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何なのこれ。
見なかった聞かなかった事にして帰ればいいの?
いや、でもここまで来ると彼の返事も気になる所。

まぁどうせ答えなんてわかりきってるんだけど。

『友達でいよう』だよね。

「そ…っか。えと……ん」

彼は少し困惑した顔で俯く。

何をそんなに悩む必要があるの。

「別に今すぐ答えろなんて言わないから。俺、男だし、さ。あんだけ殴り合ってんのに想った事だけ伝えらんねぇの、何かヤだったから、伝えときたかったんだよ」

「陽介…。うん。わかった。返事は…少し待って…」

何 そ れ 。

断らないって、少しは脈アリって事?
冗談でしょ。

「焦んなくていいから。じゃ、そーゆー事で。真面目に伝えたかったから、呼び出して悪かったな。…んと、また明日!学校で!」

ジュネスはそう言って片手を上げると、走って帰っていった。

東屋には残された彼。
悠くんが、まだ少し赤い顔で困惑気味に俯いていた。

どうしよう。
帰ろうか、とも思ったが、僕が出て行った所に悠くんは、どんな話をしてくれるだろう。と興味も湧いた。

よし、話かけてみよう。

僕は何気なく、今来ましたよ。みたいな顔をして悠くんの居る東屋へと足を運んだ。

「やぁ、悠くん。どうしたの?こんな所で」

話かけたら悠くんは面白いほどに肩をビクリとさせ、此方を振り返った。

「あっ…足立さん…!い、今帰りですか?」

普段の悠くんとは打って変わって、赤い顔のまま、しどろもどろに口を開く。

「うん。少し散歩して帰るつもりだったんだけど、偶然君を見つけたからさ」

「い、今の時期は晴れると気持ち良いですもんね。鮫川」

「そうだね。田舎の空気も悪くないよ」

今はとても気分が悪いけどね。
そんな態度は微塵も見せずに話を続ける。

「ところでどうしたの?1人でこんな所で俯いて。何か悩み事?」

「あ…えっと…」

悠くんは、言葉に詰まって俯く。
その隙に悠くんの隣へ座り、肩をポンポンと叩いた。

「僕で良かったら話してよ。頼りないかもしれないけどさ」

はははっとおどけた顔をして笑ってみせると、悠くんはスッと顔を上げて僕を見つめた。

相変わらず色素の薄いグレーがかった瞳は綺麗で、そこに僕が映っている事に少しだけ気分が良くなる。

「あの…足立さんは、恋人とか…いますか?」

「残念ながら。いたらこんな所で1人散歩なんかしないって。好きな人ならいるけどね。前途多難って感じかなぁ。何?恋の悩み?」

「えと…はい…おかしいですよね。いつも足立さんとならもっと上手く話せるのに」

また少し俯いて黙り込んでしまう。
何だかジュネスの告白を本当に真剣に考えてる悠くんに少し苛々してしまう。

友達でいよう。で全て丸く収まるじゃないか。
何をそんなに真剣に考える必要がある?
そう言ってしまいたくなる言葉をグッと飲み込んで、片腕でゆっくりと悠くんの肩を抱いた。

「ごめん。ここじゃ外だし、話難いよね。僕の家においで。ここよりは話易いと思うし。何なら自慢のキャベツ料理を振る舞っちゃうよ!」

出来るだけ優しい口調で、にこやかに笑いながらそう提案すると、悠くんはコクリと頷いて携帯を取り出した。





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