風翔
03
「見えますぞ…この者こそが火神アグニの加護を受ける者!!」
「ほう、この男がか?」
「じゃあこの男を使ってあいつらを政府に渡せば……この島は俺達のものになる!!」
「急ぎ、この者を館へ案内しろ!!」
水晶玉にぼんやり映る1人の男を求めて衛兵達が動き出す。
……それはマカが良く知る人物だった。
* * * * *
世界の守護神(ローカパーラ)、八方に散らばりて
八神が一人、火神アグニ 東南に子孫を残す
アグニの血を引く末裔よ
この世に災厄訪れる時 化身現る
かの者迎合し 火神アグニの知恵と力を授けたまえ…
エン君から連れてきてもらったのはポーネグリフのある祭場
そっと手で触れたのは祭壇に刻まれた絵
大噴火する火山の側で武器を持っているのが、火神アグニ
下の方の祭壇で儀式を行う子孫達……
「祭火たるアグニに…火山に供物を放り投げると煙となってそれは天に届く。そしてアグニにより神々が子孫の前に現れ、様々なものを与える……というシーンね」
気になることが2つ。
1つは火山の中に何かがいるコト。
でも…ヒビが入ってて何だか良く分からない。
長曰く、言い伝えによると”火を生むもの”だとか。
もう1つは…
「とにかくトカゲが多くて…」
「おお…お主はどうやら火神に好かれたようじゃのう。あの紅いトカゲは火神の使いと言われておる」
「マカ姉ちゃんってすっげぇ!!…って何がそんなにおかしいの??」
「ごめんごめん……それじゃあ、治療を始めるから手伝ってくれる?」
興奮する様子も大きく「うん」と頷く様子もまるでルフィみたいで思わず笑ってしまった。
今頃ルフィ達はどこで何をしてるのかな……
枯れた大地で薬草が育つワケもなく、船からありったけ持って来た薬草で治療を始める。
少しでも元気になって欲しい、と思いながら…
「マカ、と言ったな……お主には感謝してもしきれん」
全ての治療が終わって一休みしているとやってきたのは長
…彼はあたしがタダものじゃないと最初から気づいてた。
「我らを知り、古代文字を読み、あの医療術に火神に気に入られた……お主は一体何者じゃ?」
「全部終わってから話そうって思ってました……でもアナタには意味を成さないみたいですね」
苦笑してあたしは長にだけ打ち明けた。
あたしもまた…ローカパーラの者だと。
「お主が神々が集まるという秘境に生れし戦士……ローカパーラ達を率いた女戦士の子孫、”白銀族”の者か!?」
「……はい、アラバスタにてここへ来る知恵を授かってきました」
モイライに触れた話、
その後アラバスタで会った兄弟とその仲間たちの話、
クロコダイルの野望
そして、
「”影”と再び戦いました…<インドラ>の力で対抗したのですが、奴も力をつけたようで……呪術によって、逃げられました」
「インドラの力を授かったと!?では主が……唯一影に対抗しうる力の持ち主……8人の戦士達の化身!!」
驚き目を見開く長に苦笑いして答える。
「どうやらそうみたいです……ともかく、影は政府とつるんでるようで奴らは古代兵器を収集し世界を自分達のものにしようとしてます…!!」
「ふむ…再び災厄が…ラグナロクがくると……影も政府も愚かな」
「一刻も早く他の戦友(とも)達にことを伝えねばいけません…そして彼らからかつての戦士達、彼らが信仰する神の知恵と力を借りなくちゃ」
「それでここへ来たと言うワケか…なるほどな。しかし見ての通りじゃ…火を失った今、主に火神アグニの力を授けることは出来ん……」
険しくなった顔つきにぎりっと鳴った拳。
「希望は……失われていません。現に心に宿る火が燃え盛ってる”小さい戦士”がここにいますから…ね?」
「!!エンのことか……」
じーっと祭壇の絵と睨めっこする少年の姿に微笑した。
「力を授かることよりも、まずは困ってる戦友(とも)を助ける……火を失った原因をみんなで探ってみましょう」
「……ありがとう……古き戦友(とも)よ」
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