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カフェ『皐月堂』へようこそ(レナルキ他)
さざなみとざわめき 前編 Side:ROZEMON
(※番外編「『花』ノ行動」の続き)


 土曜日の夕方に、私は東京へ帰るためにJR京都駅へ向かった。明日は午後からバイトが入っていたから、もともとその予定だった。
 混雑する駅で、
「新幹線の車内ではなるべく眠らない方がいいです。降りる駅、車内アナウンスの流れるタイミングが決まっているので、スリが狙いやすいんです。眠る場合、手荷物は足元に置かず、網棚の上へ。足元だと真後ろの席から手を伸ばせるんです。バッグの中のカードだけ抜き取られて盗まれてしまうことがありますからね。発覚が遅れて、被害額も多くなってしまいます。
 はい、新幹線の切符です」
「……え?」
 感心しつつ防犯知識を聞いていた私は、突然新幹線の切符を差し出されて驚いた。
「やだ、いつの間に買ってくれたの? お金払うわ。――うそっ、グリーン車!?」
「『のぞみ』の方が早く東京駅に着きますから。でも、今から近い時間に出るものはどれも混んでいてグリーン車しか空席が無いんです。お金はいいですから」
「よくないわ」
「誕生日だって知っていたら、俺、東京行きましたから」
「本当?」
「こんなことで嘘言ってどうするんですか?」
「え、でも、だって……ほんとに? ……嬉しい……」
 悪口を言われて怒る私に「大好き」と言ってくれて……驚いて、落ち込んだ。『先生』をおびき出すために言った言葉なのかとも受け取れるから。
 ――だから、言えなかった……。
 そもそも、リリモンとケンカしたのだって、「誕生日なんだから! 好きなら会いに行っちゃえば?」と言われたことがきっかけだった。それが出来なくてイライラしている時だったから、怒鳴ってしまった……。
 ――嬉しい。最高の誕生日だわ……。
 涙が零れた。……みっともない……。
「あのー。こんなことぐらいで感情高ぶられても困るんですけれどっ」
 ――彼にまた怒られた……でも嬉しい……。
「片道分の代金ぐらい、払いたいだけですからっ。ほら、お土産買うんでしょう?」
 彼が、さっとお土産を選び、オススメの品を教えてくれる。
「こちらの『黒のおたべ』は好評みたいです。生八つ橋を使った普通のおたべと違い、ちょっと変わった品で、黒ごまの風味がして……」
「黒?」
「黒い食品は嫌いですか?」
「ううん、黒豆とか大丈夫だもの」
「それなら良かった」
 バイト先と、友達用と……。
 お土産も選び終わり、新幹線の改札口を二人でくぐる。彼は新幹線の定期券を持っているから、ホームで見送りしてくれるという。
「はい、これ」
 彼はもう一袋、お土産を私に渡す。さっきレジで買っているのを見かけたけれど、彼が食べる分なのかと思っていたので驚いた。
「これは?」
「ご両親へ」
「えー!?」
「話すきっかけになるでしょう?」
「でもぉ……」
「もちろん、俺の家に来たことは絶対に言わないで下さい。一人で奈良に旅行に行ったことにして下さい。はい、これ」
 そう言い、持っていたバッグの中から一枚のメモを取り出した。一緒に、文庫より少し大きめの京都、奈良の観光ガイドブックを私に渡す。
「何?」
 メモを受け取ると、ホテルの名前とか、観光名所の名前などが書いてあった。
「そこに書いてあるホテルは、女性が一人旅するのに選びやすいと人気があるところです。ガイドブックの中にも書いてあります。観光名所はだいたい二日あれば周れる場所で、無難なものを挙げてみました。必ず予習してからお土産を渡しに行って下さい」
「いつのまに……!」
「地元に住んでいると、どこがメジャーな観光名所なのかいまいち解らなくなってしまって、あらためてこういうガイドブック読んでみると面白いですね」
 彼にそう言われ、また泣きたくなった。私のためにわざわざ、そんな気遣いまでしてくれる……。
 ――離れたくない、一緒にいたい……!
