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【この気持ちの名前は?】(ブンジロ←跡)
愛児様リク作品


「亮ちゃーん!!」

昼休みに屋上で昼飯を食べていた宍戸の元にジローがやってきた。

「亮ちゃん言うな!…で、どうしたんだ?ジロー」

この時間に目が覚めてるのが不思議なようで、隣にいる鳳と顔を見合わせる。
そんな宍戸の目をジローはキラキラした目で覗き込む。

「岳人から聞いたんだけどさー、今度の休みに立海と練習試合するってホント!?」

一気に話すと、疲れたーと力を抜く。

「ん?あぁホントだぜ」
「マジマジ!やったー!丸井くんに会えるCーvV」

丸井とはジローの恋人で立海のレギュラーの一人である。
ジローがずっと目標にしているボレーの天才。
そんな彼に久しぶりに会えると嬉しそうにはしゃぐジローに宍戸はふと疑問が浮かんだ。

「跡部から聞いてなかったのか?」
「うん?…なーんにも聞かされてないけど」
「え?俺たち、跡部部長に直接知らされましたよ」

鳳の言葉に宍戸が頷く。
自分だけ聞かされていなかったという事実を知って、先程までの浮かれた気持ちが沈んでしまった。
変わりに跡部に対する疑問と怒りが沸き上がってくる。

「…跡部と話してくる。あ、亮ちゃんと鳳ありがとねー!」

二人に手を振ると屋上から去っていった。

「何だったんだ?」
「さあ?…てゆうか、俺も亮ちゃんて呼んでもいいですか?」
「却下」
「ですよね…」





「跡部!何で教えてくんなかったの!」

跡部を捜し回ったジローは、部室にいた跡部を見つけると開口一番に怒鳴った。

「あーん?何のことだ」
「立海との練習試合の事」
「…誰から聞いた」

練習試合の事を口にした途端、跡部の顔つきが変わった。
言葉にも若干、冷たいものを感じる。
しかし、ジローは臆さなかった。
伊達に幼なじみはやっていない。

「岳人と宍戸。オレだけ聞いてないって教えてくれたのは鳳」
「ちっ。アイツ等…」
「ねぇ?何で教えてくれなかったのさ!しかもオレにだけ」
「…お前は試合がしたいわけじゃねぇだろ」

冷たい視線を送ってくる。
それだけで、跡部が怒っているのが感じられる。
金縛りにあったみたいに体が動かない。

「確かに試合が一番じゃないけど、だからって知らせてくれたっていいじゃん!」
「会わせたくなかったんだよ」

冷たかった瞳が哀しげに揺れる。
そしてジローは悟った。
跡部が教えてくれなかった理由を。

「…なんで?もう吹っ切ったって言ってたじゃん」
「そう簡単に気持ちの整理なんて着けられるわけねぇだろ…」

目が逸らされて、ジローは何も言えなかった。
跡部が好きだと言ってくれるのは嬉しい。
でも、ブン太に言われる好きには勝てない。
長く一緒に居すぎたのかもしれない…。
今更、幼なじみ以上の関係には思えなかった。

「…悪かったな」
「跡部?」

沈黙に耐えきれなかったのか、跡部が先に口を開いた。

「今回、正レギュラーはオーダーに入れてないんだが、来たいなら来い」
「行っていいの?」
「ああ」
「やったー!跡部ありがと!!」

跡部の許しが出ると、さっきまでの悲しそうな表情から一転、目を輝かせて嬉しそうに笑った。
その顔を見て、跡部も柔らかく微笑んだ。
いつまで経っても、関係が変わっても自分はジローには勝てないのだろうと、心の中で笑った。

***

「よく来たな!ジロー」

立海に着くとブン太が出迎えてくれた。
ジローに対してだけだが…。

「丸井くんは試合に出るの?」
「いや。氷帝が準レギュ使ってんのに、俺等が出るわけないじゃん」
「そっか〜…。丸井くんの妙技見たかったなぁ」

しゅん、と落ち込むジローを見てブン太が肩に手を伸ばした。
しかし肩に触れるはずだった手は、別の手によって阻止された。

「なんだ。あんたも来てたの?跡部さん」
「部長なんだから当たり前だろ?甘いもんの食い過ぎで脳が溶けたか?」

ジローを挟んで火花を散らす二人。
当のジローはまたかと二人を眺めていた。
この光景はジローとブン太が付き合う前から繰り返されてきたものだ。

「ジロー、いい昼寝ポイントがあるんだけど行かねぇ?」
「あーん?ジローは俺様が見てるから、一人で行ってこいよ」
「なぁ、この前ジローが食いたいって言ってたお菓子が手に入ったんだけど、二人で食おうぜ?」
「残念だったなぁ。昨日俺様と食っちまったぜ。なぁ、ジロー」

ジローの言葉を待たずに二人で言い争いを続ける。
ジローの雰囲気が変わってきている事に二人は全く気付かない。

「そんなに二人で何かしたいなら、丸井くんと跡部で行ってくれば?ついでに仲良くなってきてよ」

にっこりと擬音が付いていそうなくらいの笑みを浮かべて、しかし声は冷えきった調子でジローが言った。
それを聞いた二人は、ジローが切れた!と思った。
以前、切れたジローにデートに行かされそうになったのを思い出す。
もちろん、ブン太と跡部がである。

