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仔獅子ちゃんと仔獅子くん
彼女には皆甘いんです



随分と控えめなノック音がすると待機所の入り口に皆の視線が集中した。



(((━━━来た......!!)))



ひょい、と覗きこむ小さい存在に待ってましたとばかりに「こっちにおいで」と数名が手招く。
にこっ、と笑ったその子は入室するなり、ととと、と走ってある人物に抱きついた。



「ダルイさーん!」

「......オーッス」



肩を落としている者達がいることなんて露知らず、ダルイに頭をくしゃりと撫でられた女の子は嬉しそうに笑った。



「ちぇっ......またか」

「たまにはオレの所に来いよ〜.....むすめ〜〜〜.....」

「まあ......ダルイさんがいるんじゃしょうがないですね」



アツイやオモイが文句を垂れ、ユカイが諦めたように言うとダルイは申し訳なさそうに頭を掻いた。
ダルイはこの中で最もむすめの両親と付き合いが長い上、頻繁に会っているので一番懐かれている。



「それにしても引っ付きすぎじゃない?」

「確かに......姉ちゃんの言う通りだな」



ダルイの胸に顔を埋めたむすめは未だ離れようとしない。
誤解を招く前に、ダルイはむすめがこうする時は大抵父親のことでへそを曲げてる時だと説明するとサムイはなるほど、と納得した。
他三名は......



(なるほど...)
(でも...)
(理由がどうであれ...)
(((いいなぁ〜...)))



「......で、今日はどーした?」

「......。パパがかまってくれない」



ようやく離れたと思えばむすっ、と頬を膨らませて言うむすめにダルイも皆も苦笑いする。



(あいつ...今日は非番だったよな)



彼女の父親の事だから何か重大な仕事で追い付かない事があって、休みを潰して家でしているのだろうとダルイは読んだ。
しかも、頼みの綱の母親は現在他里にて任務中で不在。
まだ幼いむすめが父親に余計甘えたいのも無理はなかった。



「友達と遊べばいいじゃないの」

「みーんなおでかけだって......」

(通りで待機所に来るわけだ......)



ここに来れば大体誰かが構ってくれる事をむすめは知っていた。
むすめにとって今日みたいな日には待機所は、謂わば最後の砦のような存在である。



「......しょうがねーな」



いじけるむすめの頭をダルイがぽん、と撫で立ち上がった。



「修業つけてやるよ......但し迎えが来るまで、な?」

「「「ええっ!?」」」



男衆が驚くのも無理はない......ダルイは次期雷影と決まってる。
そんな人物から見てもらえるなんて、忍の者であれば羨ましい事この上ない。
まさかの人物の発言に一瞬ぽかんとしたむすめも本日最高の笑顔を見せた。



「わぁ〜い!!」



きゃっきゃ、と舞い上がるむすめを見て皆微笑んだ。



「よーし......オレも熱い指導をしてやるぜ!!」

「剣術ならオレに任せろ!」

「じゃあオレは雷遁を!」

「.....アンタ達、それでむすめの気を惹
かせるつもりなんでしょうけど無駄よ無駄」



サムイにバッサリ切られ、言葉を失う三人を余所に、むすめはダルイの手を引っ張って急かした。





(雷影になったら余裕なくなるだろうし)
(今のうちに見てやるか)

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あきゅろす。
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