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カフェ『皐月堂』へようこそ(レナルキ他)
本編13
 ――うぅ……なんか、気まずい……。
 朝食を食べて出かける支度をする。でも、昨日のことがあったから、ちょっと気分がのらない。
 ――服も、なんかいまいち……。
 自分の部屋に全身が映る大きな鏡はないので、ママの部屋に、こっそりおじゃまさせてもらう。
 ママは今朝早くから仕事にでかけている。大きな鏡で、自分の姿を映してみる。
 真っ白いノースリーブのニットパーカーに七分丈のジーンズを合わせたけれど、やっぱり空色のワンピースの方がいいかな?
 着替えてみたけれど、それもなんだかダメっぽい。私は大きな溜息をつく。
 ――やっぱり、どこからどう見ても私は子供っぽい……。
 レナってどんな人が好みなのかしら?
 ママの化粧品に目が止まった。けれど、日頃使っていないものを使うのは無謀過ぎる。
 ――そうだ!
 私は自分の部屋に走って行った。
 かなり前に、ママの知り合いのパーティーにどうしてもと頼まれて引っ張り出された時にもらった、小粒のパールのイヤリングを引っ張り出した。
 ……なんか、私らしくない。
 結局、最初に選んでいたノースリーブのニットパーカーとジーンズに着替え、イヤリングも外した。どうせ背伸びしても無理だ。すぐに大人になれるわけないもの。
 せめても……と思って、前にママに買ってもらった水色の、三日月のデザインのガラスに入ったオードトワレだけ、手首に少しつけてみた。……ほんのり爽やかな、いい匂い。
 そして玄関で、
「……」
 買ってもらったけれどあまり履いていない少しヒールの高いサンダルにしてみた。以前に見かけたレナの知り合いの人に対抗してみよう。
「……わりといいかも」
 白いサンダルを履いて、私は出かけることにした。



