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お題SS小説
6000HIT番外編

皆様こんにちは。
この話は、6000HIT企画小説の川上からの視点でえがいた番外編です。

川上がソラちゃん好きになったところ、
あの2人のあとの話が
少し載っています!!!
楽しんでいただければ、
幸いです\(^O^)/

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ここにきて、
初めての恋だった。



仕事を東京でやっていた。
結構上昇してる会社で、
自分は出世コースだった。


兄の伶司と2人暮らしをしていた。彼女は居なかった。兄貴の方はひっきりなしに相手をかえてはうちに連れてきて、それなりのことをする。

俺は兄貴達を見て見ぬふりをして仕事にばかり力を注いでいた。
兄貴に抱かれる馬鹿な女も、会社で色仕掛けでくる馬鹿な女も、これっぽっちも興味を示さなかった。

馬鹿な女も、
上下関係の激しい人間社会も、うんざりしていた俺に、電車の中吊り広告が俺をこの町に導いた。

大都会に暮らしていた俺は、この名もあまり知られていないこの町が魅力的で仕方がなかった。

兄貴に東京から引っ越すことを告げた時、兄貴は、東京の女をいとも簡単に切り捨てて、俺と一緒に行くと言った。

2人でこの町にきて、
俺はバスの運転手になった。(かなり省いてはいるが、東京からここに来るまでの間、有休を使うだけ使い、大型車の免許を最短で取得した。)



バスに乗ると、
余計にここが田舎だということを知る。

東京でエリートの部類に入っていた俺は、人の名前も色んな知識もこの町ですぐに吸収した。

このバスで、
色んな人の名前を知って、
色んな人と言葉を交わした。


その中で、
ソラちゃんに出会った。





最初、ソラちゃんに出会った時、中学生だと思った。それくらい彼女は幼い顔をしていた。



俺が喋りかけると、
いつも嬉しそうに話す、その表情がとても彼女を幼く見せた。



「川上さん、聞いて!」

そう言って、
真っ先に今日あったことを上手に彼女は俺に話す。
話上手なんだと思った。


テンポよく彼女は俺に色んな話をする。俺が笑顔を向けると、顔と耳をこれでもかと真っ赤にさせて、下を向く。

この町には、あまり若い人がいない。だからか、バスの運転手の俺が、ソラちゃんにとってはそういう対象に見えてしまっていたのかもしれない。

俺が優しく笑う度にソラちゃんは顔を真っ赤にさせて、逃げるように帰っていった。

俺が「可愛い」と言う度に
林檎みたいに頬を赤く染める。東京で兄貴がよく連れてきた馬鹿みたいに顔と金にしか目がない女とは、

違う、まだ10代の女の子。



頬が赤くなる度に、
俺は嬉しくなった。
それが何故かはわからない。

ただこの子が俺の一言一言に喜怒哀楽を見せる。
それがたまらなく嬉しかった。



ただ10代と20代の、
壁は極めて厚く、


俺は、ソラちゃんに対してわく感情をそっと胸に閉まった。





そんな時、ソラちゃんが最終のバス停まで向かっていたバスの中、



この町から出たい



そう言った。
ソラちゃんがこの町から出たい…?



耳を疑った。
俺は東京という檻から出たくてここへ来た。
縛られない、自然が沢山のこの町は自由に満ちている。


ソラちゃんは、
東京に行きたい、と言った。


東京にソラちゃんが言ったら
この町からソラちゃんがいなくなったら、



俺は、
この感情をみすみす手放さなくてはいけないのか?




俺がソラちゃんに感じてるこの感情を



まだ芽生えたばかりのこの感情を、閉じたばかりのこの段階で、手放さなくてはならないのか?




俺は、我儘で欲深い、
嫌な大人だった。



ソラちゃんをこの町から
俺の近くから、
手放したくはなくて、




東京に行きたいという
ソラちゃんに大人の余裕ある言い方で、

この町の良さを植え付けた。


行きたい、
出たい、
という彼女に、
自分を想っているという権力を利用して、
この町に縛りつけようとした。




まだ想いを伝える気はない、
しかし、今ここから出ていかれては困る、




欲しいものは手に入れる、
そんな欲にまみれた自分自身にうんざりした。





そんな中、
家に帰ると、
ソラちゃんと兄貴が、
一緒にいた。





馬鹿な女を愛す兄貴。
すぐに女を切り捨てる兄貴。




ソラちゃんは、
ソラちゃんは、
馬鹿な女じゃない。




なぜ、



隣にいる?







理性とか、
感情を閉じ込めるとか、



そんなことはどうでも良かった。




もう少し先まで待つつもりだった。




衝動的な感情より、
理性が勝つはずだった。






ソラちゃんの隣に
兄貴がいる。






なんでいる?




何をやってた?




理性なんて、
あっという間に崩れる
ドミノみたいなものだった。




誰かが、
人差し指でポンッと、
一つ目のドミノを倒した。




ドミノはとまらない。





もう少し先まで、
待つつもりだった。





欲深い人間だった。
感情は爆発する。




始まってしまったドミノは
止まることを知らない。




気付いたら、
ソラちゃんが助手席にいた。






ああ、
インフルエンザで、
今日は早く、





帰ってきたんだった……









彼女は、
これでもかと、
顔を真っ赤にさせた。






もう少し、
待てる人間のつもりだった。






待てるわけねぇ














「ねぇ、ソラちゃん。
俺、独占欲がかなり強いし、嫉妬深いんだ。」


腕の中の彼女に、
そう言った。



「私でよければ」




ソラちゃんは、
小さく笑った。




幼い顔に見えていた彼女がふいに凄く大人に見えた。



10代と20代の壁は、
ほんの一瞬でなくなってしまう






「ねぇハイリさん、今日、ハイリさんのうちに行っても良いですか?」




12月15日。
学校帰りのソラちゃんが2人っきりのバスの中で言う。



「良いけど、なんで?」


わざとわからないふりをして聞き返す。


「…もうすぐクリスマスだから一緒に予定たてようと思って」




ソラちゃんが、下を向きながら恥ずかしそうに言う。



その仕草が可愛くて、
思わずくすりと笑ってしまう




「良いよ。じゃあ夕飯はうちで食べなよ、今日は兄貴も出張だし、邪魔されないよ」



「え」


ソラちゃんが困った顔をする。


「何もしないよ。ただ兄貴には2人の時間を邪魔されたくないし」


ケロリとした顔でそう言うと、真っ赤な顔を更にソラちゃんは真っ赤にさせる。




こういう顔も、
兄貴には絶対に、
見せてやらない。







俺は完全に、
この子に溺れている







そんな自分自身に、
わらった。






END.





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あきゅろす。
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