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仔獅子ちゃんと仔獅子くん
やっぱりパパが好き



待機所の裏にある演習場で木刀がぶつかり合う音が響く。



「えいっ!」



むすめの攻撃は子ども特有のふわふわしたもので、当然ダルイが軽々と受け流す。
どんなに受け流されようとも汗を滲ませながら何度も何度も打ってくるむすめの顔つきは先程年相応にいじけていたとは思えないほど真剣であった。



(へぇ......あいつに似たな)



"あいつ"とは、ダルイが子どもの頃から付き合いのある同僚で下忍時代はスリーマンセルを組んでいた━━━......今では雲隠れの英雄と称えられている、彼女の母親である。



「......!」

「......?どうした?」



突然、むすめがピタリと動きを止め背後を振り向く。



「......すまなかったな、ダルイ」

「いーって......いつものことだろ」



やって来たのはむすめの父親━━━......シーであった。



「良かったな、むすめ」



シーの事だからあっという間に仕事を片付けて時間を作ったことをダルイは分かっていた。
だが、むすめは一向にシーのもとへ行こうとしない。



(いつもならネムイみたくすっ飛んでくんだけど......まさか、)



むすめはダルイの背後に回ってひょい、と顔を出す。



「......やだ!まだダルイさんとあそぶの!」

((......始まった))



むすめのお約束の行動にシーがため息つく。
何度目か分からないこの父娘のやり取りにダルイは苦笑いした。



「だって、パパあそんでくれないもん」



むすっ、としながらむすめは続けて言う。



「パパ、あそんでくれないからダルイさんのおよめさんになる!!」

(でた......必殺技)



むすめが最大級にいじけた時に出す必殺技にシーは頭を痛めた。
確かに、折角の非番の日に娘を構ってやらなかった自分に非があるのは分かってる。
どんなに重要な仕事であっても、残念ながら今のむすめには理解しがたいものだ。
シーがしゃがんでむすめと同じ目線になる。



「約束したろ......仕事が終わったら修業つけてやるって」

「.........。」

「もう終ったから」

「......ほんとに?」



きれいな翡翠色の瞳を潤ませる姿が母親、ネムイにそっくりでシーが困ったように笑う。



「父さんが嘘ついたことあるか?」

「......ないっ」



シーが腕を広げるとむすめはその胸に飛び込んだ。





(パパ、すき!だいすき!!)

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