 レナは駅で待っていてくれた。
「おはよう。来ないかと思った」
「おはよ……」
 近付いて挨拶をしたけれど、私はすぐに目を逸らした。
「別に……」
「……留姫……」
 レナの手が私に差し伸べられ、でも、途中で止まった。
「――どうしたの?」
 と、いぶかしげにレナが問いかける。
「何が?」
 私が首を傾げると、レナは伸ばしかけていた手を戻す。
「――いや、なんでもない」
「……?」
「……留姫がそんなに嫌だったなんて気付かなくてごめん」
 レナが謝る。
 嫌っていうか……そういうことが嫌で怒っていたんじゃないのに。だったら、私のこと、どう思っているの?
 電車がすぐにホームに滑り込んで来たので、私達は乗り込んだ。途中、いつも使っている地下鉄から、山手線に乗り換えた。外回り電車で新宿から上野まで行く。
 暑過ぎるぐらいのいい天気だった。
 歩きながら、レナが空を見上げる。
「35℃にはなりそうだな」
「うん、私もそう思う。焦げそう!」
「そうだね」
 うんざりするような暑さなのに、レナと二人でいるとなんだかとても楽しいから不思議。
 順調な滑り出しを見せたけれど、実はそうもいかなかった。私の予想以上に上野の博物館はかなり混雑していた。
「一時間待ちぃ!?」
 そんなに混む場所だとは思わなかったので、私はびっくりした。
 レナは溜息をついた。
「こうならないようにと思って早く出てきたんだけれど……」
「え? そうなの?」
「ああ。――どうする?」
「どうするって……」
 でも、タダ券あるし、限定フィギュアもコンプリートしなくちゃいけないんだし……。
「行くしかないんじゃない? いつもこんなに混むの?」
「いや……たぶん、ミイラが展示されているからだろう」
「ミイラ!?」
「言わなかったっけ?」
「……」
 デートという言葉に浮かれて、ちゃんと聞いていなかったのかもしれない……。
 ――デートでミイラ……。う〜ん……。
 とりあえず、入館待ちの列に並ぶことにした。
 炎天下の中、時々、日陰で涼みながら私達は並んだ。
「一時間待ちって、すごいわね」
「二、三時間待ちになる場合もある」
「……それよりもはましね」
 自動販売機が見えたので、レナが「何か買ってくる」と列を離れた。
「お茶より、スポーツドリンクがいいね?」
「この暑さじゃ、そうよね。水分補給しなくちゃ脱水症状になるわ」
 けれど、レナが帰ってきた時にはスポーツドリンク一本しか持っていない。
「他は売り切れていた」
「そうなの?」
「はい」
 と、渡された。
「え? いいの?」
 と聞きつつ、手から伝わるつめたい感触が気持ち良い。
「半分こにしない?」
 私はお財布を取り出す。
「いいよ」
「でも、払う。ワリカンがいい」
「小銭が多くなるからいいよ」
 レナは苦笑しながら、私の出した十円玉七枚と五円玉一枚を押し返した。
 私とレナはかわるがわる、冷たいスポーツドリンクを飲んだ。
 ――レナはきっと、間接キスとかって気にしないんだろうな……。
 と、思い切り気になりながら私は思った。
 ようやく博物館の中に入り、人込みに紛れながら展示を見た。わりと面白い。
「……あ、ちょっと待って」
 縄文人、弥生人の食生活の違いというコーナーで、私はメモを取り出した。メモに取っている間、レナは静かに待っていてくれた。メモに書き終わると、
「興味あるの?」
 と訊かれた。
「家庭科の宿題。食文化についての研究発表があるの」
「なるほど」
「子供の頃に読んだ本で、ドングリ食べていたって読んだんだけれど……違うのね?」
「それだけじゃなく、いろいろな食物を食べていたよ。発掘調査で解ってきたことで……」
 レナの話を訊きながら、展示を見ながら、なんとか宿題がまとまりそう。
 展示されているミイラも見学したけれど、自分が想像していたような不気味だったりするものじゃなくて……。この人達が実際に生活していた昔の時代のことを深く考えた。時間は繋がっているんだとあらためて思った。
「昔の世界も、とてもおしゃれね」
 ピアスやネックレスが展示されている。
「ピアス……」
「興味ある?」
「興味はあるけれど、穴を開ける時って痛いでしょ。痛いのは嫌だもん。――それに、こんなに大きなのは絶対に耳が大変なことになると思う」
 大きなものだと直径9センチはあるらしい。凄過ぎる……。
「木、貝、牙、碧玉、琥珀……いろいろあるのね」
「縄文時代は装飾が多いけれど、弥生時代になるとそれが減ってくる」
「縄文時代の方がいいな。かっこいい」
 そう言うと、レナが小声で笑う。
「似合うと思うよ」
「私は本気よ? 鹿革のブーツもいいなぁ……」
 そして――出口付近の物販コーナーに行き、二人でフィギュアのコンプリートに挑む。――百円入れて回す、いわゆるガチャガチャというもの。
 これがなかなか出なくて――。コンプリートしたものを二セット揃えるとなると、難しい。シークレットとかいうのもあった。なんとか二セット作ると、それをレナはバッグに押し込んだ。
「こんなことまでさせて……すまない」
「気にしないで。面白かったもの」
 余ったもののうち、いくつかは私がもらった。
 博物館を出ると、外は湿度が高くなっていた。
「雨が降りそうだね」
 レナが空を見上げる。
「晴れているけれど?」
 つられるように空を見上げた私はそう言ったけれど、レナは首を横に振る。
「二時間後には降り出す」
「そう?」
「ああ」
 ――それって……レナがデジモンだから解るの?
「そっか。これからどうしよう。折り畳み傘は一応持っているけれど」
 雨が降っても平気な場所がいいな……。
 歩きながら考えることにして、私とレナは上野公園の中を歩き始めた。木々が生い茂り、人も多いけれどとても広い。そして、びっくりするほどハトが多い。
「そういえば、平安時代の食生活についての本なら持っているよ」
「ほんと?」
「今度、貸そうか?」
 ――残念でした。せっかくデートなのに、今度でいいわけないじゃない!
「今がいい」
「え?」
「今」
「今って……今から?」
 レナが戸惑う。
「そうよ。今から」
 こないだは『花火が見えるから』だった。今日はたとえ『恋愛ごっこ』の相手としてでも、レナの家に行く!
 けれど……レナの表情が曇った。それを見て、私はがっかりした。
 ――こんなに仲良くしていても、それでもやっぱり、私のことは恋人には思えないの……?
「いいけれど……」
 それでもレナは、そう言ってくれた。
「じゃ、――決まりね」
 私はレナの手を取った。
 駅に向かい、電車で移動しながら、たわいもない話をした。
 楽しく話をしながらも……私は考えていた。もう『恋愛ごっこ』は終わりにしなくちゃ、と……。



