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仔獅子ちゃんと仔獅子くん
やっぱり皆彼女には甘いんです



「こんにちはっ!」



ぱたぱた、と走ってきた小さな来訪者が丁寧にお辞儀すると、部屋の入り口を守るように立っていた三人の内の一人......長十郎がにっこり笑った。



「こんにちは......どうしたの?」

「じーじはこのお部屋でしょ〜?」

「じーじ......?」

「......オイ!五影会談中だぞ、テメー」

「い、いや......その......可愛かったんで......ついつい」

「何ガキにデレてんだよ!とっとと追っ払え」



わざわざ視線を合わせて話し出す長十郎の胸ぐらを掴んだ黒ツチが凄む。
一連の様子を見ていたカンクロウが呆れてため息ついた。



「静かにしろ......っつーか、なんでこんな子どもがここにいるんだ?」



カンクロウも黒ツチも長十郎も視線を下に落として未だ満面の笑みの、初めて見る小さな来訪者......むすめを見る。
大戦を終えて数年。
こんな幼い子どもが里長の邸宅内を走り回れる程平和になったとはいえ、今は五影会談中である。



「親のとこに帰んな」

「パパもママもお外に出てるからいないの。そしたらね、おじちゃんが遊んでくれるって」

「おじちゃん?」



大事な日に、しかもここで子どもを野放しにしたバカはどこのどいつだ、と思いながら黒ツチが怪訝そうにする。



「それでね!じーじの部屋に行ったら誰もいなくって。探してたら見つけたんだよ〜」



恐らく誰かが教えたのだろうか。
無邪気な笑みで言うむすめに三人は苦笑する。
この場で「じーじ」......思い当たる節は一つしかない。



「雷影様、のことでしょうか...?」

「それしか考えられねーじゃん」

「ってことは、お前も孫か?あたいと同じだね」



黒ツチにつんつん、とふっくらした頬をつつかれるとむすめはくすぐったそうする。



「オイオイ......遊んでる場合じゃねーじゃん?」

「あはは......そうですね。雷影様に何か用でもあるの?」



長十郎に問われれば、むすめがこくん、と頷いて屈託のない笑みで答えた。



「かくれんぼ!」

「「「かくれんぼ!?」」」



呆気に取られる三人を他所にむすめは続ける。



「じーじがいるとこに隠れればね、絶対見つからないんだよ〜!」

「それは......用もないのに入れないからね」



えっへん、と胸を張って言うむすめに長十郎が苦笑しながら真面目に答える。



「だから、部屋に入れさせて!」

「ダメだ」



カンクロウが即答すると不満げに頬をぷうっ、と膨らませる。



「なんでー?」

「......雷影様は各里の偉いお客さんと大事なお話をされてる最中なんだよ」

「でも......じーじ、いつでも来ていいって言ってたよ...?」



そう言われると三人は肩を竦める。
今は五影会談中......例え雷影の孫とあっても入れるわけにはいかない。



(オイ、どうにかしろよ)
(ど、どうにかしろって言われたって...)
(こんな時に限って雲の者が中じゃどうしようもねーじゃん...)



困り果てる三人を他所にむすめは突然、慌てだした。



「...!!早くしないと捕まっちゃう!」

「(なんだこいつ?急に慌てて...)ハァ......それでも入れるわけにはいかねぇんだよ」

「早く早く!おじちゃんに見つかっちゃうよぉ...!」



黒ツチの裾を掴んでせがむむすめに三人が困り果てていると、静かに扉が開いた。



「......騒がしくてすみません」

「...!ダルイさーん!」



出てきた雷影の側近、ダルイが三人に謝りを入れる。
自分が原因であることなど分からぬむすめはにぱーっ、と満面な笑みを見せて、そんなダルイに引っ付く。



「で......どうしたんだ、むすめ?」

「あのね、あのね!おじちゃんに見つかっちゃうからじーじのとこに隠れたいの!」

「あー......またビーさんとかくれんぼしてんだな」

(げ。面倒みてたの八尾の人柱力かよ...)



想像していなかった遊び相手だったが、ビーなら遣りかねないと思った黒ツチは呆れた。



「......今日はボスの部屋に行っちゃダメだって父ちゃん母ちゃんから言われてただろ?」



ダルイに諭されるとしゅん、としながらもこくん、と頷くむすめ。
これで諦めたと思った三人は胸を撫で下ろすも、



「!!...おじちゃん、すぐ近くに来てる!見つかっちゃう!」

「あのな...何で分かるんだよ、そんなこと」

「...こいつ、感知タイプなんで」

「「「え」」」



ダルイのまさかの発言に信じられないとばかりの三人の視線が再び慌て出すむすめに集中する。
そんな時だった。



「「「!!」」」

「じーじ!」

「ホレ。さっさと入らんとビーに見つかるぞ?むすめ」

「わぁ〜い!」



雷影自ら部屋に入るのを促す、という事態に驚愕し言葉を失ってる三人を他所にむすめが部屋に入っていく。



「あら。可愛いお客さんだこと」

「随分と好々爺になったな、アンタも」

「ほう......これがお前の孫か」

「可愛い子じゃないですか」

「孫まで"きかん坊"じゃぜ」

「こんにちはっ!」



水影、風影、火影とその補佐、土影というそうそうたる面子を前にしてむすめは元気よく挨拶し、無邪気に笑う。
それに連れて五影もその補佐達も頬を緩ませる。
重苦しい空気から、まるで今の平和さを表してるかのような、和やかな空気に変わった瞬間だった。



「じーじ!むすめもお話混ぜて〜」

「おお、いいぞ!ホレ、ここに座れ」

「すみません......ボスはむすめに甘いんで」



軽々持ち上げられたむすめは雷影の膝の上にちょこん、と座る。
雷影の溺愛ぶりに他の影達も補佐達も苦笑いした。




(ブラザー!むすめを見なかったか!?)
(いや、来とらん。シーのとこじゃないか?)
(隠れ上手!♪オレ様お手上げ!♪)

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