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恋の行方は2
教室に入るとふわっとチョコレートの香が皮肉にも私を迎えてくれたようで苦笑いが零れる。バレンタインである今日は、恋する乙女の一年に一度の勝負する日でもあるのだ。



女の子は皆顔を赤らめモジモジをしているのに対し男の子はまだかと言わんばかりか胸に期待を膨らませているように見えた、朝の教室だった。場違いにも程がある、と嘲笑を胸にしまい込み溜め息が零れると私は既製品のチョコレートを取り出して三年生の下駄箱へと向かった。



これは本命ではない、と自分に言い聞かせていても三年生の校舎に忍ぶのはスリル感がありすぎて胸が高まってしまう。

ああ、先生に見つかってしまったらどうしよう、と思っていた矢先に「何しとんの」と後ろで声がしたので恐る恐る振り向くと、そこにはなんと光がいたのだった。



「…わ、あの…、…財前くん……。」



「ここ三年生の校舎や、自分何しとんの」



あまりにも驚いたので私の口はわ、あ、の、など訳のわからない言葉にならない音を発しただけだった。まるで間違いを犯した生徒にお説教をする先生の気分にでもなったように光は更にわたしを軽蔑する目で見たのだ。

「なんや、白石先輩にチョコ、か」

と言い放った光の目は笑っていないのに唇だけニヤリと嫌な笑みをしていた。へぇと音にならない光の口の動きが妙に私の背中を凍らせた。

頭が状況についていけていない私は(そもそも光が大の苦手だというのに何の心の準備を無しにこうも張本人に咎められると頭がシャットダウンするのもおかしくはなかったのだが。)ついには「財前君には関係ない」と酷く乾いた声で光に言ってしまった。その時光が一瞬だけ目を開いたように見えたがそれは気のせいだったのだろう。「あっそ」と光はまた前のように私を睨みつけ「白石先輩と両想いになれるとでも思ってるんか、」と私の顔に唾を吐きそうな顔をしながら私の肩を過ぎ去った。


ブルブルと震えている両膝で私は白石先輩の下駄箱にチョコレートをスルリとしまい込んだ。




三年生の校舎を抜けると光の唇が鮮明に頭に残っていたのだった。

うしろ

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