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カフェ『皐月堂』へようこそ(レナルキ他)
『外野』の行動 そして『爆弾』 Side:BEELZEBUMON
(※番外編「『花』ニ想ウ 後編」の続きです)
(※前回掲載したメタルマメモンの話に絡めたネタの入った、ベルゼブモン視点の話です。アイちゃん出てきませんので…ごめんなさい。)


 ロゼモンと話をしていた時、メタルマメモンのことを訊かれた。あまりウザイことするなよ、ぐらいのつもりで言った言葉で泣かれた。アイツが泣いたところを見たのは初めてだったので慌てた。
 テリアモンとアンティラモンに見つかって、テリアモンからは激しく注意された。
「何を言ったの! どうせひどいこと言ったんでしょ!」
「アイツがあんなに泣くなんて思わなかったんだよっ。悪かったと思っているって!」
 言い合っていたら、ロゼモンの様子を見に行ったアンティラモンが戻って来た。
「「どうだった?」」
 オレ達が訊ねると、アンティラモンは首を傾げながら、
「ベルゼブモン。メタルマメモンのラジオ番組の何か、持っていない?」
 と訊かれた。
「アイツの? ああ、番組こっちじゃ聞けないからって言ったら、CD-Rに焼いてよこしたっけ……」
「それ貸して。昼休み明けに持って来て」
「昼に取りに帰れってか? やだ、面倒臭ぇ……」
「いいから! 絶対持ってきて!」
「うぉっ、なんだよ、そんなに怒るなよ……」
 オレは渋々、頷いた。仕方ない。ブラストモードでひとっ走り取りに帰るか……。
「他に何か持っていない?」
 そう言うアンティラモンに「は〜い!」っと、テリアモンが手を上げる。
「僕、写真部が隠し撮り写真を何枚か持っているの、知っているよ〜」
 と言い出したので、オレもアンティラモンも驚いた。
「隠し撮り? 他校のヤツの写真なんかどうするんだ?」
「女の子に人気あるから高値取り引きされているよ〜」
「高値……それはひどい」
 アンティラモンが眉をひそめる。
「それは取り上げちゃってもいいんじゃねぇか?」
「我もそれを考えていた……」
 さっそく写真部の部室に行き、メタルマメモンの写真を没収した。
「それにしてもメタルマメモンのヤツ、災難だよなぁ……」
 アンティラモンは、「う〜ん」と考え込む。
「災難? そう思う?」
「ロゼモンに追っかけられるんじゃ、迷惑だろう?」
「そうかな? ロゼモンは美人だし、そこまで迷惑には思わないんじゃない?」
「いや、メタルマメモンが。アイツって『アイドル』っぽく思われるとすげー怒るだろ?」
「相手によるんじゃない?」
「いや、それがさ……」
 オレは金曜日に『皐月堂』であったことをアンティラモンに話した。
「ええ!」
 話を聞くうちにアンティラモンが慌て始めた。
「話してしまったけれど……ロゼモンに、メタルマメモンのこと、いろいろ……」
 オレはやれやれと肩を竦めた。
「後で連絡取ってみる……」
 アンティラモンがうなだれるので、
「ああ、そうしろ」
 と、オレは頷いた。