「ありがとう……」
 ――言えない……。そんなこと、もっと迷惑かけちゃうから言えない……。
「では。また、メールしますから」
「ええ……ありがとう。じゃあね」
 とてもあっさりした挨拶を交わした。彼はとても大人びていて、私みたいにこんなに寂しくなることなんか、無いんだと思う……。
 新幹線に乗る直前。
「ロゼモンさん」
 呼ばれて、振り返る。
「何?」
 彼は何か言いかけ、けれど、微かな微笑みを浮かべる。
「……いいえ。何でもありません。気をつけて帰って下さい」
「ええ……解ったわ」
 私も、微笑み返す。本当は、大声で叫んでしまいたかった。『帰りたくない!』と。
 けれど、彼の家を出る前に言われた。『誰がどこで見ているか解らないから、あまり目立つようなことは言わないで下さい』と……。
 ――結局、「大好き」って、もう一回言ってくれなかった……。
 私が乗った新幹線のドアは閉まり、ドアの前に立ったまま、彼に手を振ろうとして右手を上げかけた。
 彼の口元がわずかに動く。
 ――え!?
 それは、声に出さない言葉……。
 私の乗った新幹線が動き出した。



 しばらくの間。
 私は入り口の傍でしゃがみこんで泣いた。声を殺して泣いた。嗚咽さえも押し殺した。
 寂しくて、たまらない。傍にいて欲しい。手をつないで欲しい。
 ――でも……周囲の目があるから声に出しては言ってくれなかったけれど、――言ってくれた……! 嬉しい、嬉しい……!
 嬉しい気持ちと、寂しい気持ちが混ざる。混ざって、わけの解らない気持ちになる。
 わけの解らない気持ちのまま、私は泣き続けた。
 泣いて、泣いて、泣いて……。



 洗面所でメイクを直した。目が真っ赤……。お水で少し冷やしたりしたけれど、ウサギの目みたいになってしまった。
 ――みっともない……。
 そっと、自分の両耳のピアスを触る。……寂しさが少し和らぐ気がした。自分の席へ行こうと、私は洗面所を出た。
 センサーが作動して自動ドアが開く。そこは眩しいほど明るく感じた。グリーン車だから、かなり空席が目立つ。それでも、ぽつり、ぽつりと席は埋まっている。
 ――あら?
 探し当てた座席の隣には、着物姿の老人が座っていた。私の座席は通路側だった。
 おじいさんは私に気付いて、見上げ……小さく息を飲んだ。
 ――あ、驚かせてしまった……。
「お休み中にすみません……」
 私は会釈した。
「窓側と変わりましょう」
 そう、言われた。張りのある、よく通る声のおじいさんだと思った。
「あの?」
「窓側の方が、景色が見えますから。気が晴れるでしょう。夕焼けも綺麗だから」
 ――目が真っ赤だから、泣いていたことバレちゃっている。恥ずかしい……。
 せっかくの言葉だけれど、私は首を横に振った。
「いいえ、お心遣いだけいただきます……ありがとうございます……」
 離れていく距離を余計に感じてきっとまた、泣いてしまう……。
「そうですか?」
 ――暗い顔しないようにしなくちゃ。こんな、見ず知らずのおじいさんにまで心配をかけるようなこと、したくない。
「ごめんなさい……」
「いや……いや、いいから……」
 座席に座る前に、旅行用バッグから文庫本と新幹線の切符を手元に残す。その他を彼に言われたとおりに網棚に乗せようとしたら、おじいさんは手伝ってくれた。
「ありがとうございます」
「いえ、気にしないで」
 おじいさんはにこやかに微笑む。その年齢のわりにはがっしりした体格。背も高く、背筋も伸びている。
 ――お元気そうなおじいさん……。
 私はおじいさんの隣に腰を下ろした。グリーン車は、座席の座り心地が良い。
 ――あ。
 不注意で、ばさりと文庫本が床に落ちた。切符も……。
 おじいさんが拾ってくれた。
「……ほう? こういう話を読むのかね?」
