●だって、それが俺の役目B 縋られるのが好きだった。助けを求められる度に俺は歓喜に震えた。背筋がぞくぞくとして、高揚感が押さえられなかった。 他の誰かに助け求められない悠斗。俺しか縋る人がいない可哀相な悠斗。 そう思うだけで俺はいくらでも悠斗に優しく接する事が出来るし、悠斗を好きのままでいれる。 いつまでも守ってあげたい。 実は中学時代に、悠斗に手を差し延べてきた奴がいたが、俺が全力で阻止した。 邪魔だった。 誰かにこの役を渡したくなかった。その役目は俺だけでいい。 俺だけが、悠斗を助けられるんだ。 「…っ、おかしいよ!篠崎くんもおかしいっ!」 泣きながらそう吐き捨てて、彼女は去っていった。 「…あーあ。ふられちゃったか」 少し残念だ。彼女がもっと弱かったら、縋ってくれたら、俺は彼女も守ってあげたのに。 今度、彼女になるなら弱い子がいいな。 守ってあげたくなるような女の子。 俺は制服のポケットから携帯を取り出し、悠斗に電話をかけにっこりと笑った。 「もしもし、俺。あのさ、告白してもいい? 実は彼女にふられちゃってさ、傷心なの。 いつもより早いけど、今からそっち行っていい?」 . [前へ] [次へ] |