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青が似合うわたし(跡部)


 たとえ、世界の先進国の子供たちが笑っているなか、世界の裏側の子供も笑っていると限らない。サンタさんは泣いている子供を知らない、神様は死にかけている子供を無と化する。出来損ないはすべて神様が元凶。ソレは笑うことのできないわたしたちのせいでもわたしたちの環境のせいでもない。


 「メリークリスマス。土産、買って来てやったぞ」
彼が赴任先から帰って来た玄関先で知らない靴が見えた。

 「気持ちは嬉しいよ。ありがとう。けど、頂けないわ」

へんな者に懐かれたものだなあと苦笑いが顔を飾る。わたしと彼のつながりはわたしは彼の同級生だった、という純粋で綺麗さっぱりな過去だけ。


 「お前は狡い」

ドサッと彼はまるで我が家と化するソファーに沈む。

 「褒め言葉だわ」

 「可愛い気のゼロのお前を貰ってくれる人なんざ、世界でも俺一人だってのに。いいのかよ?アーン?」

 「…相も変わらずね。この歳になって好みの女性に巡り会えなかったの? あなたならフラれるはずないでしょう」


 「お前こそ、な」


ええ、いつものことでしょう、とわたしはお茶を煎れながら応えた。

 「いい加減、俺に頼ったらどうだ。お前を救わせてくれ」

わたしはあと何回この台詞を耳にするのだろうか、熱いお茶がこぼれてカーペットには広い海が広がった。今日はクリスマスじゃない。彼はいつもわたしがわたしになる時に来てくれる。涙が海にこぼれ落ちた。


 「あなたの愛がこわい」母の死に様が目に映る。母はわたしにわたしはあなたを愛したことなんてないのだと。わたしは母にとっていらない命だった。わたしは何ももっていない。わたしのわたしはとても悲しいものだ。わたしは母が大好きだ、大好きだ。わたしは母の笑顔を見たことがなかった。わたしのわたしはとても悲しいものだ。



 「あなたの愛がこわい」



愛されることを、わたしは心の底から欲しているのに拒絶しているのもゼンブ、わたしだ。

 「もしあなたに溶けてしまったあと、わたしが必要とされなくなってしまったら、わたしは死んでしまう」

 「あなたの愛がこわい」

 止むことを知らない海でわたしは泣いて彼に沈んだ。













つづきます

うしろまえ

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