●そして僕は平和の為に旅立つA
「ヒロ! ヒロ! 大変だよっ!」
扉を開ける音、駆けてくる足音、慌てたように自分の名前を呼ぶのは、大切な幼なじみのリヴの声。
どうやらあのまま暫くぼうっとしていたようだ。
切った指からの出血は止まっていたが、床にはまだ花瓶の破片が散らかったままだ。
何か言った気がしたが、どうも覚えてない。
思い出せない事で、もやもやするがリヴが部屋に入ってきたので、ヒロは立ち上がり、彼女に向き合った。
「どうしたんだい?」
「ファレスの村が…、焼かれて!邪竜が暴れたって!」
「何だってっ?!」
そこは友達のシグがいる村だ。
血の気が下がる。
頭が真っ白になる。
「無事な人は…!」
「まだ分からないの。
それで長老が…ヒロを呼んでこいって!」
「…分かった。ありがとう」
「ううん。あ、花瓶割れちゃったんだね。怪我ない?私片付けてるよ」
「うん、ありがとうリヴ」
ファレスの村の生存者は、ゼロだった。シグも…シグの妹のアルも、殺された。
邪竜の動きは活発になり、今も至る所を破壊して暴れている。
そして僕は、旅に出る。
見送ったリヴの目は不安と涙でいっぱいだった。
だから約束をした。
必ず、帰って、君と…。
この先、辛いことがあっても君との約束で乗り越えられる。
…そう、思っていた。
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