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向日葵の君
待つ人3

 * * *


指示通り茜を土方の部屋へ連れてきた山崎は、まだ少し納得できない表情の茜を部屋に留まらせるため、土方の話を振ってみた。

「茜ちゃん、本当愛されちゃってるね」
「そう、なんですかね……?」

一瞬でも早く無事を確認したいだろうに、出迎えるなと聞かされた茜は少しショックを受けているようで、自信なさげな表情だ。

「わざわざ無線で俺だけじゃない、みんな聞いてんのにさ。茜に伝言頼む! 心配すんな! って必死になっちゃって。デカイ声出すからこっちは音割れてうるさいのなんの」

無線が切れた後の屯所側の盛り上がり様を思い出し、山崎は笑った。

「でも何で出迎えたらダメなんだろ? 山崎さん、わかりますか?」
「ああ多分ね、心配かけたくないんだよ。酷い怪我はしてなくてもね、やっぱボロボロにはなってるだろ? 敵を斬れば血も浴びる。そういう姿を茜ちゃんに見せたくないんだと思うよ」

あの副長がねぇ。

自分で言いながら吹き出しそうになり、何とかこらえる。
茜は山崎の言葉に納得してくれたようで、お茶の準備を始めた。

茜ちゃん、綺麗になったな。

茜の横顔を眺める山崎は、茜や土方の変わり様を思うと胸が熱くなるのを感じる。

「山崎さん。どうぞ」
「ああ、ありがとね」

茜がいれてくれたお茶を一口飲んだ山崎は、こんな機会は滅多にない、二人のなれそめや普段は見せない副長の素顔を聞き出してみようと、ふと思い付いた。

「すごい偶然出会ったんだよね?」
「えっ、土方さんとですか? あ、ああそうですね」

さりげなく話を持っていくと、まずまずの反応だ。

「どう? 副長は優しい?」
「えぇ。まぁ、そうですね」
「あの人、意外にかわいいところあるでしょう?」
「うーん、どうだろ? ま、そうですね」

意外とガードが固いぞ、この子。
何聞いても「そうですね」って。笑ってよきかなの客じゃねェんだっつーの。

心の中でぼやいていると、にわかに屯所内が賑やかになってきた。
茜もとっくに気付いていたのだろう。
既に意識は部屋の外へと向いていたようだった。

「戻ってきたみたいだね」
「そうですね」
「早く会いたいのはわかるけど、ここは副長の気持ち汲んでやってね。あの人も必死だからさ」
「はい。わかってますよ」

茜はあっさりと納得して笑ってみせた。

「きっと風呂でも入ってすっきりしてから来るから」
「はい!」

輝くような笑顔に、もう何も言わなくても大丈夫だと山崎が安心していると、ドタドタと廊下を歩く足音が近付き、部屋の前で止まった。
茜と山崎二人が、息を飲んで戸に集中する中、現れたのは何故か沖田だった。

「おーい。帰ったぜー」
「沖田さーん、副長かと思いましたよー」
「ん? いやァ、土方さんが無線でおかしなこと言ってたからさ、ちょっとからかいに来ただけでさァ」
「え? なんで沖田さんが……?」
「野郎の無線、あれ全車両につながってたぜ」
「沖田さん……怪我……」

血で汚れた隊服に気付いた茜が、固まっている。

「怪我? こんなのかすり傷でィ」
「沖田さん! 何のために副長が無線使ってまで茜ちゃんをここにやったと思ってるんスか!?」
「おい、茜」

山崎の訴えを無視して沖田は、固まったままの茜の前に立ちはだかった。

「いくら土方が隠そうとしようが、これが俺達だ」
「……」
「けどな、そう簡単に死にゃあしねェさ、土方は。だから安心しな」

たったそれだけを言いに来たのか、沖田は茜の返事は聞かず立ち去った。

「茜ちゃん?」
「大丈夫です。土方さんの気持ちもわかってるし、沖田さんの言いたいこともわかります。私、どんなことでも目を逸らしたりはしませんから」

固い決意の瞳。
絆ってヤツは、時間だけがつなぐものじゃあないらしい。
縁あって出会った二人は、例え一緒に過ごした時間はまだ短くとも、しっかりと強い絆で結ばれていたのだ。

何だかうらやましいなぁ、チクショー。

山崎は心の中で呟いた。

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