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「ん、ふ…ぁ…はぁ、はぁ…」

抵抗のない唇を心ゆくまで堪能して唇を離すと、悠くんはトロンと惚けた顔をして肩で息を吐いていた。

「…ねぇ、悠くん。どうして抵抗しないの?」

「はぁ、…あ、だちさん…」

「ん?」

サラサラとした髪の毛を撫でると、悠くんは目を閉じて呼吸を落ち着かせようとしているようだった。

次第に悠くんの呼吸も落ち着きを取り戻し始め、ゆっくり深く息を吐くと閉じていた目を開けて僕を見上げる。

「あ…足立さんにこんな事されたら…抵抗なんて出来るわけ…」

「…ん?」

「俺の気になってるって言った人が、あ、足立さん…だから…」

────お。

驚いた。
僕はてっきりバイトしてるっていう家庭教師先の奥さんとか、病院のナースさんとか、学童の親御さんとか。
そういう類の報われなさそうな相手だとばかり──。

驚いて言葉を失っている間に、悠くんは僕のシャツから手を離し、俯いてフルフルと震えていた。
この一言に相当勇気がいったんだろうとわかる。

「きっ…気になっている、が、足立さんにキスされて…その…俺…」

「…うん?」

「足立さん。俺も、足立さんが好きです」

耳まで赤く染めた顔がふっと上がり、どこか泣きそうな、けれど真剣な表情の悠くんがこちらを見つめていた。

なんなの、これ。
なんなの、この予想だにしていなかった幸福感は。

「悠くん…!」

思わず悠くんを思い切り抱きしめて、ありったけの力を込める。

「い、痛いです、足立さん!」

「うわぁ!ご、ごめん、悠くん!嬉しくなってつい…!」

いきなりキスをした時よりバタバタと激しく抵抗されて慌てて体を離すと、悠くんは軽く咳込んで涙目で見上げてくる。

「けほっ…大丈夫、です。足立さん、力強いんですね…意外と」

大丈夫、と言う言葉を聞き、今度は優しく悠くんを抱きしめて背中をさすった。

「君は意外と細いんだね。こうしなきゃわからなかったよ」

お互いに小さく笑い、暫く抱き合ったままゆっくりとした時間が過ぎていった。


下心なく部屋に呼んだわけじゃないけど、まさかこんな展開になるとは予想していなかった。

いや、嘘。
頭の片隅では低確率な展開として考えていたのかもしれない。
悠くんの好きな人が僕だと良いなって。

「足立さん」

「ん?」

「ありがとうございました」

「え、何が?」

「悩み事、解決出来ましたから」

「あ。あれは…その、断るの?」

「はい。これからも友達でいられればなって、思ってます」

「そっか。じゃあ悠くん」

「はい?」

「僕と付き合って」

「ふふっ、はい」

抱きしめていた体を少し離すと、薄く頬を染めた悠くんがふわりと笑う。

僕もにこりと笑い返すと、再び悠くんの唇にキスを落とした。





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