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仔獅子ちゃんと仔獅子くん
木の葉での思い出*



「こんなんだったっけ......?」

「そっか......むすこを最後に連れてきたの、もう何年も前だったわね」



雷車を降りて少し歩けば"あん"と書かれ開かれた大きな門が目に入る。
通過許可を得て門を潜れば自里とは随分雰囲気の違う光景が広がった。

━━━...木の葉隠れの里。

子どもの頃に何度か母ちゃんに連れられて来たことがあるけれど、久しぶりに来てみれば随分と見慣れない建物が立ち、でかくなっていた。



「まだ時間もあるしゆっくり行こっか、むすこ」

「オ〜ッス(よっしゃ!)」



平然を装いつつ、心の中でガッツポーズをする。
こうして母ちゃんの横に並んで歩くのは久しぶりだ......しかも他里で、となれば余計嬉しい。



「楽しそうね、むすこ」

「......まぁね」



おっといけない。あんまりテンション高いと母ちゃんにバレちまう。
暫く歩いているとある広告が目についた。
あれは...新作!!先行販売かよ!さすが本社のお膝元......。
雷バーガーの新商品の広告に一瞬食いつくも直ぐに何もなかったかのように装った。
でも。
今は遊んでる場合じゃない......いや、でも食べたい......でも遊んでる場合じゃ...いや、めっちゃ食べたい......!!
心の中で葛藤していれば突然、隣にいた母ちゃんがクスクスと笑いだした。



「アレ、食べたいんでしょ。むすこ?」

「......!!ぜ、全然っ!」



ぷいっ、と顔を背ければまた母ちゃんが笑った。
チラッと見れば、未だニコニコとこちらを見てる。



「どうしたの。顔、赤いよ」

「......!!き、気のせいだって」

「......?そう?」



また顔を背ける。
母ちゃんって、笑うとスッゲー可愛いんだよな。
多分、父ちゃんもこの笑顔にやられたに違いない。



「むすこ、父さんたちに挨拶しに行ったら自由に散策していいからね」



屈んだ母ちゃんが同じ視線になったと思えばぽん、と頭を撫でられた。



「......ホントに大丈夫なの?熱あるんじゃ...」

「だ、だ、大丈夫だって!」



 
額と額をくっつけて確認しようとする母ちゃんを慌てて制止してすぐさま距離をおけば、母ちゃんは不思議そうにする。
マジ危ねェ......そんなことされちまったら昇天しちまうって。
そう言えば父ちゃんもシーさんも「あいつは鈍感だ」と言ってたけど......頷ける。
自覚症状がない故、恐ろしい。



「私はカルイの所に寄ってるから。もしも......」

「分からなかったら"秋道一族"で人に聞けばいい、でしょ......じゃ、行ってきます」



母ちゃんからすればまだまだ子どもかもしれないけど、オレだって14だ。
もうガキじゃない。



「なんだ、むすこの奴?あんなに急いで」

「ふふっ......よっぽど食べたかったみたい。雷バーガーの新作」

「.........あいつもまだまだ子どもだな」







初の五大国合同中忍選抜試験とあって店内は一般人から忍まで、色んな国の人でごった返してる。
長蛇の列に並ぶのはだるいし眠かったけど、あともう少しで新作にありつけそうだ。
並んでる時、何故かチラチラ視線が向けられた。



(ねえねえ、あの人!ほら、あそこに並んでる青いマフラーの)
(...!!...かっこいい...!)
(木の葉の人じゃないよね)



他里に行けば良くあることで慣れていたから気にはならないけど、一度母ちゃんに相談したことがあった。



『そんなにオレって目立つかな?どこいっても見られる』

『......むすこ、見てるのって同じくらいの女の子たちでしょ?』

『......!何で分かったの?』

『......さぁ。何ででしょーか』



クスクス笑ってたけどさっぱりだ。
父ちゃん譲りの浅黒い肌に白髪......どうせこの辺じゃまず滅多に見られない容姿だから気になるだけだと思うけど。
やっとオレの番が来てオーダーし終えた時だった。