「え、ええ……すみません……」
 私は受け取り、汚れていないか急いで調べる。彼の家から出る直前、彼が貸してくれた本だったから。
 ――良かった……汚れていないわ。
「どうかなさったかな?」
「これ、借りた本なんです。借りたばかりでもう汚してしまったら、きっと怒られますから」
「――恋人に会いに行ったのかな?」
「……!」
 おじいさんにそう言われて、私は恥ずかしくなって俯いた。
「ああ、すまない……余計なことを言ってしまったかな、すまないね……」
「いいえ、私が勝手に押しかけたんです。……何も連絡もしなくて」
 ――それに……、
「……恋人なんかじゃないんです……そんな関係じゃないんです……」
 そう言った。だって、彼は何もしてくれなかったんだもの。『大好き』という言葉が本当なら、二人きりになったらキスしてくれるかもとか、そんな期待も少しあった。でも……そういうことは一切無かった。
 ――でも、最後のあの言葉だけでいい。充分幸せだから……。
「え!? そ…………そう? お嬢さんはずいぶん美人だけれど? お付き合いしているんじゃないのかね?」
「そんな……ありがとうございます……」
「しっかりしているし……」
「そんなことありません。私、すごく子供っぽいんです。恥ずかしい……」
「そうなの? そうは見えないが?」
「彼からよく怒られます。食わず嫌いも直されたり……」
「食わず嫌い?」
「私、一人っ子で甘やかされていたから……あの、でも、オムレツ食べられるようになって、そぼろも大丈夫です。今度は煮魚って思っていたら……それは次回ってことになりました」
「ほう、次回?」
 ――聞き上手なおじいさん……。でも、私が寂しくて、誰かに話を聞いてもらいたいだけなのかもしれない……。
「私の誕生日だったんです、昨日……。だから、『食わず嫌いはまた今度頑張ればいい』って」
「おや、七夕に誕生日?」
「ええ。彼にそれも怒られました。『もっと早く言って』って。……でもどうしても、言えなくて……」
「言っていなかった? どうして? 普通、誕生日ぐらい話すものじゃない?」
「その日はバイトがあるって言われて……。でも、どうしても会いたくて……ずいぶん迷いました。勇気が出なくて、そんな自分にイライラして、心配してくれた従妹を怒鳴ってしまったり……」
「そうか、そうか……よく頑張りなさった……」
「――?」
「それでも、ちゃんと会いに行くのは、とても勇気が必要だったろう? ――楽しかった?」
 そんな誉められ方をしてしまい、私は照れ笑いした。
「ええ。将棋して。一晩中、ずっと将棋していました。とっても楽しかったです!」
 おじいさんは目を丸くする。
「将棋って? お嬢さん、将棋するの?」
「はい。私の家は『テレビゲームは絶対にダメ!』っていうのが方針でしたので、将棋やオセロ、囲碁ばかり子供の時に遊んでいたんです。でも私、その頃はとても内気で……いつも本読みながらの一人での将棋で……」
「ほう……それは、それは……」
「小学校の時、クラブ活動で囲碁将棋クラブにしようかなって思った時、ちょうどクラスの男子と女子が対立しちゃっていて……他の子に言い出せなくて。そんなことばかりで、あまり機会はなかったんです。だから余計に、とても楽しかったんです」
「こんな老人で良ければ、わしとも将棋で勝負してもらいたいものだ」
「おじいさんも将棋好きなんですか……! でも……ぜひ、と言いたいんですけれど、ここには将棋セットないですから……残念です……」
 社交辞令ではなく、本当に残念に思えた。
 ところが。
「わし、持っていますから」
「今?」
 おじいさんは足元に置いていた旅行用の黒いキャリーバッグから、携帯用の将棋セットを取り出した。
「わぁ、マグネットの!」
「一指し、お相手して下さらんか?」
「ええ、喜んで……!」
