頂き物
『温室の花』こざる様より





寒風が草木を枯らすこの季節。
晴れ渡る空の下で、街は色を失くして灰色に沈む。


人々は家の中で暖炉を囲んで、身を寄せあって過ごしているだろう。
小さいなりに暖かい我が家で。

広い宮殿、石造りの建物の中は決して暖かいとは言えないけれど。
ここには庶民の家にはないものがある。


宮殿の一番奥まった、皇帝の私室からは庭が一望出来る。
大きな窓から見える四季折々の草木が気持ちを和らげてくれる。


細やかに手入れされ、花が絶えることはないけれど。
今は常緑樹の緑と冬に咲く花が、幾分寂しげな彩りを添えている。


扉を開けて庭に出ると。
足元を空っ風に吹かれて落ち葉が通り過ぎる。


小さくとも皇帝のお気に入りの庭園である。
公式に使われる大庭園より、意匠を凝らして趣が深い。


冷気に頬を染めて、白い息を吐きながら。
リオンは上衣の前を押さえて足早に通り抜ける。


皇帝に気付かれなかった花が寂しそうに項垂れる。


秘密めいた庭園の一角には、硝子張りの温室が建つ。
その外観はまるでお伽噺の妖精の住まいにも似て、冬の日差しを受けて眩く輝いた。


――キィ。


扉を開くと、冬とは思えない暖かい空気に包まれる。
強張った身体中の力が緩んで、上衣を脱いで小さく体を伸ばす。


花の香りが漂い、まさに常春だ。
柔らかくすらある甘い空気を吸い込んで、リオンは迷うことなく進んでいく。


鮮やかな赤色、ブーケのような丸い花姿。
冬を欺く満開のゼラニウム。


窓辺に飾れば部屋がより明るくなるだろうと、丹精込めて育てた鉢植えである。
真冬の寒さでは開花しないが、温室ならば咲き溢れる。


ゼラニウムはまちるの誕生花でもある。
明るくて鮮やかで、愛らしい。


彼女を思い浮かべながらこの花を育てた。
きっとこの花は、リオンの気持ちを知っている。


水を与えるたび、今は何処にいるだろうとか。
咲き終えた花を摘むたび、甲板で笑っているだろうとか。


新しく花芽が出ると、まちるに出会えたようで嬉しくなる。
そうやって大切に育てて、鉢から溢れそうになる花を満足げに見つめるのだ。


早く会いたい。
こうしている間にも、シリウスはリースに向かっているだろうか。


冬の空と海の狭間で。
船首に立つ輝く瞳の彼女が、リオンの待つ陸を真っ直ぐに見つめているだろう。


彼女と過ごす部屋の窓辺には、手ずから育てた鉢植えを飾ろう。
冬の日差しは弱いけれど、窓から射し込む日差しは花を囲む二人を暖かく包むだろう。


荒い波や激しい風には晒されない、温室で育つ花のように穏やかな日々。
でも自由への憧憬が胸に溢れたら、二人でちょっとした冒険に出てもいい。


どんな時でも共に手を取り、共に歩む。
これからの人生を共に生きる為に。


温室の硝子越しに見る冬の空は、何処までも透明に青い。
鉢植えに風除けを被せながら、リオンは小さく呟く。


―――もうすぐあなたはリースに着く。
そうしたらあなたは僕の花嫁ですよ。―――


海賊達が真珠のような花嫁を乗せて、冬の海を乗り越えて港へやって来る。
国中に祝祭の鐘が鳴り響く、その日はもうすぐだ。


リオンは鉢を胸に抱いて、温室を出る。
まちるその人を扱うように大切に、優しい微笑みを浮かべて。


誕生花を新婚の居室へ飾る。
二人で過ごすこれからの日々は、優しい時が流れる予感に満ちている。







――赤いゼラニウムの花言葉「君ありて幸福」――



―――――――――――――――――――


今年も誕生日を迎え、恋海と出会った頃アラサーだった私は早くもアラフォーとなりました。


いや、30代後半もアラサーだと言い張りアラサー時代の比率を多くしているってだけなんですけどね。


そんな私が純真な乙女心を思い出す時期がやってきたのです。


そうです、リオンくんとの恋物語をまた今年もいただいたのです。


去年はリオンくんからプロポーズを頂きました(書いてくれたのはこざるさん)。


今年は婚前のリオンくんが花嫁の到着を心待ちにするという、なんとも幸せなファンタジーを頂きました(書いてくれたのはこざるさん)。


そう、もう私のなかでリオンくんとの恋物語は完全に現実世界と一線を画したファンタジーなのです。


実際にこんな人とこんな恋が出来たら、とかいう現実よりの妄想ではないのです。


どっぷり空想して現実を忘れ去り、リオンくんと幸せになります。


さあこの困ったイタい主婦がヒロインですが、リオンくんはどこまでも素敵だ。


温室で私の誕生花を育てている。


素敵だ。


庭園に咲く花には見向きもせず、その温室の花を目指してまっしぐら。


一途で素敵だ。


その花を愛で、育て、私が今何をしているのかと思いを馳せている。


一途な愛が素敵だ。


誕生花は私と同じで明るく鮮やかで愛らしいって。


その花を新婚の(ここ大事)居室に飾るのだそうだ。


もう発想が素敵だ。


そしてその花を大切に大切に抱えて戻るのだという。


読んでいて手に取るようにわかるのは、そのリオンくんの優し気な幸せに満ちた表情です。


ああ何もかもが素敵だ。


いかがですか。


素敵でしょう。


ビックリするくらいの愛情を注がれている私。


幸せっていいですね。


リオンくん、私が幸せにするからね。


こざる様、今年も私を暴走させてくれてありがとう。


来年は結婚式をお願いします←本人に了承をいただいております


本当にどうもありがとうございました!!


あ、リュウガ船長もお誕生日おめでとうー!!





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あきゅろす。
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