 翌日。アンティラモンを見かけたら、
「ベルゼブモンッ!」
 と、駆け寄ってきた。
「どうしよう! メタルマメモンは本気で怒っているみたいっ!」
「本気で?」
「昨日、我と電話している時に携帯電話壊したって……」
「そうか? アイツはたまにやるぞ?」
 オレがそう言うと、
「そうなの?」
 とアンティラモンは瞬きした。
「ああ。アイツ、あんな顔しているくせにマジで筋力増強に取り組んでいるから握力すごいんだ」
「そうなんだ……でも、ロゼモンと連絡取りたがっていたし……」
 オレは首を傾げた。
「オレ達が隠し撮り写真を横流ししたの、バレたのか?」
「それはバレていないと思う」
「じゃ、何か用があったんじゃねぇのか?」
「そうだったみたいだけれど、ロゼモンに直接話した方がいいと思って電話に出てもらったら、一方的に切ったみたいで……」
「ロゼモンと? ずいぶん思い切ったことしたな」
「だって、ちょうど近くをロゼモンが通りかかったから……でも一方的に切るから、ロゼモンが落ち込んでいた。ロゼモンにはメタルマメモンの連絡先教えたけれど……」
「そうだな、この場合は教えて正解だろ。ややこしい話になっているみたいだしな……。ロゼモンが連絡取りたがるっていうのは解るが、どうしてメタルマメモンがロゼモンと連絡取りたがるんだ?」
「我は最初、あの二人がもうすでに付き合っているのかと思ったんだけれど」
「違うだろ、ありえねぇ」
「うん……メタルマメモンも否定していた……」
「だろ? まあ、外野が首突っ込む話じゃねぇよ」
「そうだね」
 それきりその話は忘れる……はずが、そうならなかった。
 それから数日後、オレはバイト先の『関東支部』に呼び出された。
「話って何だ?」
 キウイモンに訊ねると、「ちょっとこっちに……」と呼ばれた。
 ついていくと、行き先は応接室だった。
「おいおい……どういうことだ?」
 応接室で待っていたのは、『関西支部』のトップ。メタルガルルモンだった。
「久しぶりだな」
「どーも……」
 いったいどういうことだと、オレは目を細めた。まさか偉いヤツが駆けつけてくるようなことはやってないんだが? まあ、初対面の相手じゃないんだが……。
「メタルマメモンのことで話がしたくて来た」
 そう切り出され、面食らう。
「アイツが何か?」
「『関東支部』に行くと言い出した。知っているか?」
 ――こっちに来るって!?
「初めて聞いたが?」
「本当か?」
「ああ……」
 オレには何も相談無しで?
「一身上の都合で、と言ったきり、それ以上は何も訊けなかったんだが……。あれだけ能力が高いとそう簡単に移動申し出られても困るのだが……」
「アンタからそう言われたら考え直すと思うが? 『関西支部』のトップから言われたら……」
「いや、それがすでに二度、話し合う機会は設けたんだが、ダメだった」
「二度も? それでも? アイツらしくねぇな……」
「何か……決心は固いようだった」
「はぁ……決心?」
「本当に心当たりはないか?」
 ……心当たり……。
 引っかかることは一つあるが、それは言わなかった。
「何かあったら連絡する」
 そう言い、オレは退席させてもらった。
 『関東支部』のビルから出て、外を歩きながら空を見上げた。
 ――アイツ、何を考えていやがるんだ?
 翌日。大学でさっそくアンティラモンにそのことを話した。
「――じゃあもしかしてメタルマメモンは!」
「ロゼモンに惚れてるってこと、ありえるか?」
「ロゼモンがアイドルの追っかけやっていたことは知らないんじゃ……?」
「それならありえるかもなぁ……」
 オレ達三人は、学食のテーブルを挟んでひそひそと話を続けた。
「じゃあ、今度はロゼモンの隠し撮り写真も押さえちゃう〜?」
 隣で聞いていたテリアモンがのんきな声でそう言った。
「ロゼモンの?」
 俺とアンティラモンは顔を見合わせた。
「うん。メタルマメモン、欲しがるかもしれないじゃない? 昨年学祭の……ミスコンのとか、点心屋台やった時のとか……」
「水着やチャイナドレスの? ロゼモンが怒るぞ。ヤバイんじゃ……」
「あとね〜、ほら、僕達、出店コンテスト優勝したでしょ? それの優勝商品ってことで行った温泉の、露天風呂での隠し撮り……」
「それ犯罪だろっ」
「なんか、とっても良く撮れた隠し撮りだって。ロゼモンって学祭のミスコン優勝したから、他の大学の人達からも大人気で。今、部費が底を尽きそうで困っているから、闇取り引きで高く売るつもりなんだって〜」
 だがそこで、冷ややかな声がオレ達に降り注いだ。
「あ〜ら。そんなものが? 隠し撮り?」
 ぎくりと。テリアモンが真っ青な顔をして振り返ると、そこにはロゼモンが仁王立ちして、
「詳しく聞かせて欲しいわぁ〜」
 それはもう、鬼のような顔をしていた。
 結局。
 なぜかオレ達三人は連帯責任を取ることになった。
「どうしてオレまで!」
「じゃあ、ロゼモンにそう言えば?」
「いや、言えねぇなぁ……」
 とりあえず、写真部のヤツらが一番困る方法でネガも写真も取り返して欲しい、ということだったので、写真部が注文を受け始めてから、それらを奪還することになった。
「インターネットの方は僕が監視しておくよ〜」
 一番責任を感じているらしいテリアモンがそう言った。



