鳳凰の宮学園
tatsuya 雪狐 2
足跡を辿って森の中の小道を抜けて行く。
すると、前方の小さな丘に白狐が、どこかに視線をやって、丸まって座っていた。
「うわぁ〜♪本当にいる〜!なんか可愛いっていうより、高貴な感じだね。はぁ〜、綺麗・・・///。」
領の白狐を見る嬉々とした顔を見れて、俺は充足感で一杯になった。
しばらく眺めていると、バサッ!と音がした。
白狐が俺達に気付いたようで直ぐに立ち上がり、一瞥した。
数秒視線が合ってから白狐は去っていった。
「あっ、行っちゃった。」
残念そうな声。
もっと見たかったんだろうな。
「領、明日も来る?」
俺の言葉に領は満面の笑みで返してくれた。
「来たい!龍弥君、お願いしても良いの?」
「あぁ、もちろんだ。領の為なら、いつでも喜んで。」
「あ、ありがとう・・・///。」
領の照れた顔。
可愛くてたまらない。
いつまでも見ていたいけど、そろそろ行かないとSHRが始まってしまう。
「領、行こうか?」
「うん。」
来た道を引き返して、俺達はそれぞれの校舎に向かう。
別れ際に、明日会う約束をして。
※ ※ ※ ※
中等部に向かって歩いていると、前から銀色の髪をした派手な男が気だるそうに歩いてきた。
挨拶も無しに無言で通り過ぎようとした時、銀髪の男が声を掛けてきた。
「可愛くねぇガキだなぁ、お前は。お兄様に挨拶も出来ねぇのか。」
構わずに歩き続ける。
「フッ。粋がってられんのも今の内だけだぜ。朱雀が卒業したら、お前なんてただの塵だ。」
歩みを止めて、銀髪の男・鳳凰 玄武を振り返った。
片端の唇を上げ、見下した目付きで俺を睨み付けている。
「一言言っておく。お前がどう生きようと興味はないが、俺に干渉するな。それに・・・兄弟だなんて思ってない。」
玄武の眉がはね上がった。
そして先程よりもさらに冷たい目付きで。
「いい度胸じゃねぇか、くそガキ。お前のその澄ました面を、苦痛で歪ませてやるぜ。」
「フッ。悪趣味だな。だが遠慮しとくよ、お前とは関わりあいたくない。」
「テメェ。」
玄武は話続けていたが、俺は歩き始めていた。
あいつの話に興味がないからだ。
鳳凰 玄武・・・。
戸籍上、俺の2つ上の兄になる。
・・・母親違いの。
そして、兄弟の中で父親に唯一、愛情をかけられてる男でもある。
朱雀や俺には、ひとかけらの愛情も示さない男からの・・・。
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