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風翔
09




着くなりあたし達を中で待たせ、衛兵たちがずらっと並ぶ前をさっさと素通りして市長の所へ向かう副市長



「ふふっ…」

「マカさん?」

「…相当焦ってるよ、彼ら」



ずっと向こうで耳打ちする声も風に乗ってあたしの耳に届く。




「…何だと!!?」

「何でも大きい白い虎が衛兵たちをなぎ倒して呪術師の部屋に入って”アレ”を取って逃げたらしい」




到着が遅かったことに不機嫌だった市長に更に皺が増えた。



「みんなは…エン達は無事ですか……!?」

「ちょっと待って…」



━━━…”千里眼!!”





祭壇の前には黒衣を纏い、杖を持った呪術師と色々と装飾をされたエース



それを見守る紅蓮族たち…





「………!!」

「マカさん……?」

「どうも呪術で無理矢理エースの言葉を信じさせられてるみたい…でも、」



口角が上がったのは…



「…エン君はカンタンにいかないみたいよ?」



黒に蝕まれつつある中、



……一つだけ消えない灯りがあったから。



「!!!」



蝕もうとする黒に耐える紅



それは燃え盛る炎のよう……



「アグニの化身よ…どうか我々を助けて下さい!!」



操られてる彼らはエースに助けを求めてザワつく。



「さぁ……彼らにお告げを!!」


(打ち合わせ通りにお願いしますよ?)
(あぁ、分かってる)



「……人柱はいらねェ。その代りこの地を治めるのはお前ェらじゃなく、この男に」



エースがちらっとみたのは市長

紅蓮族たちとは対称に笑みを浮かべる。



「それと、」

「「「!!!」」」



同時に開かれた、扉

あたし達は降りて、祭壇の方へと向かうとすべての視線があたしたちに集中した。



「この2人の女をあの男へ……」



エースが振り向いた先は胸を張って立っている副市長


(さぁ…言え!!そうすればこの美女2人は俺のものに…)





「やる必要は……





……無ェ!!!





「「「…!!!」」」





シナリオになかったことに唖然とする市長たちと驚きざわつく紅蓮族たち。
エースと視線が合って互いに不敵な笑みを零した。



「……走って、ローザ!!!」

「は、はい!!」



ダッと一族に向かって駆け出すローザ



「な、何をしてる!!!あの女をとっとと捕えろ!!!」



副市長の怒声に我に返った衛兵たちがその後を追う。
でも、



「っ!!姉ちゃん!!」



そんなことは……



「……させない」

「「「……っ!?」」」



衛兵たちの前に現れたあたしを中心に起きた突風が砂埃を舞い上がらせ、視界を遮る。
その隙に一発かましてやると何が起きたか分からない衛兵たちが思いっきり尻餅を着いてあたしを見上げた。


勢いで吹き飛んだヴェールが


ひらりひらりと地に落ちる



「!!姉ちゃん!!」

「…エン……っ」



背後ではしっかり抱きしめあう姉弟(きょうだい)の姿



「「なっ……!!?」」



徐々に晴れていく視界



「き、貴様は……」



一歩、また一歩近づいてくあたしの髪は銀へ、瞳は青へ


……元の色に戻っていった。



『アンタらの計画をぶち壊しかねない奴だ……コイツと先住民の接触は避けろ』



「まさか…こ、この女が”危険因子”……」


「「ア……アルフォンス・D・マカ!!?」」


「大正解…」

「「………!!」」


(!!相変わらずマカのヤツ…早ェな)



いつの間にか背後にいるあたしの姿に驚く市長と副市長



「その情報、どこで聞いたかとっても興味があるんだけど……その前に、」



刹那、背後から感じたのは迫りくる”あの気配”



「喰らえ、小娘!!!」

「マカ!!!」



あたしを囲むように浮かんだ黒い文字



「……残念。アンタの力じゃあたしには勝てない」



突如カッ、と光ったと思うと先ほどの文字は跡形もなく消えてる。
その様子に呪術師は悪態をついた。



「術を相殺したか……あの方が言ってた通り、貴様も呪術が使えるようだな」

「………影、ね?」



そういうと口角を釣り上げた呪術師



「こっちは俺に任せろ、マカ!!」

「!!うん……紅蓮族をお願い、エース!!」






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