 それから約二週間後。
 計画通りに一番困る瞬間に写真部に乗り込み、写真とネガを奪還した。
「相手が悪いよ、ロゼモンだもん〜」
「反省するといい。他人が悲しむようなことはしてはいけない」
「けれどよ、むしろアイツ一人で奴ら締め上げたら良かったんじゃねぇか?」
 そうオレが言ったら、アンティラモンが複雑そうな顔をした。
「知らないの?」
 と、テリアモンも首を傾げる。
「何を?」
「ロゼモン、男の人が苦手だよ〜?」
「そんなはず、ねぇだろ? オレ達とは普通に話すだろ?」
「入学したばかりの頃はそうじゃなかったじゃない?」
「そういや、初対面のヤツと話すのは苦手そうには見えたが?」
 そんな話をしながら、テリアモンは持っていた茶封筒の中に手を入れた。
「テリアモン! 勝手に見ちゃ……」
「でもちょっとだけ、見たいと思わない〜?」
 のほほんとテリアモンは答え、アンティラモンが止めるのも構わずに写真を見始めた。
「おい、止めとけよ? 知らねぇぞ……」
 「大丈夫だよ〜」と言っていたテリアモンが、突然、歩みを止めた。
「おい? どうした?」
 真っ青な顔をしてテリアモンは封筒ごと写真をアンティラモンに押し付けた。
「僕、帰る! ロゼモンに渡しておいてっ!」
「何だよ、急に……」
 オレ達は逃げるように走り去るテリアモンを見送った。
「そんなにやばい写真があったのか?」
 オレとアンティラモンは写真を覗き込み、数秒、固まった。
「――――!」
「うわぁっ!」
 同時に、声を上げた。オレもまさか、そんな写真だとは思っていなかった。
「こ、これ、見たって知られたら……」
 急いで写真を茶封筒に戻すと、アンティラモンが大慌てで歩き出した。
「それを持って行って手渡したら、全速力で逃げるしかねぇだろ」
 オレも急いで隣を歩きながらそう言った。
「良さそうな写真があったら一枚メタルマメモンにあげようかと思ったのだが……」
「アイツのことをどうこう言っている場合じゃねぇぞ? だいたい、もしもメタルマメモンがロゼモンに気があるとして、こういう写真をオレ達が持っているって知ったらブチ切れるだろ?」
 ああでもない、こうでもない、と言い合っていたら、突然、
 ――メタルマメモン!?
 と、気配を感じてオレ達は同時に立ち止まった。
「「どうしてここにいる!?」」
 姿を現したメタルマメモンに、これ以上無いほど驚いた。
 アンティラモンが、
「これを持って行ってくれないか!?」
 と茶封筒をメタルマメモンに押し付けた。
 思いついたままに言葉を並べ、それをロゼモンに渡すように頼むと、オレもアンティラモンも走り出した。
「いいよね、頼んでしまってもっ!」
「アイツから受け取るんだから、ロゼモンも怒りはしないだろっ!」
 並んで走って、逃げた。


《ちょっと一言》
 たまにはこういう、ヤマ無し、オチ無しな話も書いてみたくなったのです。イミは一応ありますよ〜。伏線入っていますし^^

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