大空に抱かれて 12
僕の視線に気が付いた優子が、笑顔で振り返る…
「もう少しで出来上がりますので…子供達に声を掛けて下さいますか?」
「…分かった。」
そう答えて…内線電話をしようとして、手を止めた。
何となく…
直接、子供達に言いたくなって…長女の部屋を目指した。
賑やかな声が聞こえる長女の部屋を、ノックして開ける。
「…入るよ。」
「夕飯が、もうすぐ出来るそうだよ。」
直ぐに長男の政紀が
「…分かった。ココを片付けたら行くよ。」
と、答える。
僕の姿を認めた長女の真衣も、
「はい!…なるべく急いで行きます♪」
だが、もう一人…次男の拓弥が居ない。
「…拓弥はどこ?」
「たぶん、自分の部屋だと思うけど。」
と、政紀。
「…そう。」
それだけ答えて真衣の部屋を出た。
今度は次男の拓弥の部屋に向かう…
軽くノックをした後、ドアを開ける。
「…入るよ。」
部屋の中を見渡すと…読書中の拓弥の姿があった。
何をしに来たんだ…
というような怪訝な視線を僕に向け…ひとこと。
「…何?」
「もうすぐ夕飯の準備が整うから…ダイニングルームに来て。」
「…わかった。」
既に本に視線を戻しているので、
眼も合わさずに…そう一言だけ告げる拓弥。
毎回、次男のこんな態度はムカつくが…
イチイチ指摘するのも癪に障る。
なので…そのままスルーして部屋を出る事にした。
ドアを閉めようとしたら…
「…父さんの作った料理も…まぁまぁだったよ。」
と…ボソッと小さく聞こえて来た。
((…っ!!…))
驚いて、閉める直前だったドアの隙間から…
拓弥の方を見たが…
やはり、読書中の姿勢のまま変わらない。
顔も上げていないし…何も言わない。
フッと少しだけ口の端を上げ…
そのまま、黙って静かにドアを閉めた。
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