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「いやぁ。振る舞うとか言いながら結局悠くんに全部任せちゃったよ」

「別に良いですよ。聞いてもらうのは俺の方なんですし」

自分で作るベタッとした野菜炒めとは違い、料理上手な悠くんのシャキシャキした歯応えの良い野菜炒めを食べ終わり、流しへと食器を片付けると、悠くんにリビングのソファを勧めて僕は絨毯に座り込む。

小さめのテーブルに肘を付き、『じゃあ本題』と言葉を促すと、また少し表情が曇り始めた。

「足立さん…、俺、あの…」

「落ち着いて、ゆっくりで良いよ」

相変わらずこの話題になると困惑気味に話下手になる悠くんに、やさしく語りかける。
悠くんと2人きりという状況が余裕を生んだのだろうか。
割と自然に優しげな声色が出た。

「はい、あの、クラスの…友達から告白されたんです」

「うん。それで?迷ってるの?」

「迷ってると言うか…。気持ちは凄く伝わったし、でも…」

何だか煮え切らない。
もしかして本当に付き合うか付き合わないかで 迷 っ て る ?

「その子はどんな子?僕の知っている子かな?」

「ん…俺の事良く見ててくれて、危ない時は助けになってくれるような…。おちゃらけたように見えてさり気なく周りに気を使ってくれる、あ、足立さんの知っている人です」

「ふぅん。君もその子を良く見てるみたいじゃない」

どんな子?と聞いただけでこうもスラスラとジュネスくんの性格を言えるなんて、なかなか出来る事じゃないよね。
ちょっとイラッとしちゃうなー。

「いや、だって相棒だし…」

「花村、陽介くん?だっけ?」

「…っ、あ!や、その……はぃ…」

消え入るような小さな声で肯定した後、更に深く俯いてしまう。

「そっかぁ。はははっ、刑事をナメたらダメだよ〜。あ、これって誘導尋問かな?ごめん、卑怯だったかもね」

「いえ、言わずに相談するより、少し気が楽になった気がします」

最初からジュネスくんだって事はわかってたから、悠くんから答えを引き出すなんて造作もなかったけどね。

「それなら良かった。それで、彼が男の子だから迷ってるの?」

「それは…違います。あ、あの、俺…その、気になってる人がいて…」

それは初耳だ。
まさかこの子に好きな人がいるなんて。
2人きりの余裕が少しづつ壊されて…何だか苛々してきたなぁ。

「それなら『気になる人がいるから友達でいよう』って断ればいいじゃない。何を躊躇っているの?」

「…俺の気になる人は、俺には釣り合わないと言うか…全然大人だし、えと、何だかんだいって頼りにしちゃう人です。この機会に…いっそ諦めて、高校生は高校生らしい恋愛でもしたら良いのかな。とも思ってしまって」

彼は少し辛そうに目を伏せる。
そんな要くんの閉じた目蓋から流れ生える色の薄い長い睫毛が、蛍光灯の光でキラリと光るのを綺麗だと思い、つい見入ってしまう。

諦める事を辛そうに話す悠くん。
これだけ想われている人が羨ましいと思う。

「その、悠くんの想い人に、少しでも悠くんの気持ちは伝えたの…?」

俯き、目を閉じたまま小さく首を横に振る。

「僕は社会に出た大人と高校生が釣り合わないとは思わないけどね。どうせなら気持ちを伝えても良いんじゃないかな?悠くんの勇気次第だけどね」

悠くんはゆっくりと目を開けると、グレーの瞳が僕を捕らえる。
目を閉じている間に涙腺が緩んだのか、少し潤んだ赤い目をしていて、それが何とも言えず綺麗だった。




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あきゅろす。
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