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向日葵の君
考える人2

夜、自室で茜は就寝準備にかかっていた。
明日は久しぶりの休日。
気分転換に町へ出てみようかと、そっと箪笥を開けてみる。
目に入るのは、この間土方と町へ出た際に買った二枚。

明日はこっちかな。

嘘か本当か、土方がお前らしいと言ってくれた向日葵のような黄色。
もう一枚は見えないふりをする。

これを着て髪の毛は……。

鏡の前に移動した茜は、だいぶ伸びた髪を後ろで纏めてみた。
何となく短い髪が好きで伸ばしたことがなく、見慣れない自分が鏡に映る。
普段よりほんの少し、自分の目からも大人っぽく思えた。

そういえば土方さんは長い髪と短い髪、どっちが好きなんだろう?

今度聞いてみようと考えかけて、やっぱりやめる。
そんなことを聞けば、土方はまた頭に思い浮かべてしまう。
土方の心がどこにあろうが、側にいたいのだったら考えたってしょうがないのに、考えてばかりの最近の自分が嫌いだ。
聞く必要もないと沖田はそう言ったが、余計なことを聞いてしまったため一人で勝手に疑心暗鬼に陥っている。

「あー、もうどうしていいかわかんない!」

決心はつかないし、一日中胸の奥はモヤモヤに支配されているような状況。
茜は少し大きめの声を出した。

これ以上一人でいくら考えても埒外があかないように思えてくる。
それに土方とゆっくり会いたい気持ちもあった。
いつものようにお茶を持っていく時だと、どうしたって過ごせる時間は少なく、込み入った話をするのは難しい。

あれ!?
もしかしたら土方さんが夜に来いって言ったのは、ひょっとして単純に時間がゆっくりあるからってそれだけだったとか!?
決心ついたら行くなんて言って笑われたのも、もしかして深い意味なんてなかったから?

また新たな疑念が湧いてしまい、このままじゃ眠れそうにもない。

簡単に纏めただけだった髪を下ろした茜は、髪に櫛を入れた。
次に男性が気付かない程度の控えめな紅をさす。

既に寝間着に着替えていたので、立ち上がって再び着替え始めた。
誰かに会ってしまった時に言い訳がしやすそうなので、仕事着を選ぶ。

「よし」

準備を終えた茜は、まずは廊下を見回してから自室を飛び出した。
足音を立てないように注意しながら、隊士らの住まうエリアへ足を運ぶ。

誰にも見つかりませんように。

まだ眠るには時間が早いせいか、どの部屋からも人の気配がはっきりとしていて、テレビの音が漏れていた。

角を曲がれば土方の部屋はもうすぐ。
昼間とは違う緊張感の中、一歩ずつ進む茜は、目をつむり大きな息をついて立ち止まった。

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