 私はおじいさんと、新横浜を通過する頃まで、楽しく世間話をしながら将棋を指した。



 私達は東京駅のホームに降りた。親切なおじいさんのおかげでとても楽しい時間を過ごせたので、寂しい気持ちが和らいだ。
「あら、それ……かわいいですね!」
 私はおじいさんの携帯電話を覗き込む。携帯電話やインターネットサービスなどの大手、『トコモ』のマスコットキャラクター『トコちゃん』のケータイストラップをおじいさんは持っていた。『トコちゃん』は幼年期型デジモンのトコモンに似ていて、人気のあるキャラクター。
「お店でもらえるものですか?」
「これは特別でね……」
 おじいさんは得意そうにそれを見せてくれた。
「特別?」
「今度の秋のキャンペーンでのノベルティなんだよ。まだ内緒なんじゃ」
「秋の? わあ、すごい! 羨ましい……」
「お嬢さん、『トコちゃん』好きかい?」
「ええ。かわいいですよね〜!」
「じゃ、あげよう」
「え?」
 おじいさんは紙袋からごそごそと、新品の『トコちゃん』ケータイストラップを取り出した。
「えー! いいんですか? 嬉しい!」
「将棋のお相手をして下さったお礼。もう一つは今度、彼に渡すといい」
「彼に? でも……どうかしら?」
 ――このおじいさん、もしかして『トコモ』の回し者?
 そんなことを考えながら、言ってみる。
「彼って『トコモ』のケータイを使っているわりには……『トコちゃん』のCMが放映されるたびにチャンネル変えていて……」
「え!? そんな……!」
「二人でテレビを見ることって、今日が初めてだったんですけれど。まさかそんなに『トコちゃん』嫌いだなんて……ちょっと意外でした。せっかく関西限定CMが流れていたのに、突然リモコン取り上げてびっくりするほど素早くチャンネル変えたんです。『トコちゃん、かわいいじゃない?』って言ったら、なんだかすごく……嫌な顔されました……」
「そうか……」
 私は、あの時のメタルマメモンの顔を思い出しながら。
 おじいさんは、……恐らく『トコちゃん』が嫌われることもある、ということに対して。
 ……私達は同時に、小さな溜息をついた。



 新幹線の改札口でおじいさんと別れた後。従妹のリリモンの携帯電話に電話した。
「お土産あるの。明日、バイトの時に持って行ってもいいわよね?」
『今は?』
「今?」
『えへ……実は今日、友達と飲み会だったの。うちに帰る終電もう過ぎちゃったから、そっちに泊まってもいい?』
「いいけれど……も〜、しょうがないわね」
『やった! そう言ってくれると思って、泊まる準備はしてきたの!』
「やだ、調子良過ぎるわよ!」
『だって、色々『お土産話』が聞きたいもん〜』
 と。言われた。
 中央線を使い新宿に出ると、リリモンと待ち合わせて家に帰った。
 帰宅するまでは世間話で盛り上がった。けれど家に上がったとたん、リリモンは興味津々に私に訊ねた。
「――ねえ、泊まっちゃって、――どうだったの?」
「ん? 将棋して遊んだわ。楽しかった!」
「将棋? そんなことじゃなくて! ほら、キスとか……しなかったの?」
「え! それは、その……期待したようなことは、何も……」
「えええっ! 何よ、それ――!」
「だ、だって……『親に心配かけるな』って……」
 「えー!」っと、リリモンは天井を見上げながら歩き、ソファにポンッと腰を下ろした。
「……それって、ヤバくない?」
「それって?」
 私は、自分用にも一箱買った『黒のおたべ』を一緒に食べようと、お茶の用意をしながら、訊き返した。留守にしていたから、ポットの中に残っていた水を捨てて、浄水器から水を入れる。コンセントを差し込んで、次は緑茶の準備に取り掛かる。これも、京都で買ってきたお茶にする。かわいい缶入りのお茶……。
「……どうしたの?」