 レナの住むマンションに着く。
 玄関に上がって、ふと、私は足元を見た。そういえばサンダル履いていたから……。
「ねえ……レナ、ちょっと……」
「何?」
「シャワー借りてもいい?」
「――――!?」
 レナが言葉を失う。
「洗濯ものとかお風呂場にあるの? だったら片付けてよ。私、サンダル履いていたから足汚れているもの。ちょっと足、洗いたいの」
 そう言うと、レナがなぜか額を押さえて溜息をついた。
 ――何で?
「……いいよ、使っても……」
「じゃ、借りるわね」
 私はシャワーで水を出し、さっと足を洗った。勝手ながらちょっとボディシャンプーを分けてもらう。
「――い……つぅ……」
 ……しみる?
 サンダルが擦れて、両足の小指が赤い。皮が少しむけていた。履き慣れていないサンダル履くの、やめれば良かった……。
 ――バンソウコウぐらいは、あるかな? 後で分けてもらおうっと。
 レナがタオルを出しておいてくれたので、私はそれを借りた。
 こないだはあまり気にしなかったんだけれど、レナの部屋は2LDKぐらいの広さがあるみたい。一人暮らしなのになんでこんな広いとこ住んでいるの? 変なの……。
 微かな時計の、時を刻む音が聞こえる。どこかに時計があるんだと思う。
 買ったばかりと聞いていたエアコンの下に向かう。
「風、つめた〜い!」
 レナが本を持ってきた。
「これ……」
「ありがとう」
 私は本を受け取ると、床に座り込んだ。
「ソファに座ってもいいよ?」
「あ……ごめん。うち、畳だから、つい……」
「そうなの?」
「うん」
「床に直接座る方が落ち着く? 座布団持ってこようか?」
「いいわよ、気にしないで。せっかくだからソファに座るわ。こういうの、ちょっと憧れていたもの」
「じゃあ、飲み物でも。烏龍茶ならあるけれど」
「ありがとう」
 立ち上がろうとして、
「……?」
 床を撫でた。綺麗に掃除してあるから埃も落ちていないけれど、傷だらけだ。
「……」
 レナがペットを飼っているなんて聞いていないし……どうして?
 疑問に思いながら、私は本を持って茶色の革のソファに向かう。ぱらぱらとページをめくってみた。あまり難しい本じゃないみたい…。絵もたくさん入っていて、浮世絵も入っている。とても楽しい雰囲気。
 レナが冷えた烏龍茶のグラスを二つ、持ってきてくれた。ガラステーブルの上に置く。
「これ、読めそう。ありがとう」
「そう? それなら、良かった」
 レナが隣に座る。
 ――ちょっと、ドキドキする。
 私はあらためて室内を見回した。
「レナって、犬でも飼っているの?」
「……どうして?」
「床、傷だらけだったから。それとも猫? 他の部屋にいるの?」
「――別に、何も……」
「そう?」
「ああ……」
 少し、レナの口調に苛立ちが混ざる。レナが私を拒んでいるように思えた。
 ――やっぱり、私じゃダメなんだ……。
 溜息をつきそうになる。けれど、我慢した。
 こうなることは覚悟していた。でも、レナが優しいから、もしかしたら私のことを好きになってくれるかもって、期待もあった。
 私はレナを見上げた。――ようやく、諦められる……。
「あのね、レナ」
「何?」
「ずっと考えていたの。――聞いてくれる?」
「いいけれど?」
「『恋愛ごっこ』――もう、やめるね。今までありがとう」



