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今日は寒い。
どうやら冬島の気候海域に入ったらしく、朝から食堂や談話室の暖炉がついていたり船員たちのほとんどがコートやマフラーといった防寒具を身に付けていたりして、昨日までの猛暑の影はもうどこにも見当たらなかった。


「そんなに寒いか?」

日が落ちれば気温もぐっと下がる。ベッドの上で丸まっているマルコは極度の寒がりだ。
冬島には絶対上陸しようとしないし、雪は極力降らないでほしいらしい。
あたまがおかしい。
雪が嫌いだなんて。雪合戦をしない人間なんて。雪だるまを作らない人間なんて人間じゃない
と、思う。

「お前は若ェからんな事が言えるんだい」
「マルコがオッサンなだけだろ?」
「…お前だってオッサンになれば分かるよい」
「分かりたくない」
「…クソガキ」

「あはは、じゃあさ、」

暖めてやるよ。

(こちらこそバナナだかパイナップルだかに惚れるなんて思ってなかったよ。)言いかけた言葉を飲み込んで、マルコの首筋にやんわりと噛みつき、そのまま舌を使って耳まで舐めあげる。そしたらまた柔らかい耳たぶを甘噛みして、わざ、わざと耳に当たるように吐息を漏らす。一瞬マルコの肩が震えたかと思えば逞しい腕が回ってきて抱き込まれ、そのままベッドへ押し倒された。
「あ」
今日は珍しく、あの甘ったるい煙草の匂いはしない。代わりにかぎ慣れたシャンプーの香りが鼻腔をくすぐる。

「いいにおい」

何だか安心して瞼を閉じるとギシ、という音と共にキスが降ってきた。ああマルコの唇、気持ちいい。乾燥しているおれのなんかとは全く違う、しっとりと柔らかくて、まるで女みてェなその唇は、重ねられるだけで体温が上昇する。
「っ…んっ、ん」

しばらく繰り返していた軽く啄むような口付けは、しだいに深く、ねっとりと味わうようなものへと変わる。とろけた口腔内を更に攻められ、下半身が熱くなるのが分かった。舌が動く度に鳴るえろい音に耳を塞ぎたくなるがおれの両手を頭上で押さえ付けているマルコがそれを許さない。
「ん、ン…っ」
夢中で唇を貪るうちに荒くなる呼吸。マルコも、おれも、今日はどうやらお互い余裕が無いらしい。





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あきゅろす。
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