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お題SS小説
3





坂上君の噂は絶えない。



本気の恋なんかしない。
愛の言葉なんて言わない。
相手に気を持たしてポイ捨てする。
彼女には暴力を振るう。
二重人格。手が早い。等…挙げてしまえばキリがない。でも所詮、噂は噂だ。




現に坂上君は
私の手を握ってにこやかに本を読んでいる。
こんな人が暴力を振るうとはとても思えない。それに…





「坂上君‥‥」




「何、田上さん」




「手離した方が
読みやすくない?」




「大丈夫。繋ぎたいから繋いでるんだし」





「あっ、そう…」





こんなにもストレートに恥ずかしい台詞を言ってくる。本当にこの人は私と付き合って良かったんだろうか…。喋っているとこっちが恥ずかしくなってくる。







これは坂上君にとって本気の恋に入るのだろうか?それともやっぱり遊び‥?
噂は噂にすぎないと思うけど、噂が出るにはそれなりの何かがあったからに違いない。何があったらこんなにも嫌な噂ばかり出来てしまうんだろう。





「坂上君はさぁ、」




「うん、何?」




「噂とか信じる?」




「田上さんは信じるの?」




質問を質問で返される。
坂上君は視線を本に向けたまま私に質問した。





「出来るだけ信じてないよ」



「俺の噂って知ってる?」



「あー、よく聞くよね。
でも本人から直接聞いたわけじゃないから、出来るだけ信じたくないな私は」




「そうなんだ」




そう言って坂上君は黙りこみ、右手を繋がれたまま、利き手が右な為何も出来ない私は周りを見渡しながらじっとしていた。




坂上君が何を考えているのか分からない。どこが好きだと聞かれても、中身的要素を答えるのが難しい。だって好きと書いた文は憧れみたいなものだ。可愛いなとかかっこいいなとか単純に感じた感情だけに過ぎないのだ。



胸が張り裂けそうとか
触られただけで震えが止まらないとかそんな感情ではないのだ。





だからこそ本当にこのままで良いのだろうかとも考えてしまう。このまま抜け出せなくなる前に先に坂上君に言ってしまった方が良いのではないかと‥‥




でも一体、何を?
何と伝えれば良いのだろうか、何と伝えれば彼を傷つけずにすむのだろうか。





それとも彼も私に対して本気ではないのだろうか。







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