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向日葵の君
指輪1
 
「何ですか? 急に改まって」

休みの前の晩。
いつものように部屋にやって来るなり、神妙な面持ちの土方に向かい合わせに座らされた茜は、上目使いに土方を見つめる。
悪い話ではないはずだと何となく感じている茜が、素直に不思議そうな顔で見つめてくるので、逆に土方の方が切り出しにくい。

袂に隠した小さな箱の中身をどうやって茜に渡せばいいか。
驚かせてみたい気もするが、どうにもそういうサプライズを用意するのは得意ではない。

しょうがねェ、ここは普通にやるしかねェかと諦めた土方は、袂に手を差し入れた。
まだ少しは隠しておきたい気持ちもあるので、掌の中に箱を隠すようにして取り出すと、茜の視線がじっと土方の手を追う。
箱を手の中で握り直した土方は、長い息を吐いて顔を上げた。

「これ。もらってくれるか?」

茜の表情の変化を決して見逃さないように、茜を見つめ続ける。

不思議そうな顔で箱を受け取った茜は、まずは箱の六面をぐるりと眺めてから耳の側で振ってみせた。

「お、おいっ!? 振るのはやめろ」

慌てて制止させ心で叫ぶ。

おいー!? 俺がお前に怪しい物を渡すわけがねェだろ!?
つーかどっからどう見てもアレしかねェだろうが! さっさと開けろって!

ようやく箱を開けにかかる茜に土方はぐっと息を飲んだ。

「……!! えっ? ええっ!?」
「ああ」

目を丸くして驚く茜に、クールを装うはずの土方も頬が緩む。

「この前のがただの口約束じゃねぇって証拠だ」

土方の言う「この前」が花見の日のことだというのは、箱の中身を見た茜にもちゃんとわかった。
泣き出しそうな顔で銀色に輝く指輪と土方を交互に見つめる茜は、何て言えばいいのか言葉が見つからないようだ。
何か面白い反応を無意識に待っていた土方は、あまりに普通の反応に逆に驚かされてしまう

「つけてみたらどうだ? 俺がつけてやるから」

手を伸ばしそっと指輪を摘んだ土方は、左手で茜の左手を取った。
丁寧な動作で薬指に指輪を通す間、茜は黙ったままじっと指を見つめているだけ。

「どうだ?」

少し指を反らせ気味にした左手を見つめる茜の口角が徐々に上がっていく。
泣き笑いが浮かんだ次の瞬間、文字通り茜は土方に飛びついた。

「っと……」

一瞬体勢を崩しかけた土方だったが何とか持ちこたえ、受け止めた身体をしっかりと抱き返す。
さっきからずっと何も言わない茜だが、言葉も見つからない程に感激してくれているのかと思うと、それはそれでうれしくてたまらない。

「嬉しい……。嬉しすぎて何て言ったらいいかわからなくて」

茜が顔を上げた。

「ありがとうございます」

無理無理無理。いつまでもクールになんてやってられるか!

ほんの至近距離で目を見て微笑みかけられた土方は、腕の中の茜をそのまま抱えて敷いてある布団に運んだ。

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あきゅろす。
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