鳳凰の宮学園
寮長 2
何の反応もない。
ずっと頭を下げている訳には行かないから、勇気を振り絞って頭を上げた。
声の主を見上げると、それはそれは背の高い男前が立っていた。
短髪でキリッとした目元、鼻筋が通ってて引き締まった口元、筋肉質の体躯。
半袖を着た肩に担いだ工具箱が、思いっきり似合ってる。
男の中の男、兄貴って感じだ。
カッコ良い〜!
僕がずっと憧れの目でキラキラと見つめていたら、男前の人はウンザリしたように首を振った。
「何か用か?」
「えっ?」
「俺の部屋の前にいるだろ。」
不機嫌丸出しで男前が僕の立っている部屋を指差した。
寮長室。
そうだった!
じゃあ、この人が寮長なんだ。
「あ、あの、外出するので許可を貰いにきたんですけど、さっき本庄さんに教わったので、部屋から外出標をメールします。」
照れていたので、伏せ目がちにそう言って、ペコッと頭を下げた。
寮長は僕をじっーと見下ろしていた。
そしてふと、思い出したように話しかけてきた。
「お前かぁ!新入りってのは。ふーん。」
寮長は僕を上から下までじろじろと見てきた。
わっ。
こんな男前に見られたら照れてしまうのと同時に、同じ男なのにこうも差があるから少しばかり劣等感が沸いてくる。
「久我山と話したか?」
「えっ?え〜と。ほんの少し。」
「そうか。お前の名前、柊木だったかな?」
「は、はい。」
寮長はさっきまでとは打って変わった優しい態度で話してくれた。
「久我山と同室は大変だろうけど、あいつは根が良い奴なんだ。不良を気取ってて怖そうに見えるが、普通に接してやってくれないか。」
僕は寮長を困惑気味に見た。
久我山のこと、またもや頼まれちゃった。
あいつって結構信頼されてるんだ。
で、でも変態だし。
すると寮長は僕の思っていることを察したのか。
「大丈夫!」
「な、何がですか?」
「柊木は久我山の好きなタイプじゃないし、嫌いなタイプでもないから、襲われたり殴られたりすることはない!」
自信満々に寮長は発言した。
誉められたのか、けなされたのか理解に苦しむんですけど・・・寮長。
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