「あれ?そんな格好でどうしたの?ハーフパンツなんて珍しいね」 「あ、足立さん!ちょうどいいところに!釣りに行きませんか?」 「今から釣り?鮫川?」 「はい。ヌシを釣るんです」 「へぇー、鮫川にヌシがいるの?」 「ずっと挑んでいるんですが、なかなか…」 「ずっと、って、まさかここ数年…?」 「強いんです。いつもバレちゃって。だから、足立さんにひっぱってもらいたいんです」 「ええー。万が一落ちたりしたら、もうそろそろ川の水は冷たいんじゃないの?」 「冷たいです。死ぬかと思いました」 「実行済みなの…。そんな川に落ちたくないよー。もっと家でまったりー、とか、遠出して遊園地デートとかさぁ…」 「今年こそ釣りたいんです!そりゃもう大きいんですよ!ヌシ!全貌をまじまじと見てみたいじゃないですか!」 (こうなると頑固だなぁ、この子は…) 「それに、足立さんにひっぱってもらえたら、いけそうなき気がするんです!落ちるときは手、離してもいいですから!」 「出来るわけないじゃない!君一人を水に濡らすなんて………ん?」 「どうかしましたか?」 (半袖短パンで釣り。水に落ちたらあられもない格好でびしょびしょになるわけかぁ。可哀想だけど可愛いんだろうなぁ) 「足立さん?」 「あ、あぁ、いやいや。まぁ、もう帰るところだったし、少しくらいならいいかな。アタリがきたら君を引っ張っていればいいんだよね?」 「はい!よかったぁ、俺ひとりだったらまたバレるか落ちるかしてたと思います」 「そういうのは釣れてから言おうねー」 「あ、そうか。釣れない可能性もあるんだな…。でも!今日はきっと大丈夫です!足立さんもいるし!」 (そんな意気込まれたら、君を落とそうとしてる僕はどうしたらいいの…。) 「じゃあ行きましょう!」 その後、ぬしの引きの強さに、二人揃って川に転落。 前日の雨のせいか、思っていた以上の川の流れの速さにもがきつつ、水も滴るなんとやらを拝むために必死で這い上がったはいいが、水の冷たさでガクガク震えるわ、日の落ちた暗さで全然良く見えなかったとかなんとか。 |