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気まぐれ帽子屋















結局、おもしろい奴だとベルに変に気に入られたクロームはそのまま道を通させてもらい、スクアーロが向かったかもしれない道を教えてもらった


「えっと、道はこれでいいから…あとはベルの言ってた帽子屋さんを探さなきゃ…」


そんなことを言いながら森の小道を歩いていると、どこからかはわからないが、ほのかに甘い香りが漂ってきた


(なんの匂い…?)

がさり、と茂みを掻き分けて匂いのする方へと足を進めた



(近い…)


「誰だい?」

「!」


声の主は、カチャリとその手に持っていたカップを置いた

どうやら匂いの元は彼が飲んでいた紅茶だったらしい

「あ、あの…」

「名前、聞いてるんだけど」


漆黒の瞳がクロームの姿をしっかりと捕らえていた


「…、クローム…」

「ふぅん…僕は雲雀恭弥」

「なに…してるの?」

「仕事の息抜きにと茶会をしててね、君もどうだい?」


コトン、と紅茶の注がれたカップが目の前に置かれた

甘い香りがする、ブラウンの液体に日の光が反射してキラリと宝石のように輝いた


「ありがとう…、恭弥は何の仕事をしてるの…?」

「帽子屋だよ」


彼の言葉にぴくりと反応した

「帽子屋さん…?」

クロームの目が輝く


(ここに…スクアーロがいるかもしれない…!)


「ねぇ…恭弥」

「なんだい?」

「ここに銀髪の男の人…来なかった?」

「銀髪? なら、彼じゃないかな」


そう言うと雲雀は彼女から目線を外し、少し遠くに目をやる

クロームもつられて見ると、長いテーブルの向こう側に二人、人が座っていた



「言いたくないけど、仕事仲間だよ」

そこには薄茶色の髪の男と、隣には銀髪の男が眠っていた


(! あれは、)

「…スクアーロ……?」


彼ともう一度会えた喜びからか、クロームはタタッと軽やかに地を蹴り、男に駆け寄る


「ん…」

「あ、起きましたか、今日はまた随分寝てましたよ?」


茶髪の男が彼に話し掛けると、彼は俯いたまま「そうか…」と小さく答えた、そして


「ふぁ…」

欠伸をし、ゆっくりと顔を上げた


「…!?」

クロームは目をぱちくりとさせて驚く


顔を上げた彼が…スクアーロではなかったからだ







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