風翔 02 「申し遅れました…私、シャシーっていいます」 私とエースは先程の騒動を止めた彼女…シャシーの案内で阿修羅族が住まう所に来ていた。 「私はマカ。こっちは…」 「エースだ。よろしく」 「!!…もしかして、あの白ひげ海賊団の?」 「そ。彼がその白ひげ海賊団2番隊隊長…”火拳のエース”よ」 「!!それは大変失礼なことを……!!」 シャシーの慌て様に私もエースも顔を見合わせる。 申し訳なさそうにしてるシャシーを見ながら、私の脳裏には先程の光景が浮かんでた。 「あなた達阿修羅族は凄く警戒心が強い、って聞いてるけど……何かあったの?」 現にここへの道中、私とエースを見る阿修羅族の視線からは緊張が走ってた。 しかも全員、”家の中”から……明らかに”何か”を警戒してる。 「私たち阿修羅族は確かに閉鎖的な所があります…けど、普段は人に手を出したりこんなにまで警戒することはないんです……みんなの気が立ってる原因は”この子”に起こったことにあるんです」 「「………!」」 シャシーが私達に差し出した写真立てには彼女と兄、そして彼女の兄に問われた時に見せられたあの少女の姿が映ってた。 「お二人も名前だけは聞いたことがあると思います…この子は、 ……”セイレーン”」 「!!きれいな歌声をしてるとか、その歌を聞くと幸せになれるとか…っていう、あの?」 「海神に愛されてる伝説の一族…ここの近海に住んでたんだ……」 「……この子、よく私たちの所へ遊びに来てて、兄さんや私だけじゃない…一族の皆が可愛がってたんです。けど、」 シャシーの表情が一気に曇る。 この子が”セイレーン”と分かった時点であたしもエースも何が起こったのか予想できた。 「何者かに、 …拐われたんです」 セイレーンと言えば、”オークション”でかなりの高値がつく。水中では人魚と1,2を争うほどのスピードで簡単には捕まえられない…けれどそれは水中での話しであって、陸に上がってしまえば話は別だ。 シャシーの話しだとその子以外にも他数名、拐われたそうだ。 「…なるほどな。そりゃあ、海賊を手当たり次第疑ったってしょうがねェ…だとすると、集まってた連中はセイレーンの噂を聞いてこの島に来た可能性があるな?」 「うん。ねぇ、シャシー…この近辺には海軍の駐屯所はないの?理由がセイレーンにしろ別にしろ、あれだけ海賊がいるってのに海軍が動かないのはおかしいと思うわ」 「近くの別の島にありますよ。今日はみかけませんでしたけど、よく市中も島の近辺も巡回してますし…」 「…そっか」 何か引っかかるのは何でだろ…。 阿修羅族もセイレーンも政府に加盟してない種族…だから人拐いにあったとしても海軍なんて当てにできない。 だから、自分達で…恐らく、一番力のあるシャシーのお兄さんを筆頭にこの子を探してる、ってところだろう。 俯き、ぎゅっと握られ震える手にそっと、手を重ねた。 「…私達も協力するわ」 「………!」 「”戦友(とも)”なんだから、当然でしょ?」 笑って言う私に目を丸くして驚くシャシー。 「………??戦、友?」 「!オイ、マカ…お前肝心な事言い忘れてたぞ?」 「あ……」 …うっかりしてたわ。 「私は…「…何のつもりだ」」 勢い良く開いた扉。 低い声でそう言ったのは彼女の兄で、その後ろには彼と同じくらいの男達が数名……誰もがひとクセありそうな人達だ。 「部外者(そいつら)を信じるな、シャシー!俺たちを利用するつもりに決まってる!!」 「失礼よ、兄さん!エースさんはあの白ひげの下にいる人なのよ?兄さんやみんなだって知ってるでしょ…白ひげは一般市民だけじゃなく、私たちみたいな種族に手を出すような人ではない、って!!」 「それはあくまで噂だ…実際はどうだか、」 「兄さん!!」 『ちと血の気が多くてのう…』 …なるほど。 彼はエースを挑発してるんだ…ケンカの口実にするために。 「…どうした?かかってこないのかよ」 「テメェ…」 シャシーの心配を他所に火花を散らす2人。 一触即発の寸での彼らにあたしが割って入った。 「そのケンカ… ……私が買うわ!」 「「………!!?」」 2人が驚いてこっちを見たのは言うまでもない。 「ふざけんな!!誰が女なんかと…「モチロン… ”グラディエート”でね」」 「「「………!!」」」 阿修羅族たちの驚きぶりに思わず不敵の笑みをこぼした。 [←][→] [戻る] |