昼下がりの屋上にて(兄/静雄)
一筋の煙が真っ青な空に漂うのを静雄は寝転んで見ていた。
携帯が震え、ポケットから取り出して見ると楓からのメールだった。
『何してんの』
授業始まっても教室に現れなかった静雄を気にしてメールを送ったのだろう。
「屋上で寝てた」
と返し、タバコをもう一度吸って身体に染み込ませる。
たまにはこうしてゆっくりと静かに暮らすのも悪くはない。元来静雄自身は暴力など好きではなく、名前の通り平和に静かに生活したいのだ。
なのに、高校に入ってからますます騒がしくなってしまった。
「っち」
胸くそ悪いことを思い出し、加えてたタバコを潰す。
止めだ、止め。考えてても仕方ない。
楓も返信がきたことに安心したのか、あれきり連絡は来ない。
もう一度眠って、次の授業には戻ろう。
そう思って目を閉じようとしたとき、ガチャと扉が開く音が聞こえた。
「何やってんだ、この不良め」
「…椿さんすか」
ほっと心を撫で下ろし、中途半端に起き上がった上半身をもう一度寝かせた。
「楓は?」
「フツーに授業受けてますよ」
「あの子は俺と同じで真面目だからね」
「………それはなんとも言えないっす」
高瀬兄弟宅の隣に住む静雄は、椿がヤンチャしていた時代を朧気ながらも知っている。ガラの悪そうな連中が椿の家の前でたむろって、玄関先が血の海になったこともあった。
だが、静雄にとって椿は、尊敬し見習うべき兄貴のような存在で、自分はこうでありたいと思う道標だ。
静雄にも少し離れた弟の幽に、椿のような兄でいたいと思っていた。
「静雄ー、タバコ吸わねぇの?」
「今寝ようと思ってたんで、吸ってないっす」
「じゃあ吸え。今すぐ吸え」
「はっ!?」
椿は無遠慮に長椅子の上で寝ていた静雄に跨がり、ポケットを探った。
突然の出来事にびっくりしたのだが、抵抗もせず椿の様子を伺う。
携帯とは逆のポケットから狙いの物を見るけると、一本取り出して火を付けた。
すぅ、と一度だけ吸い込んで椿は加えていたタバコを静雄の口へと渡した。
「あんがと。助かった」
「…まだ禁煙してんすか」
「何その無謀なことまだやってんの的な言い方」
「あ、いやそんなつもりじゃなかったんすけど、」
「わかってるわかってる。冗談だって。静雄は素直だからな」
がしがしと頭を撫でられた。
「まあ、これでも教師になっちまったんだし、あんま煙吸うのも悪いだろ。生徒たちに。だから貰いタバコで我慢」
椿は静雄から漂う煙を肺にいっぱい吸い込んだ。
「お前もちゃんと考えて吸えよ。あんまり吸いすぎるといざ止めたいときに苦労するぞ」
俺みたいに。と椿さんは笑った。
その顔を見て、静雄はつられたように頬を緩ませた。
>>>アトノマツリ
(>ω<)
(2010/03/14)
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