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居酒屋で恋して
居酒屋で恋して 16


ポタッポタッ。

布団に涙が零れていく。



あれ、おかしいな。

涙が止まんない。

手で拭いても拭いても涙は次から次へと溢れてきて、僕の涙腺は決壊したみたいに止めどなく流れていた。



やっぱり颯人さんは僕のこと、僕が思ってる好きじゃあなかったんだ。



だから帰れなんて言うんだ。



さっきの僕にくれた言葉は成り行きで、僕をあやす為だけに言ってくれたんだ、きっと。

だって、颯人さんは優しいから。



だったら颯人さんに迷惑はかけれない。



帰らなきゃ。



僕はベッドから出ようと決心して、身体を端にずらせて足を床に下した。



「颯人さん、僕帰るね。迷惑かけてごめんなさ・・・い?」



挨拶をしようと颯人さんに向かって言ったその時、フワッと颯人さんが僕を抱き締めてくれた。



「颯人さん?」



「やっぱり駄目だ。チィ、帰るな」



「え?」



意味が分からなくって颯人さんに聞こうとしたら、素早く顎をつかまれて唇を塞がれた。



チュッ、クチュ。

軽いリップ音が耳に響く。



「ンッ・・・///」



一瞬の出来事に思考が止まって、目の前にいる颯人さんの端正な顔を、これでもかってぐらい大きく目を見開いて見ていた。



今・・・今、颯人さんの唇と、僕の唇が合わさってる、よね。



合わさってる?

合わさってるっていうことは・・・これってキス?



う、ウソだぁ!!

颯人さんが僕にキス?



ウワァ〜!

今、僕は好きな人と、初めてのキスをしてるんだ。



あまりの心地よさに放心して、唇を放された後でもトロンと夢見心地でいた。



「チィ、可愛いチィ」



颯人さんの優しい声が僕に降り注ぐ。

なんて幸せなんだろう。

颯人さんに可愛いって言われながら髪を撫でられて、顔中にゆっくりとキスの嵐をくれる。



ヒャ〜!
恥ずかしいよ〜。

でも嬉しいよ〜!



しばらくその幸福感に浸っていたら、颯人さんが僕の目を優しい眼差しで見つめてくれながら口を開いた。



「チィ、泣かせて悪かった。チィが泣くと堪えるんだ。だからもう泣かないでくれ、頼む」



「颯人さん、ごめんなさい。僕、僕は・・・」



言葉につまる。

僕は颯人さんが好きだから、一緒にいたくて・・・だから帰れなんて言われて悲しくなったんだ。



でも今は違うんだよね、颯人さん?






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