「落ち着けジロー!」
「そうだぜ!俺たちすっごい仲良しだもん!なぁ?跡部ー」
「あ、ああ!めちゃくちゃ仲良いぜ!」

引きつった笑いを浮かべながら、手を握り合う。
手にはめいっぱい力を入れて。

「はぁ。ホントに仲良くしてよー?」

もちろん嘘だとわかっているが、ここでいつまでも言い争っても仕方ないと、一旦落ち着いてみる。

「なんか怒ったら眠くなってきちゃったC〜。…丸井くんさっき言ってとこに連れてって?」
「ん?おぅ!じゃあ、行こうぜ」

ブン太はジローの手を握ると歩きだした。
ちらりと跡部に「勝った」という視線を投げてから。

「…最初から勝敗は決まってたんだよ。バーカ」

目の前から消えていく二人を見ながら、小さく呟いた。
完全に見えなくなってから、跡部はテニスコートに向かって歩きだした。
真田になんと言い訳をしようか考えながら。





跡部と別れて、二人は校舎裏までやってきた。
そこには大きな木が一本立っていた。
そこの下まで行くと、木に寄り掛かりながら座った。

「ちょうど日が当たるんだけど、木陰があるからポカポカしていい場所だろぃ?」
「うん。あったかいね」

ジローはブン太の肩に頭を乗せながら答える。
確かに昼寝場所には最適だ。

「…恋ってむずかしね」
「ジロー?」

いきなり不思議な事を言うジローを見るが、顔が下を向いていて表情が見えない。

「何かを手に入れる為に何かを捨てなきゃいけないのってやだな」
「確かにな。でも、何だってそうだろ?二つ何かがあったらどうしても天秤にかけなきゃいけない」
「わかってる…」

わかってるけど、わかりたくない。
どうしても捨てた方を気に掛けてしまうから。

「俺は何があってもジローを取るけどな」
「オレだって!」

反射的に顔をあげると、ブン太と目が合った。
何事にも揺るがない、強い意志を持った瞳。
その目を見た瞬間、あぁこの人を好きになって良かった。
そして自分が丸井の事を世界中の何よりも好きなんだと気付いた。

「丸井くん、好き」
「いきなり何だよ?…俺も好きだけどさ」
「うん。好き。大好き」

好き、大好きよりももっと強い気持ちはなんて言うの?
なんだっけ。
鳳がよく言ってたあの言葉。

「愛してる」

うん。そうだ。
愛してる。
オレは丸井くんを愛してるんだ。

鳳が言っていた時はよくわからなかったけど、愛してるってこんな気持ちなんだ。

「丸井くんは?」
「俺も愛してるよ。ジローにだったら俺の全てをあげるよ」
「…それはちょっと言いすぎだし〜。丸井くん恥ずかしすぎ」
「お前が最初に言ったんだろぃ!」

甘い雰囲気をぶち壊したジローの頭を軽く叩く。
叩かれて、えへへっと笑うジローを抱き締めた。

「わっ!苦しいよ〜」
「誰にも渡さないから。アイツにだって!」
「丸井くん…」

ブン太の言う「アイツ」が誰だかわかるから、胸が苦しくなる。
やっぱりどちらかを捨てなきゃいけないんだ。
好きな人と居るためには…。

「オレにも丸井くんだけだよ?オレだって丸井くんを誰かに渡したりしない!」

そう言うとブン太の背中をポンポンと叩いた。

「なぁ、ジロー」
「何?」
「俺のことも名前で呼んでくんねぇ?」

ブン太からの要求に目を丸くする。
名前って下の名前でってことだよね。

「…ブン太?」
「何?ジロー」
「な、何って!言えって言ったのそっちじゃん!!」
すごく嬉しそうな顔をされてジローの方が赤くなる。
こういう何気ない事で幸せになれる自分達はなんてラッキーなんだろう。
好きな人と一緒に笑って、泣いて、笑って、たまに喧嘩して、また笑って。

「慈郎」
「ブン太」
「愛してるよ、慈郎」
「うん。オレも愛してるよ、ブン太」

笑って、笑って。
これからもずっと一緒に居ようね。
絶対に捨てる事なんてないから。
だからオレの事もすてないでね。

いつまでも愛してると囁き合おう。
キミの為に―――。




---後書き---
甘くなった?
甘いってどんなものを言うのかわかんねーよ!(笑)
跡部の扱いひど過ぎ。
砂糖吐きそうな会話をさせてみたつもり。吐ける?
途中で趣味に走りました(鳳宍)。ごめん。
愛児さんよ、これが私の限界だよ…。

おまけ(こっちも私の趣味が…)
二人がイチャイチャしてる時、跡部は。

真「練習試合だからといって、部長が遅れてくるとはたるんどる!!」
跡「好きで遅れたんじゃねーって言ってんだろが!」
赤「丸井先輩が迎えに行ったはずなんですけど、会わなかったっスか?」
跡「あーん?その丸井の所為で遅れたんだよ!」
柳「また、芥川と一緒か」
赤「何でわかるんスか!?」
柳「わからない方が不思議だが…」
真「…まったく氷帝は時間も守れんのか!って聞いているのか、跡部!!」
赤「副部長まだ説教してたんスか!!」
跡「(正レギュの奴らも連れてくればよかった…)」
柳「これで終わる確立100%だ!」
end






あきゅろす。
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