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向日葵の君
迷い人1

正月中、屯所に残り働いていた茜は、松の内を過ぎてやっと、遅れた休みをもらった。
その内の一日が土方の休みと重なり、二人は今日久しぶりに一緒に町へやって来たのだった。

町はすっかり普段通りの装いで、北風が土埃を立て吹き抜けていく。
纏めた髪が乱れるのを嫌う茜は、眉をしかめて頭を押さえた。

髪はずっと伸ばし続け、纏め髪もすっかり板につき、鏡を見るたび少し大人びた自分に誇らしくなる。

それにしても。
久しぶりのデートとあって少し力を入れて普段より強めに紅を入れてみたが、土方は気付いているのだろうか。
さっきからずっと、ただ黙って歩く二人の間には、風が抜ける隙間がある。

「どこに向かってるんですか?」

茜は思い切って聞いてみた。

「ん? どこってここだろ」
「ここ?」

首をかしげながら、茜は辺りを見回す。
ただの近道かと思っていたが、よく見れば広い公園のようだった。
冬なので枯木が目立っているが、他の季節ならきっと気持ちのいい所だろう。

「のんびり一周すんのもいいかと思ったんだが……退屈だったか?」
「全然そんなことないです。いい公園ですね」
「そうだろ。おい、あれ」

口元を綻ばせた土方は、煙草を挟んだ指で前方を示した。

「全部桜の木だ。春になったらすげェぞ。俺達もあそこで毎年花見やってんだ」
「へぇ」

一面に桜が咲き乱れる景色を想像した茜は、感嘆の息を吐いた。

「夏は緑が多いから涼しくてな、よく涼みに来る」
「秋はどんなですか?」
「秋か? 秋は特にねェな。枯れ葉がすごいくらいか」

枝だけになってしまった寒そうな木々が立ち並ぶ景色しか知らない茜は、これからたくさんの景色を土方と一緒に見られるといいなと、ひそかに思い巡らせた。

「また来たいですね」
「……」

覗き込んだ瞳には少し陰りが見える。

「土方さん?」
「ちょっと座るか」

微かな胸騒ぎを感じ小さく名前を呼ぶと、土方はすぐ近くにあるベンチを顎で示し歩き出した。
最近はそれなりに幸せで特に不安もなく、それだけに土方の態度には心当たりがない。

「どうしたんですか、急に」

ベンチに腰掛けるなり茜は尋ねてみた。
一息つくように煙を吐き出した土方は、少し考えてから口を開いた。

「まだはっきりとしたことは言えねェんだけど、近い内にでかい仕事がある」
「大きい仕事?」
「斬り合いになる。危ねェ仕事っつー意味だ」

意味が通じた茜は、神妙な面持ちに変わった。

「危ないって命がですか?」
「ああ。それくらいの覚悟を持ってなけりゃ最初から負けだ」
「でも、今までもそういう時もあったんですよね? 私、よく知らないけど。誰かが亡くなったとか聞いたことないですけど……」
「それはお前が知らねェだけだ」

二人でいる時はあまり聞くことのない、緊張感のある声で茜の言葉を否定した土方は、ゆっくりと煙草を消した

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あきゅろす。
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