涙の行方/クロナ
「………泣いてるの?」
「………え……」
今日もメドゥーサ様の命令で沢山の魂を狩った。狩って狩って狩ってかってカッテ、残ったのは僕だけ。だと、思っていたのに。
僕の背後から聞こえた少し低めの女の子の声。だれもいない路地裏で単調に呟かれたその言葉はよく響いた。
「あなたの心…
泣いてる。助けてくれって叫んでる」
「き…君だれ……」
「私?私なまえ。」
「一体なんなの…」
「あなたの名前は?」
「クロナ…」
ゆっくりと近付いてきたその女の子。透き通った視線が僕を射抜くかのように降り注ぐ。
思わず後ろに退いた。だってこの子、怖いんだ。とても怖い。自分の全てが否定されそうで、怖い
「クロナ、」
「よ、呼ばないでよ!」
「何にそんなに怯えているの」
自分でも分からない。とっさに叫んだ。それでもなまえは歩みを止めない。瞳を反らさず、じっとこちらを見つめたまま。なんだか僕今、泣きそうだ。
「来ないで…!来るな!」
「大丈夫…、私はあなたの味方…」
「う、うるさい!殺しちゃうよ!!」
頭を抱えてしゃがみこんだ。もう何も聞きたくない。胸の奥がずきずきする。頬を生暖かい何かが流れていく。口元に流れ着いたそれを舐めてみるとしょっぱかった。
「うう…何なの君…」
「私はなまえ」
「そんな事…知ってる」
止まらない。ぼろぼろ溢れ出てきた。目の前はぼやけて何も見えない。滲んだ世界は薄暗くて、なまえだけが輝いて見えた。ランプのようにぼんやりと。ぼくはその灯りに酔ってしまう。
灯りに群がる蛾は、焼き焦がされ、命を落とす。
それでも僕は無意識の内に手を伸ばし、灯りを抱き締めた。なまえは何も言わずに抱き締め返してくれた。
とてもあったかい。灯りは思った通りほかほかと暖かくてまぶしかった。
「少し休もうよクロナ、今のあなたは心も体もボロボロだから。」
「うん……」
「大丈夫。大丈夫だよ。1人ぼっちじゃないよ」
「うん………」
「きっとあなたを守ってみせるわ」
「なまえ、」
「何?」
「君は一体……
僕の何?」
「………そうだな…
私はあなたの……道標」
「みちしるべ……」
「そう、今あなたは迷っていた。剣に迷いがあったような気がした」
「え………、」
そんなはずない、だって僕はメドゥーサ様の命令は絶対だって知ってる。それに迷いなんてあったら命取りだって事も知ってる。
僕が…迷ってた……?
「だから今回は私が背中を押してあげる」
「………。」
「きっとまたいつか会いましょうね、クロナ」
別れの言葉。瞬間、すごく悲しくなった。なまえに会ったのも話したのも今日が初めてなのに、ずっと昔から知っていた人と離れるような感覚
「ッ、なまえ!」
「なに?」
「あ、あの、あの」
駄目だ。言葉が出ない。なまえに伝えたい言葉があるのに。
僕は、君と、離れたくないんだ。
「クロナ、」
「!」
僕の頬に柔らかい何かがあたった。何かだなんてすごく近くにあるなまえの顔を見れば歴然としているけれど。
「え……え、えぇ!?」
「大丈夫、きっといつかまた会えるよ。私はそう信じてるから」
「でも……」
「クロナが会いたいと思ったら会える」
僕の両手を取り祈るように包み込んだ。僕の凍えた指先はじんわりと暖かくなっていく。
「だって私は……あなただから」
そうなまえは呟くと、ぼんやりと霞んで見えなくなっていった
涙の行方
(君は僕の“弱さ”の部分)
:)最初考えていたときはあの影のクロナを主にしようかな〜 と思っていたのですが、一人称を僕、相手を君と呼ばせると…… 「あれ?これどっちがどっち」となりまして、それじゃあ
弱さ→女の子な部分→女の子
はい!もうこれでいいやよし!となりました。
いつもながら成り行きで話ができていくので色々と矛盾がありますがorz
閲覧感謝です(^^)
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