SMILE MAKER








アラバスタに着くちょっと前の話。

夜―

日誌を書き終えたナミはあることを考えていてなかなか寝付けなかった。
そこで気分転換に船首の方へ行った。するとマストの方から声がした。

「お〜い!ナミ!!」

「ルフィ…」

ぴょ〜んとナミの方へ降りてくるルフィ。

「どうしたんだ?こんな遅くに」

「ん…ちょっと眠れなくて気分転換にね。そうゆうあんたこそ何してんのよ」

「オレか?船番だ」

「あ、そっか」

「…それにしても腹減ったなぁ…」

お腹をおさえながら話すルフィ。

「あんたねぇ…夜あんなに食べといてまだ足りないの?」

ナミがあきれたように言う。

それに対し

「ああ。全く」

キッパリ断言するルフィ。

(……食材に手を出したらサンジくんに悪いし…)

「しょうがないわね、あたしのみかん食べていいわよ」

「本当か!?じゃあ…」


ぱぁっと明るい顔をして腕をみかん畑の方に伸ばし自分の言葉も言い終わらないうちにみかんを
口にほおばるルフィ。


「三万ベリーね」

「!!!」

目をあんぐりさせ、みかんを喉に詰まらせるルフィ。

それを見てナミは

「冗談よ♪」

とフフッと笑った。

「何だよビックリさせるなよ」

みかんを飲み込みルフィはフーッと息を吐き安心したように言った。


船首の方を向きずっと続く海を見る二人。


「グランドライン…この先のどこかに『ワンピース』があるんだね」

「あぁっ!!」

元気よく答えるルフィ。

「ねぇ、ルフィ」

「ん?」

ルフィはナミの方を見る。ナミは視線を変えずに続ける。


「あんたは怖くないの?」

「何がだ?」


「…あんたは今まで行く先々で名のある海賊団の船長と戦ってきたし、これからグランドラインを
進むにつれてもっと強い奴らと戦っていかなきゃいけないでしょ?
それは海賊王になるんならなおさらのコトじゃない。
次に戦わなきゃいけないのは七武海の一人、クロコダイルだし…きっとハンパなく強いと思うの。
勝てる保障なんてどこにもない。
それでもあんたは立ち向かっていくでしょ?
もしかしたら死んじゃうかもしれないのに…
ルフィあんたは…
死ぬことは怖くないの?」

「死ぬことが怖くて海賊になれるかよ。それに俺には海賊王になるって野望がある!その野望の為に
戦って死ぬんなら別にいい。」

「バカ!!

急に大声で叫ぶナミ。

「???」

ルフィは目をパチクリさせおどろく。

「野望の為に戦って死ぬならいい?ふざけないでよ!!死んだら夢を叶えることも出来ないし・・それに残された方はどうなんのよ!?大切な人を失う悲しみがあんたに分かるの?
もうやだよ、あたし・・・。
もうあんな思いしたくない!!」


こみあげてくる涙を必死にこらえるナミ。その脳裏で過去の辛い記憶を思い出しながら・・

ルフィは麦わら帽子をポンッとナミに被せた。

「何言ってんだよ。オレは死ぬ覚悟はある。だけどオレは負けねぇし 死なねぇよ。
だってオレは強ぇからな!!」

しししっと笑うルフィ。

「それになぁ、オレ達は仲間だろ!仲間を置いて死ぬ奴がこの船のどこにいるんだよ。どこにも
いねぇだろ?ゾロやサンジ、ウソップにチョッパー、ビビもカルーも!もちろんオレもだしお前だって
そーだろ?」

「うん!」
ルフィを見上げ笑顔で答えるナミ。

「それに風車のオッサンと約束したしな」

「−ゲンさんと?何を?」


(・・もしお前らがナミの笑顔を奪うようなことがあったら・・・私がお前を殺しにいくぞ!!!)


ゲンさんの言葉を思い出しながら二ッと笑うルフィ。

「・・?何一人で笑ってるのよ。ゲンさんと何を約束したの?」

「秘密だっ!!」

「な〜によもう。教えてくれたっていいじゃないケチ!」

口ではそう言いつつもナミの顔は穏やかだ。

「ナミ。お前のことはちゃんと俺が守ってやるからな!!」

「ふふっありがとルフィ。
ね、あたしは何をすればいい?あたしからあんた達に何か出来ることってある?」

「笑顔だ!!」

即答そるルフィ。

ナミはきょとんとする。

「笑顔?」

「あぁ笑顔だ!いつも笑っててくれればそれでいい!!」

「笑ってるだけでいいの?ほんとにそれだけでいいの?」
ルフィに聞き返すナミ。

「それでいい!!」

「わかった!」

クスッと笑うナミ。


ルフィもその笑顔に答える。
「お前が笑顔でいることがみんなにとっても、オレにとっても幸せなんだからな!!」

「ルフィ・・」


それから一息つくと、

「さてー・・・そろそろあたしは寝るわね」

そう言うとナミはルフィに麦わら帽を被せ返すとスッキリした表情で船内へ歩き出す。

「あっルフィ。あんたはちゃんと寝ないで船番しなさいよ。あと盗み食いはしちゃダメだからね。
もちろんあたしのみかんもよ。そんときは本当に三万ベリーだからね!」

振り返りルフィの方を指さすナミ。

「チェーッ。なんだよ」

口をとがらせるルフィ。まだ食べ足りないらしい。

「おやすみ」

笑顔で部屋に戻るナミ。

−部屋へ戻る途中ナミは思った。


(・・『いつも笑顔でいること』か−。昔の私にはとうてい無理だったな。
でもね、ルフィ。あなたが私を仲間だっていってくれたあの日、あなたが私の本当の笑顔をアイツ
から取り戻してくれたのよ。
本当にありがとう−。
・・それにしてもあいつってなんでいつもあんなに自信たっぷりなんだろう。怖いものしらずだし・・・
ま、そんなとこも好きなんだけどね♪)

ナミは走り出した。

その頃ルフィは一人みかん畑の前でつまみ食いと格闘していた。

「何やってんのよ」

「なんだナミか。お前寝るんじゃなかったのか?」

「いいじゃない。・・ほら」

みかんを一つルフィに手渡すナミ。

「おぉっ・・はっ!お前まさか三万ベリー・・・!!」

「いらないわよ」

「やったー!!」

おいしそうにみかんを食べるルフィ。そんなルフィを見ながらナミは、

「ありがとーね」

と一言いった。

「何がだ?」

「−いろいろよ。」

「いろいろか。」

そしてルフィの頬に軽くキスをするナミ。

「///!!」

ルフィは少し驚きつつも頬を少し赤く染め、ししっと嬉しそうに笑った。

「あたしもルフィに笑顔でいて欲しいな。ねっ約束しよ?
ずっと笑顔でいるって」

小指を差し出すナミ。

「おぅ約束だ!!」

ルフィも小指を出し指切りを交わす二人。


(ねぇルフィ・・。あたしあんたがいてくれて本当に良かった−。
あたしはあんたが隣にいてくれればどんな辛いことがあってもそれだけでずっと笑顔でいられるよ
・・−!!)




end.



by:ユウ様



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