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一周年記念小説
心に穴があいたみたいだった
、あの夜は新月だから月が
出ていなかったので夜空に
は星々だけが瞬いていてとても綺麗だったそんな夜に
あの子は黄泉へと旅立ってしまった。
昼寝が好きでキスも上手な少し甘えん坊の栗色の毛がかわいい、
ちょっぴり癖毛のあの子。そうそう寂しがりやな
ところもあったかしら。
あの子との思い出などを巡らせていくうちに視界はみるみる涙でぼやけていき私は悲しみでいっぱいだった
あの子は
あんずあめが好きだった。あの子と出会ったのは毎年近くの神社でやる縁日
だったまだあの子は
産まれたばかりの子犬で捨てられていたのを拾ったのが最初だった。零れおちた涙の雫がそっと浴衣に跡をつけた

「大丈夫?」
ふと背後から声がきこえた凛とした
低い声だった。
振り返れば自転車に跨がった栗色の髪で真選組の隊服をきたハンサムな少年がこちらをみていた。

「このへんは痴漢が出るから危ないよ」と彼は続ける
『ご心配ありがとう、お構いなく』それだけいうとまたずっと向こうに見えている夕陽に視線を戻した。
遠くで祭囃子がきこえていた
『仕方ないな』
少年はそのまま私の隣に腰を下ろし寝転んだ
『まだここにいるんでしょ?30分したら起こしてくれる?』
「ちょっと…!」
『ついでに膝貸してよ』
彼は悪戯に笑って私の膝を枕にして眠ってしまった、立ち上がって彼の頭を落とそうかとも考えたけれど膝にある温もりがとっても懐かしいかんじがするので何故だかそのままにしてしまった。眠っている彼の髪をさわるととってもやわらかくてあの子に似ていた。

『…ん、ありがと』
彼が目覚めたのは私がすなっくすまいるに休勤届けの電話を掛けてるときだった。
「ええ、本日はお休みさせて戴きます、はい、では。」

『じゃあ今日はもう暇なんだ』そう彼は私の膝を枕にしながら私を見上げいった、彼の瞳は深くそして澄んでいた。


彼が自転車を漕ぎ風をきる夏の終わりの夜風が頬を撫でた彼の後ろに座っていた私は自転車を漕ぐ彼に尋ねた

「どこにいくの?」
『好きなところだよ』
彼はぶっきらぼうにいった
私は空を見上げた
祭囃子が近くできこえる

自転車がとまる
祭囃子がとてもちかい。
「縁日?」
彼に尋ねるとはにかみながらうなずいた

あの子も縁日が好きだった縁日には毎年連れてきて変わらない出店を杏飴を食べながらあの子を抱えながらまわるのがこの何年かの行事だったあんずあめを食べたあとの私にキスをするのも毎年のことだった。

ふと手が繋がれる、彼を見上げたが彼はこっちを見てはいなかった。

私たちは暫らく夜店をまわりながら他愛もないことを話笑った、大方の夜店をまわり夜店も一番神社のお社にちかい杏飴屋だけになった

『杏飴おごるよ』
「自分でお代はだすわ」 『いいの、膝枕代』
そう彼は悪戯に笑った。

口に付けた杏飴は毎年同じ味で少し安心した、甘くてけれど口の奥のほうがきゅんとなる酸味がある。杏はこの世の酸も甘いも兼ね備えた果実なんだろうか。

『杏って酸も甘いも兼ね備えているよね』
彼はどこか儚くて切ない笑い方をした。
「同じことを考えてた」私も彼の笑い方を真似した
もう世界はうす青い夕暮れに包まれていた、青と赤が唯一交わる時間帯は一日の中で最も好きな時間だ。

『夏も終わりだね』
「そうね」
『秋がきて、冬が過ぎ、春がきて、また夏がくる、そうしてまた年が巡る』
私は黙っていた。
彼は私を見つめた。

『今までずっと僕は楽しかったよ』

「そう。私もよ」

彼はあのどこか懐かしい澄んだ瞳で私をみつめて、そっと顎を持ち上げた

『今まで、ずっとだよ』
またあの儚い笑い方で微笑んでから彼は私にキスをした。

とても驚いたキスをされたからではなく、あの子のキスにあまりにも似ていたからだった。

『僕もとても愛していたよ』
寂しそうに笑った顔がとても寂しいときに私をみつめるあの子に似ていた。

『それだけ言いにきたんだよ、じゃあね。元気で』



彼はそういうと縁日の雑踏に消えていった。








あとがき
江國香織さんの「デューク」のパロディです。
あえて最初にパロだと伏せさせていただきました。
リクエストありがとうございました!アリィ様のみお持ち帰り可能でございます
今気付いたのですが相手がお妙だってまったくわかりませんね…ちーん
ほぼ私の趣味で仕上げてしまい申し訳ありません…

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あきゅろす。
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