[携帯モード] [URL送信]

【酒は飲んでも…?】


今考えると、未成年という言葉に縛られるべきだったんだ。
あんな事になるなら。
そして、二度とアレは飲ませてはいけないとも。





俺や長太郎、氷帝のレギュラー陣は跡部の家の新年のパーティーに呼ばれて、来ていた。

「この肉、うめ〜!」
「なあなあ、次はあれ食わねぇ?」

ジローと岳人は食い歩きをしている。
跡部と忍足はワイン片手に何やら話している。
まだ未成年だというのに、あいつらがワインを持っていても違和感が無いのが不思議だ。

「宍戸さん、これ美味しいですよ?」
「ん?…おぉ、サンキュ」

長太郎は頼んでもいないのにあちこちに行っては、食い物やら飲み物を運んでくる。
あいつの家も相当なでかさなのだから、こんな料理やパーティーが珍しいというわけではないだろう。

「宍戸さん、コレも美味しいですよ〜」
「なぁ、何でそんなにはしゃいでんのお前」
「え?」

いきなりな質問に驚いたのか、きょとんとした顔をする。
可愛いなぁ、などと不覚にも思っていると、長太郎はにっこり笑った。

「宍戸さんと新年から一緒にいられるから嬉しいんです」

こいつは何で、俺の言ってほしい台詞を言ってくれるんだろう。

「良い雰囲気のとこ、邪魔すんで」
「忍足?」

さっきまで遠くにいた忍足と跡部がやってくる。
手には相変わらずワインを持って。

「あーん?てめぇらジュースなんて飲んでんのかよ。お子様だな」
「…んだと?未成年のくせに酒なんて飲んでるお前には言われたくねぇよ!」
「このワイン、アルコール少ないねん。よっぽどやなかったら酔わへんで」
「へー。そうなんですか」

忍足の説明に呑気に返事を返す長太郎。
心なしか目が輝いているような…。

「鳳、飲んでみるか?」
「え。いいんですか!」
「はぁ?何、後輩に酒勧めてんだよ!」

跡部の言葉に長太郎の嬉しそうな声と俺の呆れた声が重なった。
長太郎の言葉を聞いて顔を輝かせる忍足に怪訝な目線を向けると、それに気付いた忍足に呼ばれた。

「んだよ?」
「宍戸は鳳が酔ったとこ見たいと思わん?」
「…まあ、見てみたいけど。でもあれって酔えねぇんだろ?」
「あんなん嘘に決まっとるやん」

信じたん?とさも当然のように言われ、開いた口が閉じなかった。
最初から長太郎に酒を飲ませる気だったんだ。

「まあ、弱いんはホンマやけどな。弱い酒でもたくさん飲めば…」

意味ありげな視線を向けてくる。
横を見ると、今まさに長太郎がワインを飲んだところだった。

「どうだ?」
「美味しいですね」
「なんや、鳳気に入ったん?あっちにまだあるから飲んできぃや」

そう言うと、先程まで忍足達が居た方を指差した。
確かにたくさんのワイン以外の酒も置いてある。
横の長太郎を見ると、やはり目を輝かせていた。

「…お前、酒好きなのか?」
「はい。ワインは飲んだことありませんけど」

話ながらも目線は酒に。
まあ、酔ったら止めればいいか。
そんな軽い気持ちで、宍戸は長太郎と一緒に酒を飲みに行った。

―――十分後。

「ししろさん、コレおいしぃれすね〜!」

三杯しか飲んでいないのに、既に長太郎は呂律が回らなくなっていた。

「誰がししろさんだ!…お前、もう飲むの止めにしろよ」
「え〜。だっておいしいんれすもん」
「だってじゃない!…つーか酔ってんだろ、長太郎」
「酔ってないれすよ〜。…あっ!」

抗議してくる長太郎を無視して、持っていたワインを奪う。
さらに、ソレを飲み干してやった。
ざまあみろ!っと長太郎を見た瞬間に、顔を掴まれた。
何事かと訝しんでいると、長太郎の顔が近づいてきた。
そして、そのまま口を塞がれてしまった。
もちろん長太郎の口で、だ。

「っ!」

驚いた俺は、手に持っていたグラスを落としてしまった。
落ちたグラスは盛大に割れて、部屋に響き渡る。
その音に驚いた跡部達は、さらに俺達を見て固まった。

咄嗟の事に呆然としてしまった俺の唇を舐めると、長太郎の舌が口内に入り込んでくる。
まさかそこまでされるとは思わなかった俺はさらにパニックになり、周りの奴らはさらに固まった。

「っ!んぅ…んん…ん!」

どのくらい経ったのか。
さすがに苦しくなった俺が長太郎の胸を叩くが、なかなか止めようとせずに、それからも少しの間口内を味わうように動き回る。
やっと長太郎が離れていった後、足に力が入らなくなっていた俺は長太郎にしがみ付くしかなかった。

しがみ付きながらも睨んでやると、長太郎は悪怯れた様子もなく笑った。

「へへ〜。おいしかったれす!」

そして、とんでもない事を言った。
俺はそんな台詞に顔を真っ赤にさせて、俯く。
跡部と向日は呆れたように目を逸らせ、忍足とジローはヒューヒューとか言って面白がっている。

長太郎は自分のした、事の重大さがわかっていないようでニコニコと笑ってる。
なんだか泣きたくなってきた…。
新年の初キスが仲間のいる前でなんて。

そんな、落ち込む俺の耳元で長太郎が何かを囁いてきた。

「続きは家でしましょうか?」

低い声で言われて顔を上げると、先程までの笑みは消えて、代わりに妖艶な笑みを浮かべていた。

「おまっ!…酔ってなかったのか?」
「キスの途中で冷めたみたいです」

俺って酔うとキス魔になるらしいんですよ、と笑って言う長太郎を凄く殴ってやりたくなった。
まあ、ホントに殴ったけど。

「いった〜!何するんですか?」
「お前、当分酒飲むなよ」
「え〜」
「飲・む・な・よ!」
「…はい」

そんなに好きだったのか、と思うくらいに長太郎は落ち込んだ。

「…飲むのは俺の前だけにしろよ」
「はいっ!」

やっぱり俺は長太郎に甘いな。
抱き締めてくる長太郎の頭を撫でながら思っていたら、すっかり頭から抜け落ちていた、事の原因の一人である忍足が近づいてきた。

「ラブラブなんはわかったから、それ以上すんなら帰れやて」

そう言って忍足は跡部の居る方を指差した。
当の跡部はむっつりとした顔をして俺達を見ている。
怒っていると言うより呆れていると言った方が正しいみたいだ。
本当に怒っていたら叫んでいるだろう。

「じゃあ帰りましょうか?宍戸さん」
「うぇあ!?」

びっくりしすぎて変な声が出た。
長太郎は俺を担いで部屋を出ていこうとする。

「ほな頑張りや〜宍戸」

そんな俺に、忍足は手を振りながら声を掛けた。
頑張れとかじゃなくて、助けろよ!

その後、俺達がどうなったのかは別の話。
まあ、最初の日から一日中一緒に過ごせたのは、正直嬉しかった。
調子に乗るから長太郎には言ってやらないけどな。



---あとがき---

キス描写大好き!←



第3回BLove小説漫画コンテスト開催中
無料HPエムペ!