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風翔
02



「酷い……」



痩せこけた地に、枯れる寸前の水に温泉

倒れかけの家屋に生気を失いかけている人々

中には酷い傷跡に怪我を負った者もいる


……ここは荒みきっていた。


「話はエンから全て聞きました…ありがとう、旅の方よ」


「もう無茶をするんでない!!」と長から怒られたエン君。
言葉を詰まらせて下を向く彼の頭をそっと撫でた。
エン君は人質になっているというお姉さんを助けに行ったところ追われ、そこにあたしが出くわしたそうだ。


「何でこんなことに?」

「分からん……ただ、市長たちは我々が信仰を怠ったからその呪いじゃと」

「そんなワケない……あいつらが火を奪ったんだよ!!!その証拠に街は栄えてるじゃないか!!」


”火”こそ彼らの全ての源
火を無くし、荒んでいく彼らのこの実態を……街の人は知らない。
現にあたしが行った酒場のおじさんは噴火が止まってるのにも関わらず街が栄えていることを不思議に思っていた。


「エン君のお姉さんが人質になってるってさっき言ってましたよね?」

「”部族で一番の美しい若い娘を火山に捧げれば火神が呪いを解く”と……それがエンの姉、ローザでした」

「!!……それは一体、誰が?」

「市長が呼んだ呪術師です…何でも”近いうちに火神アグニの化身が島に来る…その者の導きに従え”とも言われました」


どよめく中、エン君の怒声が響く。


「あの野郎が言ってることはインチキだ!!俺達が力がなくなったことをいい事に好き勝手やってやがんだよ!!」

「エン君の言う通りだと思います……現に眠ってる火山に捧げるなんておかしな話ですしね?それにこの地を一番よく知ってるのはあなた達…余所者の言う事なんてイマイチ信憑性に欠ける」

「しかし火を…力を無くした今の我々では……成す術がない」

「くそっ……俺がも゙っと強かったら゙…姉ちゃんのこと護れたのに゙……!!」


艶を無くした紅い髪
悔しくて、ぽろぽろと大粒の涙を流す紅い瞳の持ち主をあたしはそっと抱きしめた。
泣き止むまで、ずっと。



夜空に散りばめられた星星がこんなに綺麗に見えるのは、火の灯りがないことを意味してた。


「俺信じてるんだ…きっと火神様の加護を受ける人が助けに来てくれるって、」


そうすれば皆に力が戻ってお姉さんを助けられる、と言う。
ボロボロの身体だけど、その目に宿る紅い炎は色褪せることはない。


「エン君の心の中に宿る”火”は消えてない…それをもっと大きくしてみんなに勇気を…力を与えるとあたしは思うの」

「心の中の…火……??」

「そう……」


一番無くしてはならないもの…
周りはその火を弱めつつあっても君の心の中に眠る”火”は燃え盛る。
それはお姉さん助けたい、みんなを助けたいという一心から。


「…ねぇ、エン君。もしお姉ちゃんを助けることができるなら、どうする?」

「そんなの決まってるよ!!何だってやる!!だって俺は火神様の子孫……”戦士”だから…!!」


火神アグニ……

あなたは素晴らしい子孫を残された……


【聞いてた、シルヴィ?】
【もちろん…早速調べようじゃないか。小さな戦士の為にも、な?】
【ふふっ……そうだね】


「じゃあ決まり!!明日ある場所を教えて欲しいんだけど…」

「うん、いいよ!!」






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