鳳凰の宮学園
久我山 蓮人 2
久我山には気をつけて。
今朝の龍弥君の言葉がふいに頭に浮かんだ。
「な、何?」
久我山が真っ直ぐに僕を見る。
僕は恐くて後退りしそうになった。
「何か探してたのか?」
えっ?
「う、うん。」
「何を?」
「え、えーと、ポットとか、色々。」
久我山はキョトンとした。
「何で?」
「お湯を沸かそうと思って。」
「何で?」
今度は僕がキョトンとした。
「お茶を淹れようとしたから。」
久我山はやっと合点がいったみたいだ。
「あー。ポットなら確か俺の部屋にあったな。持ってきてやるよ。」
久我山ってキッチンには入った事ないんだろうか?
無さそうだな。
キッチンには調理器具が全くないし。
それにいつも外食してるんだろうな。
男だから料理なんて普通はしないけど。
偏った食事になると身体に悪いんじゃあ。
「柊木、これで良いか?」
見るとTFのポットだった。
1分でお湯が沸くんだ。
形も可愛いんだよな。
「ありがとう。使って良いの?」
「ああ。俺使わないし。」
「久我山、お茶飲む?」
僕は自然に聞いたつもりだったけど、久我山は固まってる。
「久我山?お茶飲む?」
僕は再度聞いてみた。
「あ、あー。」
久我山はソファーに座った。
僕は部屋にお茶の葉を取りに戻った。
棚の前に行き、どのお茶を飲もうか悩んだ。
あっ!
急須もいる。
コップも。
僕は急須と茶葉とコップを持ってキッチンに戻った。
「久我山、コップはどこにあるの?」
「持ってない。」
「えっ?何で?部屋で何か飲まないの?」
久我山は頬をぽりぽり掻きながら言った。
「適当に、いつも缶コーヒーとかペットボトル買うから。部屋で湯沸かして、飲んだ事ねぇ。」
僕は驚いて久我山を見た。
それで生活出来るんだ。
僕は久我山の分のコップを取りに部屋に戻った。
お湯が沸いたから急須に注ぎ、1分待ってコップに淹れた。
「はい、どうぞ。」
「ありがと。」
久我山は照れたように言った。
一口飲むと、顔が綻んだような気がした。
「旨いな。」
普通の煎茶だけど、喜んでくれると嬉しい。
「良かった。」
僕も久我山に笑顔を向けて言った。
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