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向日葵の君
決心2

この人なら悪気なく、茜に何でも話してしまいそうだな。

土方は煙を吐き出しながら、目の前の近藤に対して思う。

「アンタに何か言ってきたのか?」
「ん? 茜ちゃんがか?」
「ああ」

気になってしょうがないんだな。

冷静なふりをしている土方を見ていると、近藤は内心少し可笑しくなる。 

だからといって茜と出会ってから仕事が疎かになっているとか、そんなことは断じてない。
どちらも大事に両立できているのは、それだけ余裕ができたということだろう。
それでもまだ茜が不安に思うことがあるとしたら、それは彼女がまだ若いからなのかもしれないと、近藤はそう考える。

「本当にお前が自分を好きでいてくれてるのか、茜ちゃんは不安を感じてるみたいだったな」

不安? 何が不安だってんだ。
アイツを不安にさせるようなことなんて何一つないだろうが。

近藤の言葉に納得いかない土方は、心の中で反論する。

「いや茜ちゃんはまだ若いから。小さなことでもお前に言えず悩むこともあるんだろう」

不機嫌な顔つきになった土方に気付いた近藤は、宥めるように言った。

「茜ちゃんにはお前のことを信じてやれとだけ言っておいた。お前は一度腹を割って話を聞いてやれ」
「あ、ああ」

恋愛話だというのに妙に的を得た近藤の言葉に押されて、思わず素直に返事をしてしまった土方は、少しだけ笑いそうになるのを堪えて煙草を灰皿に押し付けた。

「近藤さん。俺も全く心当たりがないわけじゃねェんだ。一つお願いがあるんだが聞いてもらえるか?」

後でややこしいことになるくらいなら、多少格好悪くてもきちんと話しておいた方がいい。
土方は改まって近藤に向かい、切り出した。

「なんだ、言ってみろ」
「誰かの口から耳にしたことでアイツを不安にさせたくねェんだ。ちゃんとテメェの口から話したいって思ってる。もし今日みたいにアイツが不安を漏らすようなことがあっても、何も言わないでいてほしい。特に……昔のことは」
「ああ、そういうことか。なんだ茜ちゃん知ってんのか?」
「いや、知ってるっつーか何つーか……」
「わかったよ、トシ。お前変わったな」

少し気恥ずかしくなった土方は、近藤から目を逸らすように新しい煙草を取り出す。

「ああ、自分でもそう思う」

土方にとっては少々居心地悪い空気を蹴散らすかのような、慌ただしい足音が廊下から近付いてきた。
続いて勢いよく戸が開かれる。

「局長ー! あ、副長もいたんですか。今、庭で芋焼いてるんスよ。お二人もどうですか?」

監察の山崎、人間観察も大好きな山崎が駆け込んできた。

「お、焼き芋かぁ! 俺も行くよ。そういえばさっき茜ちゃんが葉っぱを集めてたなぁ! トシはどうする?」

開いた戸から煙の匂いが入りこんできた。

「ああ、俺も行く」

二人は腰を上げ山崎の後に続いて部屋を後にする。

意外と勘の良い茜のことだ。
誰かが漏らした言葉から不安になることもあったのだろう。
隊士一人一人に口止めして回るわけにはいかない。

もうこれ以上茜を不安にさせないように、きちんと話してやろう。
土方はそう決心した。

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あきゅろす。
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