 レナが瞬きした。
「やめる?」
「――うん。……じゃ、私、帰るね」
 泣かないように涙を堪えた。喉が痛くなる。
「あ……烏龍茶はもらおうっかな……。せっかくだから、飲んでから帰るね……」
 私はガラステーブルの上に本を置き、烏龍茶のグラスへ手を伸ばそうとした。けれど、レナが私の手を掴んだ。
「え……ちょっと……」
 放して、と言いかけ、私は言葉を飲み込んだ。
「――どういう意味で言っている?」
 レナの声が凄む。
「――?」
 私は瞬きをした。――何で怒っているの? すごく怖い――。
「帰る? どうして?」
 ――ああ、来たばっかりなのに帰るって言い出したから、怒ったんだ……。
「ごめんね、レナ……」
「答えて」
「その……」
「答えられないの?」
「……だって、やっぱり嫌なんでしょう?」
「何が?」
「好きでもない子に家に入られるの、嫌なんでしょう?」
「…………」
 レナの手が、私の手首をゆっくり放した。
 私は泣きそうになって、下を向いて必死に我慢した。でも、言わなくちゃ……!
「……本当は嫌なのに、レナは……優しいから……」
「……」
「嫌なのに……それでも、私に合わせて『恋愛ごっこ』してくれる……」
「……」
「花火見る時も家に上げてくれたけれど、デートもしてくれたけれど……でも、本当は……」
 本当に泣きそうになって、私は顔を上げることも出来ない。
「――ごめん、これ以上、レナに……」
 もう、言えなくなった。何も言えない。どう言っていいのか解らない。
 ――好きな人に好かれるのって、難しい……。
 けれどレナは、それでも何も言ってくれない。
 ――こないだと同じ……。
 ダメ。マジで泣きそう。ヤバイ……。


