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【大好き】


今日は千石の誕生日。
俺、南健太郎は部室で一人悩んでいた。
付き合うようになってから初めての誕生日。
俺の時にアイツは「俺の誕生日忘れないでね」と言っていた。
そして「忘れた時は覚悟してね」とも…。

「やべぇよな〜…」

はっきり言って忘れてた。
最近は部活も忙しく、千石と二人きりになる事も少なかった。
会えば思い出すわけでもないが…。
今日まですっかり忘れていた俺は、当然プレゼントなんて用意してない。

アイツの「覚悟してね」という言葉が頭を支配していて、勉強にも身が入らなかった。
とりあえず、千石には会わないようにしていたのだが、部活では逃げるわけにはいかない。
部長である自分が、千石に会いたくないからという理由で休めない。

仕方なく皆よりも早く来てみたのだが。

「部活が始まったら逃げられないしなぁ」

素直に忘れていたと言う方がいいのだろうか?
言い訳ばかりが渦巻いて、自己嫌悪に陥りそうになる。

そろそろ、皆来る頃だろう。
重い腰をあげて椅子から立とうとした瞬間、ドアが勢い良く開いた。

「南!いる?」

千石だった。
一瞬、目の前が暗くなる。
…最も会いたくない相手と二人きりになってしまった。

「よかった〜。帰っちゃったのかと思ったよ」
「あ、悪かった」

何が悪いのかわからないが、後ろめたい気持ちからか自然と謝ってしまった。

「ねぇ、南〜。今日何の日か覚えてる〜?」

うっ。
やっぱりそう来たか。
千石はニヤニヤ笑いながら、俺の隣に座る。

どうしよう。

「お、お前の誕生日だろ…」
「覚えててくれたんだ!」

あからさまに喜ぶ千石に罪悪感が芽生える。

「ごめん…」
「南?」

急に下を向いて謝る俺に首を傾けながら、顔を覗きこんでくる。

「今日、思い出したんだ。誕生日の事。だからプレゼントとか用意してなくて」

なんか泣きそうになってくる。
俺が悪いんだから、泣かないように耐える。

「いいよ。そうだろうと思ってたもん」
「え?」

思いがけないあっけらかんとした千石の言葉に、顔をあげる。
そんな俺を見て、千石は微笑んだ。

「南、泣きそうだね」
「っ、違っ!」

慌てて目元を拭う。
千石がその手を掴んで止める。

「俺の為に悩んでくれたんでしょ?悪いと思ってくれたんでしょ?…ありがと」

半分くらいは自分を心配してたのだが。
でも、何もしてやれない自分が情けないとも思ったのも事実だ。

「嬉しいなぁ。南が俺の為に泣いてくれるなんて」
「だから、コレは違」

う、と続く言葉は千石の口の中に消えていった。
ちゅっと音をたてて、離れる。

「プレゼントはこれでいいよv」
「なっ!バッカじゃないのか!」
「南の真っ赤な顔も泣き顔も見せてもらったし〜」

ニヤニヤ笑いながらも、ホントに嬉しそうな顔をする千石に何も言えなくなった。
まあ、金が浮いたからいいか。

「…てゆうか、それだけで満足なのかよ」
「へ?」

俺は千石の腕を引くと、軽く口付けた。
千石はバカみたいに間抜けな顔をして固まってしまった。

「うわ〜、俺ってやっぱりラッキーかも」
「は?」
「南が大好きって事!」
「意味わかんねぇし…」

とか言いつつ、顔が熱くなってくる。
まあ、今日はコイツの誕生日だしたまにはサービスしてやるか、と思った。

「俺も大好きだよ」



---後書き---
また、微妙に短い。
千石の誕生日なのに、南視点;
まあ、いい思いをしたっていうことで。
別にナンゴクでもいいんじゃないかという内容だな。

(05.11.27)






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