「なぁ......悪いけど替わってくんない?」



店内の賑わう声の中によく知る後輩の声がして、視線を移せばユルイ、トロイ、タルイの姿が見えた。
何やってんだ、あいつら。



「そっちは二人だろ?こっちは三人いるんだ。人数多い方がテーブル席座るのが当然じゃん」



どうやら席を無理矢理ぶんどろうとしてるらしい。
うちの里のモンはどうしてこんなに血の気が多いのか。
っつーか、試験を受ける身でよく問題沙汰できるな。
今、木の葉には父ちゃんにオモイ先生、そして母ちゃんがいる。シーさんはいないけど、里の重鎮揃いだ。
もし大事になって現場を目撃しときながら放置してた.....なんて誰かにリークされたらあの三人どころかオレにまで雷が落ちる。
はぁ...止めねーとな.....だるいけど。
オーダーしたものを受け取った瞬間、体に雷遁チャクラをほんの少し流して一瞬でその場に移動した。



「やめな、お前ら」

「「「!!」」」

「「せんぱ......「むすこ先輩!!」」」



ユルイとトロイの台詞を遮るように珍しくタルイが声を張った。
タルイの奴、何顔赤くしてんだ?まぁ、とにかくオレの登場ですぐに一言謝って別の席を探しに行った三人を見て安堵した。



「あいつら血の気多くて......すみません」

「いえ......ありがとうございます!」



メガネをかけた木の葉のくノ一が馬鹿丁寧に挨拶してきた。
うちの里のやつらもこの子を見習うべきだな.....全く。



「......?何照れてんだよ、サラダ」

「......!!うるさいわねっ!」

「それよりもボルト......その人、五代目雷影のご子息だよ」

「......!!え!?」



何だこいつ......オレの事知ってんのか。
いや、それよりもボルトって言えば、七代目火影さんの息子じゃなかったっけか。
影の息子同士か......奇遇だな。



「しかも大戦後、五大国中で最年少で中忍、上忍になったかなりの実力者で母親は確か......」

「ホント!?ホントかってば!!?」

「あー......まぁ、そうだけど」



影の息子だの雷獅子の息子だの言われるのはあんまり好きじゃねェからボルトの遮りはナイスだと思った。
蛇みたいな子はよっぽど情報通らしい。
どれも事実だったからそう答えれば、何故かキラキラした目でボルトが見てくる。



「兄ちゃん!名前は!名前は!?」

「ん。オレはむすこ......お前のことは知ってるよ。うずまきボルトだろ」

「オレのこと知ってるのか!むすこの兄ちゃん!」



"兄ちゃん"......いい響きだ。
やんちゃそうなやつだけど、もし兄弟がいたらこんな弟が良かったな。



「なぁなぁ!むすこの兄ちゃんも一緒に食べようってばさ!」

「人待たせてるからもう戻らないといけねーんだ......すみません」

「「ええーっ.....」」

「お前らも中忍試験、出るんだろ。頑張れよ......じゃあな」



相席してもよかったけど母ちゃんのお土産に買ったシェイクが溶けちまう。
急いで店を後にして、行き慣れた秋道一族の住まいへと向かった。



「むすこ!デカくなったじゃねーか」

「オ〜ッス......お久しぶりです、カルイさん」

「随分早かったじゃない。おかえり」

「......コレ」

「......!!さすが我が息子〜〜〜!」



着いて早々母ちゃんの勢いついた抱きつきをもろに喰らった。
痛くも苦しくもない。
柔らかくていい匂いがする。
身体がどんどん逆上せて行くのが分かった。



「はぁぁ......むすこはホント、いい子」



すりすりと頬擦りされる。
やめてくれ母ちゃん、めちゃくちゃ恥ずかしいから!!という気持ちと、やめないでくれ母ちゃん、スゲー嬉しいから!!という気持ちの板挟みで頭がぐちゃぐちゃになった。



「むすこ!やっぱ熱あるんじゃないの!?」

「違いますよ、先輩......なぁ、むすこ」



ニヤニヤするカルイさんを見て漸く我に帰り、母ちゃんから離れた。
"いい意味"で死ぬかと思った。





(そういえばさ、母ちゃん)
(どうしたの、そんなに美味しかった?)
(新作も美味かったけど......面白い奴に会ったんだ)

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あきゅろす。
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