「どうしたら留姫が私のことを好きになるのか、そればかり考えている……」


 ――はぁ?
 私は下を向いたまま、瞬きをした。面食らって、涙が引っ込んだ。
「留姫は『恋愛ごっこ』のつもりでも、私は最初から本気で……」
 レナの手が私の手を取る。
 びっくりしたけれど、泣く寸前だったのに涙が引っ込んだ顔なんて見せられないので、私は下を向いたまま。
 ――『最初から』って、いつからよぉぉぉ――!?
 私が心の中で絶叫していることなんか、レナは知らない。
「けれど……からかわれているんだと思った。年上の男をからかって面白がって……嫌な子だと思った。それなのに、留姫はすごくかわいくて……。そんなに恋愛に憧れているのなら、『恋愛ごっこ』の相手をしていれば、そのうちに私を好きになるかもしれないと思っていた。けれども全然その気配はないし、何か訊ねるとすぐにはぐらかすし……」
 私の背中を冷たい汗が流れた。
 ――どういうこと!? いったい、これはどういうことなの!?
「だから――とにかく、今『恋愛ごっこ』をやめるなんて言わないで」
 有無を言わせない口調で言われた。――怖いと思った。レナってこんな怖い声を出すことがあるの!? いったいレナがどんな顔をしているのかなんて、怖くて見られない――!
「――いいね?」
 ――どう答えたらいいの? こんな脅すように言われるなんて……やだ、どうしよう……。どうしよう、すごく、すごく怖い――!
「――――そう……」
 レナの声が突然、恐ろしいほど冷たくなる。
「……もしかして、留姫は……」
 私の手を握るレナの手に力がこもる。――それはびっくりするほど痛くて、
「――っ!」
 私はその手を思い切り振りほどいた。
「――留姫っ」
 私はソファの端に後退りした。それでも、普通の二人掛け用のものだから何十センチも距離が開くわけじゃない。
 ――レナ! やだ、怖い――!
 体が震えた。握られていた右手を左手で庇う。
「――痛いことしないでよっ」
 必死に声を絞り出した。
「……そう言われて逃がすと思うの?」
 レナの右手が私の肩を掴む。
「――!」
 私は咄嗟に、レナの腕を噛んだ。レナの腕が引っ込む。
「まるで猫か何かみたいだね……」
 呆れたような声に、カッと、怒りの感情が生まれた。
「痛かったんだから! すごく痛かったんだからっ! アンタ、握力強いんだから――」
「…………!?」
 もう我慢出来なくて、涙がぼろぼろ出た。
 ――なんで? 状況がちっとも解らないわよ!
「握力……」
 レナの声色が変わった。――ひどく戸惑っている。
「そんなに痛かった?」
 私は思い切り頭を縦に何度も振った。
「そんな……に?」
 さらに頭を縦に振った。
「そう……」
 レナが言った。
「手、見せて?」
 私は首を横に振った。
「……お願いだから、見せて?」
 ――さっきまでのレナとは違う……?
 私は震える手を差し出した。
 レナの手が優しく撫でてくれる。さっきの怖さは嘘のように消えている。レナはそして、手首を少し嗅ぐ。
「……?」
 うっかり忘れそうになるけれど、レナって人間じゃないんだもの。もしかして……。
「……香り、残っている?」
 恐る恐る訊ねると、
「残っている……」
 と、言われた。
「いつもは付けていないよね? ――留姫……」
 顎に手をかけられ、顔を無理矢理、上に向けられそうになる。私は首を横に振って拒否した。
 ――泣き顔なんか見られたくない!
 レナを押し退けた。
「留姫!」
 バッグを掴み、サンダルを引っ掛けるように履いて、私は逃げ出した。とにかく、逃げ出したかった。
 マンションを出てしばらく走ったけれど、足がどうしても痛くて走れなくなった。
「――」
 サンダルに血が滲んでいる。仕方ないので、脱いで裸足になった。夕方になってもまだ熱を帯びているアスファルトの上を裸足で歩いているうちに、気持ちが落ち着いてきた。
 ――どうなっちゃっているの、これ……?
 なんでレナが私のこと好きなの? 最初からってマジ? いつから? それじゃ……私の勘違い? 私が悪いの?
 ――ちょっと待って、それって……今までの私の努力ってじゃあ、無駄ってこと? それとも、努力したからレナは私のこと好きになってくれたの?
 ――じゃあ、どうして家に上げるの嫌がるの? それに花火見た日に――答えてくれなかったじゃない?
「……」
 ――わからない……。
 だって、レナの方こそいつもはぐらかしたり、嘘言ったり、冗談だと言ったり、からかったり……。
「あ……」
 頭に何か落ちてきた。私は空を見上げた。雨が降り始めた。
 ――え、えええ?
 大粒の、滝のような雨に驚いた。
「夕立っ!?」
 折り畳み傘を取り出そうと思っても、出来れば雨宿り出来るところ……どこか……。

(――――)

「――え……?」
 呼びかけられたような気がして、後ろを振り向いた。



 雨が止んだ。
 ――何?
 辺りが暗い。何も……ない?
 ぽんと、闇の中に放り出されたような感じ。
 ――え? 雨は? なんで、真っ暗なの?
 私は不安になって、辺りを見回した。どんなに目を凝らしても何も見えない。
 ――寒い?
 ぞくりと背筋を震わせた。
 ――さ……む…い…………? なぜ?

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