

「聡君…」

環が心配そうに見つめる中、聡は意を決して口を開いた。

「高校二年の冬に、お袋の手術が終わったんだ。
病気自体は完治したから、これで漸く日本の家に家族揃って帰れるって親父と喜んでたんだけどさ…。
お袋、手術の後遺症で親父と出会う所から記憶が無くなったんだ。」

環達は聡の言葉に息を飲んだ。
父親を忘れたと言うことは当然、息子である聡の事など分からない。

「親父はさ、お袋大好きだったから…凄く荒れたよ。
散々泣いた後、親父はお袋の事を考えない為に仕事ばっかりし始めた。
それから直ぐに親父は過労で入院さ。
両親が入院した俺はアメリカに住んでた叔父さんの家に行く事が決まって、
凄くバタバタしてて…手紙を書ける状態じゃなかった。」

父親は三日三晩、目覚めなかったと言う。
母親の方も父親が居なくては記憶の回復は難しいと言われたそうだ。
それが、聡の高校二年の冬だった。

「俺が高三になってから、親父の身体は回復した。
お袋の事を叔父さんと話して、お袋を救えるのは親父しか居ないって必死に説得したよ。
親父は分かってくれた。
それから一年間、親父と俺はお袋の記憶を取り戻す為に頑張ったんだ。」

父親が回復してから、何度も環に連絡を取ろうとしたのだが…聡は怖かった。
手紙を送らなくなった日から随分経ってしまった。
今更送って拒絶されたら立ち直れない。両親が不安定な関係の中、自分がそうなる訳にはいかない。
聡は母親の一件が落ち着いたら会いに行こう、会って謝罪しようと決めたのだった。

「そして先月、お袋は失った記憶の三分の二を思い出した。
まだ曖昧な所もあるけど…アメリカでの治療は終わったし、日本の方が思い出多いから。
で、俺は此処から通える大学に行く。
これで話しはおしまい。環、皆…本当にごめん!」

「聡君、聡君辛かったね。私こそごめんね…。」

「環…」

聡と環がお互いに微笑みながら両手を繋ぐ姿を見て、桃華はぷうっと頬を膨らませる。

「むー…聡ちゃん達がいちゃいちゃするなら私達もらぶらぶする〜!」

「こらこら桃、そういうのは帰ってから。…ね?」

飛び付いてきた愛らしい彼女を宥める薫は、何処か大人の余裕と色気を漂わせる。
中学の頃とはまるで違う薫の雰囲気に、聡は彼も成長したんだなと改めて思う。

「よっしゃああ!この流れで俺らも「しないわよ馬鹿!!ほらあんたたちも離れる!ホント恥ずかしいんだから!」

甘い流れに乗って最愛の彼女の肩を抱こうとした勝政は、昔と変わらぬ素早さで美和子から逃げられてしまった。

「はははっ!まだ照れ屋なのかい?榊原は昔から変わらないな!」

「美和ちゃんたらね、こないだも勝政ちゃんの事ばっかり相談しに来たの〜。」

「ふふ、それも青山君とデートがある度にね。」

「な…な、なな何言ってるのよ!桃ちゃん!環っ!!」

穏やかな口調で次々と爆弾を投下する桃華と環の言葉を美和子は大声で遮るが、少々彼女馬鹿な彼氏の耳にはバッチリ入ってしまったようで。

「やっぱ俺の彼女可愛いぜ!」

「抱きつくなァアアア!!」

「ごふぅううっ!!!!」

以前より数段威力を増した美和子の蹴りが綺麗に勝政の横腹へ入った。
部屋の片隅でピクピクと身悶える勝政を心配した薫と聡が駆け寄る。

「あ、青山先輩っ!」
「大丈夫かい?マサ!」

「心配すんな薫、聡…。これはまだマシだ…レベル6ってとこだな。」

ドヤ顔で語る勝政の姿に、二人は若干の恐怖と一抹の不安を覚えた。
一体どれ程照れ隠しと言う名の鉄槌を食らってきたのか。
そしてレベルとは何なのか聞きたかった聡だが、彼が満足そうにしているのなら良いかと言葉を飲み込んだ。

「とにかくっ!高須君が無事に帰って来たことだし、環との結婚前祝いも含めて乾杯よ!」

「みっ美和!結婚前祝いは余計よ!」

「何言ってるんだい環。その指輪を本物にするって言ったじゃないか。」

「……本当ずるいんだから…。」

「さて…塚本先輩が納得した所で。乾杯しましょうか。桃、入れようか。」

「はい!今日は皆これ飲もうね〜!」

桃華と薫が全員のグラスに同じ飲み物を注いでいく。
出発した日に用意して待つと言っていた物だ。
覚えていた上に、このような形で実行してくれた後輩達に聡は小さく笑う。

「全員持った?桃ちゃんも大丈夫ね。勝政、お願い。」

「よっしゃああ!行くぜ!
高須聡の帰還と二人の未来、ついでに俺たち生徒会も祝して!乾杯っ!!」

「「乾杯!!」」

合わさった6つのグラスが良い音を立てて、聡たちは甘く弾ける炭酸と共に笑った。



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あきゅろす。
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