短編小説
冬限定
朝からこの男はほっとレモンを飲んでいる。
私はコーヒーを淹れるついでに彼にほっとレモンを渡した。
飽きないのかしら?
しかし、いくらなんでも飲み過ぎかも。1日三食の後に一杯ずつ。3時のおやつに一杯。寝る前に一杯。
最低でも1日5杯は飲んでいる。インスタンスだからと安いから買い置きしたのが棚を占拠しているおかげで、他の食料品は別の棚に行き場を追われてしまっている始末だ。
「ねぇ」
「なんだい?」
「どうして好きなの?」
「タバコやお酒と同じだよ。俺にとってほっとレモンは冬に欠かせない飲み物さ」
そう、冬限定で彼は冬の季節になるとほっとレモンしか飲まなくなる(水は飲みますよ)。
何だかこう毎日ほっとレモンばかりでは私の方がまいるから、今日は少しイタズラをしてやった。
「むっ?これは…」
「どう?今日はちょっと趣向を変えてみました」
「甘い…」
そう、今日のは何時もより甘くした。いつも通りのインスタンスに、あるものを足したのだ。
「ハチミツかい?」
「正解!こう毎日同じじゃ飽きちゃうでしょ」
「いや俺はいつも通りで…」
「私が飽きるのよ!!毎日毎日同じじゃ飽きちゃうの!だからたまには違った風味を味わって欲しいの!!だから黙って飲め!」
「はい…」
彼は私の言葉に身悶えしたが、いつものように黙って美味しく味わってくれた。飲み終わって最後に…
「ごちそうさま。美味しかったよ。また淹れてくれ」
それを聞きたくて私は毎日彼にほっとレモンを淹れてるのよ。
ちょっと恥ずかしい私だけの秘密よ。
あとがき
彼女がなんで彼のためにわざわざ毎日ほっとレモンを淹れるのか。それは彼が喜ぶからです。それほど彼は彼女が淹れたほっとレモンを愛してるのです。また彼女も、彼が飲む姿を見つめるのが好き。冬限定でしか味わえないからこそ毎日淹れてあげてるのです。しかしながらまだ彼と彼女に名前がつかない。後何作したらつくのやら…
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