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「…っ、あ亀?」
意識に届くように少し大きめの声でゆっくりしゃべる。
日テレの前に着いて、パスを持ってくるのを忘れたことに気付いて車から電話を掛けた。
亀の第一声が確実に酔ってるものだったから、眉毛がピクッと反射的に動いた。
『仁…、どうしたの?』
「どうしたのじゃねーよ‥。マネージャーにお前迎えに行くように頼まれたの。」
『へ?‥なんで?』
「なんでもくそもねーだろ。お前酔ってんじゃん;;」
『酔ってないよ?』
「(ムカッ)いゃ、酔ってるから」
『酔ってないもん…』
「っはいはいわかった。でも俺日テレの裏にいるから来て?もう撮影終わってんだろ?」
『信じてねーな‥、スタジオまで来れないの?』
「ごめん、パス忘れただから」
そのとき電話の向こうから共演者の人の声が聞こえた。男の。
“亀梨君、うちのマネージャーが一緒に送っていこうかっていってるけどどーする?”
自分の眉間のシワがだんだん増えていく感覚。
だから言わんこっちゃない。
だから一人にしたくない。
だから、束縛しないなんて言ってた恋愛感を、180度変えてしまった。
『あ、田辺さんすいません。』
「ぇっ……」
『ありがたいんですけど、恋人迎えに来たんで先に失礼します。』
思わず吹き出した。
亀の衝撃発言でスタジオの騒ついていた音が一気に消えたのに、俺の顔がだらしなくにやつく。
ただちょっとだけ疑ってしまったことに後悔。
「亀ごめん‥」
スタイリストさんと話していて携帯から耳を離してるだろう亀に謝っておいた。
『なんか言った?』
「ううん、それより早く来て?」
『うん、待っててね』
「はーい」
そう言って電話を切る。
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