 リリモンからの返事が無いので、そちらに目を向ける。リリモンは、「う〜ん……」としきりに考え込んでいる。そして、突然言った。
「ロゼモンのスリーサイズ教えて」
「!?」
 私はお茶の缶を床に落としそうになった。
「ええ! あの、何を急にっ?」
「う〜ん……見た感じ……だいたい……」
「そんなの推測しないでっ! ばかっ!」
 リリモンがじっと、私を見つめる。
「……正直に話してよ。本当に何も? な〜んにも無かったの?」
「だから、さっきから言っているじゃない!」
 急須に緑茶の準備をして、後はお湯が沸くのを待つだけ。
 ソファへ行き、リリモンの隣に座る。
「バカなこと言って……本当は何を言いたいの?」
 リリモンは声を潜める。
「どうしてなのかな?って思うのよ。ロゼモンが本命だとしても、すでに経験豊富なのかな〜?って、思ったわけ。真面目なようでけっこう遊んでいたりして? そういう話は?」
「遊ぶって……そんなこと……! ないわよっ!」
 「ふ〜ん……」と、リリモンは言いながら、
「ちょっと失礼……」
 と、いきなり私の両胸を、服の上から触った!
「きゃあっ!」
「あ〜残念。イイカンジ、なのに……」
 リリモンは自分の両手を見つめて大げさに溜息をついた。
「何が残念よっ! だって……そもそも、私が奈良に行ったら、すごく迷惑かけちゃったみたいなの!」
 バイト先で嫌がらせを受けたことを話すと、リリモンは目を丸くする。
「そんな!」
「嘘みたいでしょ?」
「まさかロゼモンがそこまで大人気だとは思わなかった……。何か手は打った?」
「え?」
「だって、今、もしかしたらもっとメタルマメモンさんは嫌がらせを受けているかもしれないじゃない?」
「え……!」
 ――それは考えていなかった……!
「どうしようっ。誰か助けてくれそうなデジモン、いないかしら?」
 考えているうちにお湯が沸いたので、とりあえず私はお茶を入れた。お菓子を食べながらリリモンと相談する。
「『関西支部』に知り合いがいるデジモン……全然あてが無いわぁ……」
「そうねぇ……」
 迷って迷って、あるデジモンに私達は、えいっと白羽の矢を立てた。
「明日のバイト、午後からでしょう? 午前中に『関東支部』へ行ったら? 休憩時間に合わせてくれるなら、私も付き合うから」
 リリモンにそう言われたけれど、私は首を横に振った。
「午前中はダメなの」
「用事あるの?」
「実家へ……」
「え?」
 驚いたリリモンはソファから立ち上がり、私を見下ろす。
「伯父さんと伯母さんと……仲直りするの! 本当に!?」
「……うん」
「どうしたの? どうして急に? だってもう、何年も会ってもいなくて、ほとんど話したこともなくて……」
「うん……『絶対に許さない』って、私は言ったけれど……」
 私は、リリモンに微笑みかけた。
「メタルマメモンが……もう一箱、お菓子を……」
 ぽろぽろと涙が零れた。
「話すきっかけになるから、って……私に……」
 リリモンはソファの横に膝をつき、私を見つめた。
「……頑張ってね」
「うん……」
「私、朝から仕事だけれど……」
「うん。大丈夫。一人で実家に行けないと、きっとメタルマメモンから怒られるから」
「え? 怒るの? そっか……オムレツも、そぼろも食べれるようになって、ロゼモンが苦手なものは、どんどん無くなっちゃうね……」
 リリモンは、小声で笑った。
「うん。でも……彼の家に泊まったことは内緒にしてね? 彼にも言われたから」
「了解〜」
 トンッとリリモンは立ち上がる。
「夜遅くなっちゃったね。いくら夜更かしばかりしている私も、さすがに眠くなっちゃった」
「そうね。そろそろ眠らなくちゃね」
 リリモンにそう言った。

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