Shufful Lover!
3)閑話 1
玄関のチャイムを鳴らして、彼が出て来るのを待つ時間が、鳴はワクワクするので好きだ。
そして目の前の扉が開かれる。
雅さん!と飛びつこうとして、すんでのところで止まった。
「……なぁんで、雅さんじゃねーのっ?!」
「……俺に言うなよ」
ぷぅと膨れる鳴に、扉を開けた本人――アキラは溜息を吐いた。
駅の出入口で、御幸は見慣れた、いやいつまでも見ていたいと思っている人物の姿を見つけた。
ここで会えるなんて、と幸せな気分で声を掛けようとした時。
「――沢村」「あ、原田さん」
と、一足先に呼んだのは雅功だった。
(原田さん?つか、何でこの2人は待ち合わせなんてしてるんだ??)
と、御幸が驚いて突っ立っていると。
「何をしているんだ?御幸」
と、いきなり脇から声を掛けられ、ビクッとして御幸は素早く首を巡らせる。
すると、僅かに眉を顰める舜臣が立っていた。
「んだよ、楊か。急に声を掛けんな」
「ボーッと突っ立ってるのが見えたからな。今着いたのか?」
「ああ。お前もか?もしかして同じ電車だったとか」
御幸の問いに、舜臣は「いや」と首を軽く横に振って、唐突に歩き出した。
そして一直線に、先程御幸が見つけた2人に歩み寄る。
2人が顔を上げ、御幸が舜臣の後を追う様に歩き出すのと同時に、彼等は御幸に目を向けた。
「えーっ!?じゃあ雅さん、買物行っちゃったのー?!」
「ああ。酒は重いから、舜臣連れてった。ついでに栄純が道判らなくなったらしいから、駅まで迎え行ってんだよ」
始めは栄純からアキラ宛にメールが来たのだが、既に酒の肴を用意し始めていた為に、買物ついでにと雅功と舜臣が出掛け、アキラが留守番となったのだ。
アキラが一通り説明し終えると、鳴はあからさまに肩を落とした。
「そんなぁ……一番に雅さんに会いたかったのに」
「だから俺に言うな、って何遍言わす気だ」
アキラの突き放した様な言い方に、鳴は再び頬を膨らませた。
しかしアキラは全く意を介さない様子で、料理を続ける。
これは構ってくれない、と即座に判断した鳴は、仕方無くキッチンから出て、雅功のベッドに腰掛けた。
すると、目の前にあった携帯が振動した。
鳴自身の携帯はジーンズのポケットに入っているので、アキラの携帯なのだろう。
「アキラー、ケータイ鳴ってるよー」
振動を続ける携帯を鳴が持って行くと、
「悪い、成宮。一寸替わってくれ」
と、フライパンの中身を炒めながら、アキラは振り返った。
「えーっ!?オレ、料理出来ないよ??」
「炒めるだけだっての。ほら、頼むから」
仕方無く鳴は、アキラに携帯を渡してから菜箸を受け取ってコンロの前に立ち、入れ替わる様にアキラは携帯の通話ボタンを押した。
「もしもし……ああ、大丈夫。うん……え、マジで?何やってんだよ、アイツは」
冷蔵庫に寄り掛かって話すアキラを横目で見ながら、鳴は(何か楽しそうだなぁ)と思った。
電話をしているアキラは、笑顔で声も弾んでいる。
普段の落ち着いた態度と比べて、年相応な感じを鳴は受けた。
が、そこでふとアキラの表情が強張る。
「あー……いや、用があるっつーか、暫くは無理だな。そうそう……ん、悪いけど」
先程とはあからさまに歯切れが悪くなり、やがて直ぐに「じゃあまたな、好己」とアキラは通話を切った。
そして携帯を閉じると、ジッと何かに耐える様に携帯を見つめて、フッと一つ溜息を吐く。
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