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鳳凰の宮学園
朝靄 5


僕は久我山の形相に身体が硬直した。



「久我山?肩痛い、よ・・・・・離して?」



僕は久我山に懇願したけれど離してくれなくて、それどころか肩を掴む指に力が入った。



「・・・・・っ!」



肩の痛みが増し、僕は顔をしかめた。



「昨日はもっと酷い痛みを味わったんだろう?だったらなんで怒んねぇんだよ!」



「おこる?」



「そうだよ!お前はナンも悪くねぇのに、気に入らねぇからって理由だけで酷い目に合わされてんだぜ?普通なら許さねぇぜ。」



僕は目を伏せた。

普通ならそうなんだろうな。



でも・・・。



「!」



急に久我山の力が弱くなり、僕の頬に長い指で触れた。



「な、なんで、泣くんだよ?肩すっげぇ痛かったのか?・・・悪ィ、俺、馬鹿力だからよぉ。」



僕は弱々しく首を振った。

久我山のせいじゃなくて。



僕と久我山はずるずると床に座り込んだ。



「久我山、僕・・・。」



僕は目を開けて久我山を見た。

久我山も僕をじっと見てる。



「僕、中学の時、クラスの皆に無視されたことがあったんだ。なんで無視され出したのか理由が分からなくて、嫌な、悲しい思いをしたことがあるんだ。だから昨日のこと、怖い思いをしたけど、怒りとかわいてこなくて、むしろ悲しさでいっぱいなんだ。でも、今日、久我山が正直に言ってくれて嬉しかった。普通なら久我山だって自分の親衛隊が悪いことをしたって何も言わないでしょ。」



話し終えると久我山は僕を抱き締めてきた。



「悪い、俺、感情的になって。お前が一番辛ぇのに・・・。話さなくていいことまで話させてさ。ごめん。」



「謝らないで。僕も変なんだ。久我山にはなんか話せちゃって。不思議・・・昨日は久我山のことムカついてたのに。」



「ムカつく?」



僕は昨日の久我山の自画自賛を思い出して笑みが溢れた。



「変態だから。」



僕の言葉に久我山は過剰反応した。



「お、俺は変態じゃねぇ!ここが男子校だからだ。昨日のだって火傷が心配だったからであってだなぁ・・・?」



僕は笑い出した。

久我山って面白い。

本庄さんや寮長の気持ちが今なら分かる。



「おい、なんで笑うんだよぉ?」



口を尖らせて拗ねた表情も、なんか可愛い。



本当に久我山は、結構良い奴かもしれない。


僕は久我山と仲良くやっていけそうな気がしていた。





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