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雨に唄えば 1/2

「また降ってんなー…」

教室の窓から外を眺めてはそう呟く。
帰り支度をしながら今日何度目かの呟きを聞いて、ちら、とそちらを振り向くと、憂鬱そうな背中が目に写った。

「あんまり長いと嫌な気分になるな。特に今年は」

憂鬱そうな背中に向かってそう言うと、その背中の持ち主はくるっと振り返った。

「だよなぁ。また何かあんじゃないかと思ってさ。あ、鳴上、もう帰る?したら俺も帰るわ」

頷くと、窓際からこちらに向かって歩いてくる。
帰り支度はもう済んでいたようで、俺の後ろの席に置かれた鞄を取り上げると、「いこーぜ!」と肩を叩かれた。

「傘、忘れんなよー」

朝から降り続く雨なのだから忘れるはずもないのにそう言い、昇降口で靴を履き変える。

所々に少しだけ大きめの雨の滴が落ちていて、すのこも湿っているのをみると、まだ雨足はおさまっていないんだな。とわかった。

「うっわ。結構降ってるぞ。傘さしてても濡れるかもなー、こりゃ」

外に出て昇降口の軒先から空を眺めてみるも、一面の濃い灰色。
少し向こうは黒に近くなっていて、雷でも鳴ってるんじゃないかと思わせる。

「秋の長雨って、もうすぐ冬だっつーの。いつまでが秋なんだよ!?」

この間、足立さんも同じようなことを言っていたなー、と思い出して苦笑する。

そんな事にはおかまいなく、ぶつくさ文句を言いながら傘を開いたので、帰路につくことにした。

「そういや鳴上さ、足立さんとは上手くいってんの?」

いきなりの質問に階段を踏み外しそうになる。
いやまあ確かに暗黙の了解みたいになってはいたけれど、こうもストレートに聞いてきたのは雪子以来初めてだったから。

「あ…う、うん。まあ」

「なんだよその曖昧な返事ー。ま、聞かなくても上手く行ってる事くらい普段の鳴上見てりゃわかるけどさ」

ははは、と笑って苦無を持ち替えるように傘をくるりと回した。

わかっているならわざわざ聞くな。と思ったが、言わないことにしておく。
どうせまた、わかりやすいとか顔に出てるとか言われるのかもしれないから。

「けどさ、ほんと周りに恵まれてんだよなー、鳴上は。こういうのだってそーゆー恋してますってだけで嫌がる人間いるじゃん?」

…確かに以前はそれを危惧して、なるべくバレないように、わからないように過ごしていたけど。

こうもあからさまにバレていても、(殆ど足立さんの所為だけど)周りはみんな普段通りに接してくれる。

運がいい、というか、友達に恵まれたんだとほんとにそう思っていた。

「あ、勘違いすんなよ?別に否定派なわけじゃねーし、むしろ俺は肯定派なんだからな?」

「うん。ありがたいと思ってる」

「いや…、な。こんなだったら俺も早く鳴上に言っときゃ良かったなーとか思ってるわけだよ」

それを聞いて、以前の事を思い出す。
ああ、陽介は俺が好きだって言ったんだ。

新しい世界ではそんな素振りは今まで微塵も見せなかったけれど、もしかするとどの世界もそうなのかな…と、唐突に思った。



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あきゅろす。
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